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『ブラックファミリア』衝撃ラストも微妙…「ノリと雰囲気に全振り」の現代ドラマの難しさ

『ブラックファミリア』衝撃ラストも微妙…「ノリと雰囲気に全振り」の現代ドラマの難しさの画像1
読売テレビ『ブラックファミリア ~新堂家の復讐~』公式サイトより

 12月7日、板谷由夏主演『ブラックファミリア~新堂家の復讐』(日本テレビ系)の最終回が放送された。

 前話で次女・梨里杏(星乃夢奈)の死の真相を探るべく、カギを握る早乙女家を揺さぶってきた新堂家の面々。前回、犯人が高校の親友だった早乙女葵(瀧七海)であることがわかった。梨里杏が転落した屋上で、一葉(板谷)は葵を殺そうとしたが、寸前で思いとどまる。葵は殺してほしいと叫ぶが、一葉は「梨里杏は望んでいない」とし、葵に「罪を背負って生きて」と語る。

 葵の母親である麗美(筒井真理子)は、愛人である伊志嶺和也(長妻怜央)を使って「麗美が一連の事件の犯人」という動画を配信した。麗美も葵が犯人だと気づいており、すべての罪をかぶるつもりだった。

 家に戻った麗美は、そこで一葉と相対する。新堂家の復讐計画にもっと早く気付くべきだったと悔やむ麗美。復讐の思いを吐き出す一葉。葵を警察に突き出すと語る一葉に「私を殺していいから、やめてほしい」「お願いします」と土下座する麗美。包丁を自分の頬にかざして切りつける痛々しい演技は迫力があった。一葉は「すべて終わったよ」と、天国にいる梨里杏に語りかけた。

 一方、次女の沙奈(渡邉理佐)が早乙女倫太郎(塩野瑛久)に拉致された場所を突き止めた一葉の夫・航輔(山中崇)。居場所がわかったのは、性加害で逮捕され、釈放された早乙女秋生(平山祐介)の協力によるものだった。秋生は今まで父親として倫太郎と向き合わなかった事実と向き合い、倫太郎に謝罪。動揺し秋生に暴力を振るう倫太郎。崩壊して、早乙女家もまたようやく「家族らしきもの」になったということか。

 麗美は一葉の弟・優磨を突き落とした罪で逮捕される。資産のすべてを「なぜか」失っていきなり安い弁当を買うようになる秋生は、麗美の愛人である伊志嶺に刺殺されてしまった。倫太郎は議員を辞職するに至った。

 復讐を果たした新堂家は改めて人生をスタートさせる。一葉は主婦に戻り、航輔は美容師として、沙奈はジャーナリストとして、そして優磨も就職活動を再開する。新たに動き出した4人生活。しかし、ある日の朝、新堂家の食卓には5人分の食事が。5人目として座ったのは「葵」だった。一葉は「罪を抱えきれなくなったら、今度こそ私が殺す」と発言し、共に暮らすようになったのだ。家族も全員彼女を受け入れている。包丁を持った一葉はふっと微笑み、物語は終わる……。

 ハッピーエンドにも思える『ブラックファミリア』の最終回なのだが、このドラマ、結局「最後のオチ」をやりたかっただけのようにも思える。葵が一緒に暮らすのはやや衝撃だが、一葉はともかく他のメンバーが家族を殺した犯人をすんなり受け入れているのがどう考えてもおかしい。このオチだけやれればいいや! という投げやり感は否めない。

 本作品は、とにかく「伏線」や「ミステリ要素」が少なく、ひたすら「あの手この手で復讐」をするという内容だった。娘を殺した犯人を捜すという主題だが、そこに推理要素はなく、葵が犯人とわかる描写も唐突だった。現代はSNSが発展しているため、下手な伏線やミステリ要素を出してもすぐにバレてしまう。だからこそ制作者は「ノリ」や「雰囲気」で物語を押し通す選択をしたのかもしれない。それは「逃げ」ではあるが、制作側の苦悩も理解できなくはない。

 ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても全体の厚みは物足りないと断じざるを得ないが、演者はそれぞれしっかり仕事をこなしていた。決して派手なキャストではない分、演技は安心してみていられた。特に平山祐介の気持ち悪いエロ親父の演技はなかなかで、渡邉理佐も元アイドルから女優として着実にキャリアを積んでいることもわかった。それだけでも放送して良かった、とは言えるのではないだろうか。

■番組情報
木曜ドラマ『ブラックファミリア ~新堂家の復讐~』
読売テレビ・日本テレビ系毎週木曜午後11時59分~

出演:板谷由夏、山中崇、森崎ウィン、渡邉理佐、星乃夢奈、筒井真理子、塩野瑛久、平山祐介、瀧七海、小野武彦、少路勇介、長妻怜央(7ORDER)、しゅはまはるみ、カトウシンスケ、釈由美子 ほか

脚本:佐藤友治、城定秀夫、富安美尋
監督:城定秀夫、坂本栄隆、本田隆一
音楽:Yuria Miyazono、石毛駿平
チーフプロデューサー:岡本浩一
プロデューサー:福田浩之、馬場三輝(ケイファクトリー)
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:読売テレビ
公式サイト:https://www.ytv.co.jp/blackfamilia/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/12/09 03:00
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