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日刊サイゾー トップ > 社会  > チューナーレステレビ市場の拡大で変革期へ

チューナーレステレビ市場に参入続々…拡大続けばNHK受信料制度の見直し必至に

「ニトリネット」より/4KチューナーレススマートTV

 家具・インテリア大手のニトリが11月上旬より32V型のチューナーレステレビ「32S2」の販売を開始したことが話題になっている。チューナーレステレビの売上や取り扱い店舗は徐々に増加しているが、それに伴ってNHKの受信料をめぐる問題が過熱しそうだ。

 チューナーレステレビは、テレビ番組(地上波、BS、CS)の受信ができないことから「NHK受信料の支払い義務がない」とされており、ネット配信サービスの視聴やゲームなどに特化した仕様。ニトリが販売する「32S2」はGoogleTVを搭載し、NetflixやYouTube、Amazonプライムビデオなどの動画配信サービスの視聴が可能で、価格は2万9990円と手ごろだ。

 チューナーレステレビ市場は、2019年にドン・キホーテが32インチHD対応「チューナーレス液晶テレビ」を1万9800円(税抜)という低価格で販売したことで注目度が急上昇。以降、ゲオや先述のニトリなど異業種からの参入が相次いでいる。放送法64条1項では「NHKの放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」とあるが、チューナーレステレビは放送受信が不可能であるため、ネット上で「受信料を払わなくていいテレビ」と話題になったことも人気上昇に影響した。

 調査会社BCNが4月に公表したデータによると、薄型テレビ市場全体における3月時点でのチューナーレステレビの比率はまだ1.6%とごくわずかだが、同社は「(比率が小さいのは)シャープ、ソニー、パナソニックなどの国内の有力テレビメーカーが参入していないためで、そうした大手が動けば、市場は本格的に拡大することになるだろう」と予測している。

 チューナーレステレビの購入者は若者層が中心かと思いがちだが、実は30代~40代の働き盛りの世代が目立つという。その年代は仕事が忙しいのでゴールデンタイムに家におらず、リアルタイムで番組を観られずに「TVer」などの見逃し配信を視聴することが多いため、チューナーレステレビで十分というわけだ。今年最大のヒットドラマとなった『VIVANT』(TBS系)は視聴率が高かったが、それと同時に見逃し配信で爆発的な再生数を叩き出しており、テレビ番組の視聴スタイルの変化をうかがわせた。

 最近は民放各局でテレビ番組のリアルタイム配信の試みも進んでおり、ますますチューナーレステレビに関心を持つ人が増加し、その需要を見込んで大手メーカーが動けば一気に市場が活発化しそうだ。だが、そうなってしまうと困るのが「みなさまの受信料」で成り立っているNHKだ。

 テレビ視聴環境の激変を受け、総務省の8月の有識者会議ではNHKの番組ネット配信を“必須業務”とすることを前提として「ネットでNHKを観ている人を対象に、スマホやタブレットなどの従来のテレビ以外で視聴している人からも条件付きで受信料を徴収すべき」との考えがまとめられた。ただし、スマホやタブレットなど購入しただけで受信料を徴収するのは理解が得られないとし、NHKを観るためのアプリのインストールや契約手続きを行った人だけを対象にするよう提言されている。

 しかし、わざわざ契約手続きをしてネットでNHKを視聴する人がどれほどいるのかは疑問で、この案では「将来的に十分な受信料が得られなくなる」と指摘されている。そうなれば、NHKがスマホなどを保有しているだけで受信料の支払い義務が生じるような制度の成立を目指そうとする可能性があるが、ネット端末やチューナーレステレビがすべてターゲットになるとすれば世間の反発は免れず、いずれにしても大揉めとなりそうな課題だ。

 イギリスでは、公共放送BBCの受信料で不払いに対する厳しい刑事罰があったが、時代にそぐわないとして受信料の一律徴収制度の見直しが検討され、早ければ2027年までに現行の受信料制度が終了する可能性があると報じられている。同じように、日本もNHKの受信料制度について考え直す時期に差し掛かっているのかもしれない。

SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。

さとうゆうま

最終更新:2023/11/23 09:00
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