モンスター・ヴァースのドラマシリーズ『モナーク』配信開始も……日本のエンタメの出遅れにつながる危機
#Apple TV+ #モナーク
2014年に公開されたハリウッド映画『GODZILLA ゴジラ』から始まる、一連の怪獣映画シリーズ「モンスター・ヴァース」。同シリーズとしては初の実写ドラマとなる『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』が、11月17日からApple TV+で全世界配信されている。日本人キャストも多く出演し、日本国内でのロケも行っている同作品だが、残念ながらあまり話題になっていない状況だ。
米レジェンダリー・エンターテインメントが製作するモンスター・ヴァースは、『ゴジラ』のリブート版である『GODZILLA ゴジラ』を皮切りに、2017年の『キングコング:髑髏島の巨神』、2019年の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、2021年の『ゴジラvsコング』と、4本の映画が公開。さらに、来年4月には『Godzilla x Kong: The New Empire(原題)』の公開も控えている。
日本で生まれたゴジラのリブート版シリーズということもあり、『GODZILLA ゴジラ』、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の渡辺謙、『キングコング:髑髏島の巨神』のMIYAVI、そして『ゴジラvsコング』の小栗旬など、日本人キャストも多く出演。
今回の『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』では、渡部篤郎とRIKACOの次男である渡部蓮、音楽グループFAKYの元メンバーで『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(2021年)などにも出演している澤井杏奈が、主要キャストとして出演している。また新宿歌舞伎町付近で撮影されたシーンもあり、日本人にとっては馴染みやすいドラマとなっている。
人気のモンスター・ヴァースの初ドラマにして、日本人に縁が深い作品となれば、当然のごとく日本の視聴者の間でも大きな話題になりそうなものだが、現状ではほとんど盛り上がっていない。
「『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』を配信しているApple TV+は、NetflixやAmazonプライム・ビデオなどに比べると圧倒的に会員数が少ない。正確な会員数は公表されていませんが、日本国内のApple TV+の人気はアマプラの400分の1という報告もあります。アマプラの国内会員数は推定1600万人程度と言われているので、単純計算するとApple TV+は4万人。実際はここまで少なくないとは思いますが、いずれにしろApple TV+の会員数が圧倒的に少ないのは間違いない。Netflixの約700万人、U-NEXTの約300万人、ディズニープラスの約360万人のいずれにも、まったく太刀打ちできない状況ですね。『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』がいくら世界的人気となっているモンスター・ヴァースのドラマシリーズだったとしても、日本国内で話題にならないのは仕方ないことでしょう」(メディア関係者)
多くの動画配信サービスでは、一般公開された映画や過去に放送された人気ドラマなどとオリジナルシリーズを併せて配信している。しかし、Apple TV+の場合、基本的に見放題の対象となっているのはオリジナル作品だ。
「Apple TV+は見放題サービスで観られる作品数も、ほかの配信サービスに比べると圧倒的に少ない。新作も頻繁に公開されているわけではなく、“お得感”という点で劣る。『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』のほかにも、エミー賞20部門でノミネートされた『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』、アメリカでベストセラーとなった小説のドラマ化『Pachinko パチンコ』など、注目作もありますが、これらもなかなか話題になっていません」(同)
ちなみに、アメリカでのApple TV+の会員は2000万人以下と言われている。
「こちらも実数はわかりませんが、日本より広く普及しているのは確か。『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』の認知度やモンスター・ヴァース人気における、日米格差がどんどん広がっていきそうです」(同)
日本では現在、戦後日本を舞台にした映画『ゴジラ-1.0』が公開中だ。モンスター・ヴァースとはまったく異なる方向性で、国内向けのゴジラが展開されているのだ。
「日本国内ではやはり“東宝のゴジラ”の人気が高く、レジェンダリーのモンスター・ヴァースはそこまでではないというのが現状。東宝ゴジラの人気が高いのは問題ないのですが、今後さらにモンスター・ヴァースが世界的に盛り上がった場合、東宝ゴジラの人気が高いがゆえに、日本におけるモンスター・ヴァース認知度が世界と比べて異常に低くなる可能性もあるわけです。
モンスター・ヴァースの作品内においても日本は重要なポジション。その日本で盛り上がらないのはちょっともったいない。モンスター・ヴァースは日本の俳優が海外に進出するいいチャンスでもあるので、日本のエンタメ界全体を考えると、モンスター・ヴァースの波にはしっかり乗っておくべきなんですよね」(映画関係者)
同一世界の中で複数の作品がクロスオーバーするシリーズとしては、マーベル・コミックを原作とするマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)がおなじみだ。
しかし、MCUの映画最新作『マーベルズ』の北米でのオープニング興行収入は4600万ドルでMCU史上最低、全世界でのオープニング興行収入も1億1000万ドルでMCU史上最低となった。MCU人気に陰りが見えている中、モンスター・ヴァースが次なる覇権になるのではないかともささやかれている。
「モンスター・ヴァースは、MCUほど作品数も多くなく、今から観始めても遅くないということで、まだまだファンが増える余地がある。MCUと同じくアメコミ原作でDCエクステンデット・ユニバースから発展的に生まれ変わったDCユニバースとともに、MCUの一人勝ち状態を崩していくと言われているわけです。
これから世界を舞台にどんどん成長していくであろうモンスター・ヴァースなのに、『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』がApple TV+の配信だということで、日本でまったく注目されないのは、あまりにも悲劇ですよ。むしろ日本でこそ人気を獲得しなければならない作品です。正直、Apple TV+での配信というのは戦略ミスだったと思います」(同)
ゴジラが誕生した国であるにもかかわらず、このままではモンスター・ヴァースの盛り上がりの蚊帳の外となりそうな日本市場。今後の日本のエンタメのグローバル化に関わる問題として、しっかりと考えていく必要がありそうだ。
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