『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』第8話 やっとドラマが始まった
#ONEDAY
なるほど、おそらくはこの回がいわゆる「エピソード1」なのでしょう。さて月9の企画会議ですよというのが始まって、じゃあ今回はクリスマスに向けて、『ONE DAY』ってのはどうでしょう。クリスマスイブの丸1日を1クール使って描いちゃう。いいですね、あれだ、トヨエツの……なんだっけ。『大停電の夜に』(05)だ。でも、1クールも埋まります? 1日って24時間ですよ。そこでだ、現実を拡張するんだよ。拡張? いいか、3人主人公を立てて、3つのストーリーラインを同時に走らせるんだ。それをクール後半でクロスさせて、ダイナミズムを生む。どうだ、斬新なアイディアだろう? いいですね、タランティーノだ。『パルプ・フィクション』(94)でしたっけ。斬新かどうかは別として、うまくいったら伝説になりますよ。よし、じゃあそれで行こう!
みたいなことがあって、最初に設計図を作ってプロットを立てたのが、おそらく今回の第8話。ここから始まるクライマックスと、ここまでのプロローグに、明確にドラマが分かれている。
あくまで推測ですけど、そう思わせるほどに今回の情報開示の勢いはすごかった。スグロジセイジとアマギユウタという2人のニノのバックグラウンドや、謎の警視庁マン・江口洋介との関係性、さらにはここまで偶然でしかつながっていなかった洋食屋パートとニノとのつながり、第1話冒頭の事件についてのほのめかし、「ニノは犯人じゃない」と言い切るキャスターの立ち位置などなど、今まで決まってこなかった、保留されてきた設定がビシビシ決まってきて、ちょっと快感すら覚えてしまいました。大沢たかおシェフはあいかわらず妖怪かと思うほど気持ち悪い動きをしてますが、それ以外はおおむね整理されて面白くなりそうになってきました。
そして切実に、これが第1話だったらなぁと感じてしまう。記憶喪失の主人公ニノが記憶を取り戻したかと思ったら、撃たれて救急車に! 第1話からいきなりクライマックス! これからどうなるの!? だったら、すごく楽しみにできたドラマだったなと思ってしまう。
キャスターが「ニノは犯人じゃない」と言い切る理由も、もしかしたら独自の取材で何か証拠をつかんでいて、それを簡単に警察には引き渡さないという駆け引きなんかもあったりして、どうなっていくんだ!? というのなら楽しみですけど、私たちはすでにここまでの7話で、このキャスターはなんの証拠も持ってなく、単なる印象論だけで「ニノは犯人じゃない」と言い切ってるいいかげんな人だということを知ってしまっている。
最後に江口洋介がニノを撃つシーンでも、え? 1話からニノ死んじゃうの!? 江口、何者なの? そこに愛はあるの? という疑問符だらけの状況なら楽しみだけど、私たちはもうすでに、何か知らんけどこの2人がナァナァな関係であることを知っていて、どうせ撃ってないし、血糊もそのシェフが持ってたケチャップだろ、そういう安易なことやるんだよな『ONE DAY』って、ということを知ってしまっている。
ここからのお話を作って、ここまでで伏線を張り巡らせるという手順そのものは間違ってないと思うけど、その伏線がことごとく「回収したら快感」ではなく、「回収したのにガッカリ」に作用している。
でも、もういいです。過去は取り戻せないし、私たちには未来がある。とりあえず、ここからラストまで、『ONE DAY』が作為じゃなく語りたかったドラマが語られるはずです。いったんすべて忘れて、今はこの素敵なクリスマスイブを楽しみましょう。ちなみに私は『M-1』見る予定です。今年は7時間ぶっ通しだって。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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