トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > 『ゴッドタン』視聴者と握り合った自由

『ゴッドタン』松丸友紀アナの「変なおじさん」に見る、視聴者と握り合った自由

一撃必殺松丸道場 | TVer

 18日深夜の『ゴッドタン』(テレビ東京系)は「一撃必殺!松丸劇場」。キャッチフレーズは、「若者よ、私を目指せ」だ。普段から同番組を見ていない視聴者にとっては、何が行われるのかまったくわからない企画である。

 来年にはテレビ東京入社20年、『ゴッドタン』に配属されて18年という松丸友紀アナウンサーを「道場長」とし、「第2の松丸オーディション」優勝者・たけうちほのかに、その技を授けるという。ここまで説明しても、未見の方には何のことやらである。

 放送直前、番組プロデューサーの佐久間宣行はX(旧Twitter)で「いろんな意見があると思いますが、僕は一番面白いアナウンサーは松丸だと思ってます。松丸で30分です。」とポストしている。

 企画は、松丸の「ムカついた話」というエピソードトークからスタート。そして、松丸が「嫌味」のスキルをたけうちに伝える「嫌味チャレンジ」として、松丸が得意とする「さりげない嫌味」を伝授する。

 続いて、松丸とたけうちが変顔でMCの劇団ひとりを笑わせる「変顔チャレンジ」。おぎやはぎ・矢作兼も「いまどき変な顔だけする企画ある?」と疑問を呈しながら笑い転げている。

 最後は寸劇のクライマックスに松丸とたけうちが、ユーロビートに乗って「変なおじさん」ダンスを披露。世間的には無名のアナウンサーと、無名のタレントが、志村けんのコスプレにハゲヅラをかぶって身をくねらせている。

 まったくためにならない、何の役にも立たない、ただ笑えるだけの『ゴッドタン』の余韻は、そうして土曜の深夜に霧散していく。

 なんて自由なんだろう、と感動してしまった。

 なんのしがらみもなく、面白いことだけをやりたい。テレビマンに限らず、あらゆる仕事をする大人たちが、本当はそう考えているはずだ。だが、現実はそんなに甘くないこともとっくに理解している。なぜなら大人だからだ。大人になるとはそういうことだと、いつの間にか納得している。

 そしていつしか、仕事の外に自由を求めるようになる。誰もが『ゴッドタン』のようにはできない。ただ羨ましいというわけではない。あの自由を獲得するだけの苦労に思い及べば、気が遠くなる。

 テレビって、スポンサーとかあるんだろう。編成の偉い人とかいるんだろう。視聴率とか、経費とか、クリアしなければならない問題が、想像を絶するほどあるはずだ。

 要するに『ゴッドタン』は、それら無理難題を全クリしているのだ。この超くだらない「一撃必殺!松丸劇場」をやるために。自由を獲得するために。視聴者とだけ、握り合うために。

 思えば先週と先々週は、「マジ歌ライブ」の録画だった。S席9,000円、A席8,000円という高額チケットを、さいたまスーパーアリーナの席数分売り切っている。Blu-rayやDVDの円盤だって、特典をつけて売りさばくのだ。

 大金を生む「マジ歌」も、何の足しにもならなそうな松丸アナの「変なおじさん」も、『ゴッドタン』が18年かけて育ててきたコンテンツだ。また、気が遠くなってくる。

 先月の「西野vsひとり」もそうだった。あまりにも自由だった。面白すぎて、なんだか切なくなる。そんな番組は、『ゴッドタン』以外に知らない。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2023/11/20 19:00
ページ上部へ戻る

配給映画