乃木坂&AKBの注目株が躍動する『オッドタクシー』、アイドル舞台の本流となるか
#AKB48 #オッドタクシー #乃木坂46
東京・北千住のシアター1010で上演されていた舞台『オッドタクシー 金剛石(ダイヤモンド)は傷つかない』は、11月12日に東京公演の千穐楽を迎えた。この舞台は、2023年1月に東京、2月には大阪で上演され大反響を呼んだ作品のメインキャストを一新し、再解釈を施したものとなる。
今年の始めに上演された『オッドタクシー』では、小栗有以(AKB48)、濱岸ひより(日向坂46)、鈴木瞳美(≠ME)、山口乃々華といったグループの垣根を超えたメンバーを配役し、なるせゆうせいによる解像度の高い演出のほか、四ツ橋サクヤを演じた高橋雄一といった共演者の巧みな演技によって大きな爪痕を残した。
そのベースとなっているのが、21年4月に放送されて大反響を巻き起こしたアニメ『オッドタクシー』。22年には映画化され、現在は新プロジェクト「RoOT / ルート オブ オッドタクシー」コミカライズが連載されるなど、今もなお愛され続けているが、舞台で描かれるのは劇中に登場するアイドルグループ・ミステリーキッス結成までの前日譚となる。
今回の公演ではメインキャストに伊藤理々杏(乃木坂46)、佐藤璃果(乃木坂46)、田口愛佳(AKB48)、行天優莉奈(AKB48)といったフレッシュなキャストに一新し、初演で築きあげてきた『オッドタクシー』に新たな解釈を加える。そのなかで新たにミステリーキッスを担う新キャストがどのように世界観を作り上げていくのが再演における注目であり、面白さでもある。
この再演では、センター・二階堂ルイを演じる伊藤がアイドルとしての高い適性を見せた。2018年には乃木坂46版ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』でセーラー戦士の一人セーラーマーキュリーを演じるほか、2022年には舞台『リトル・ゾンビガール』では石井杏奈とのダブルキャストを務めるなど、舞台経験の豊富な乃木坂46のなかでもとりわけ存在感を放つ。伊藤が演じる二階堂は、自認する圧倒的な可愛さとアイドルとしての野心を持つキャラクターではあるが、伊藤はその野心的な感情表現において、絶大なインパクトを見せる。初演で小栗が見せた王道アイドル像の脱却とは異なる伊藤の二階堂像は注目すべきポイントだ。
伊藤はまた力強い歌声でアイドルとして中心に立つ者としての存在感を発揮してきた。こと伊藤において、舞台演劇分野での活動についていえば、メインキャストを務める4人のなかでもっとも経験を積んできた。舞台に立つ伊藤の存在感は、ほか3人のキャストを牽引する形で、ステージに説得力を生んでいた。
『オッドタクシー』とアイドルとの絶妙な相性
初演でもそうだったように『オッドタクシー』では舞台経験の少ないメンバーがメインキャストとして出演しているのも象徴的だった。物語のキーパーソンであり、自分の欲求に正直で無邪気な性格の和田垣さくらを演じるのが4期生の佐藤である。佐藤を始めとした一部の4期生は、グループの歴史のなかでメンバーが都度臨んできた舞台『プリンシパル』シリーズを経験することなく、それぞれが単独で舞台に立ってきた。そのようななかで佐藤は登場人物が持つ個性をかなり的確に表現し演じている。和田垣は終盤にかけてじわじわと純粋であるがゆえの怖さが出てくるが、佐藤は巧みに演技へと落とし込み、順応してみせた。
また、自分に自信がなく控えめな市村しほを演じた田口は、かつて舞台『山犬』にて横川高校コーラス部員を演じるメインキャストに近しい同級生役という登場人物を演じたことがあったものの、メインキャストで出演するのは今回が初めてとなる。他のメンバーと比べて感情の起伏が非常に大きい人物であるだけに、とりわけ演者の技量がダイレクトに伝わってくる役でもあったが、田口は経験値の少なさを感じさせない繊細な表現を見せてきた。ここには『オッドタクシー』がある意味でキャリアの浅いメンバーが素質を示す公演としての立ち位置が見て取れる。
天性の才能を持ちながらも、物語の最終局面では悲運に見舞われるのが三矢ユキを演じる行天である。初演では舞台演劇において有数の実績を誇る山口が配役されていたように、三矢は芝居巧者のイメージが強い。行天は今年2月に上演された『Tokyo Community Life ~Reborn~』で主演を務めるほか、様々な舞台経験を積んでおり、ひときわ舞台上で輝きを放っていた。かねてから舞台への適性を見せてきた三矢だが、『オッドタクシー』で見せた純粋さとアイドルとしての強さからは底しれぬポテンシャルを感じさせた。
本編上演後にはミステリーキッスを演じる4名によるスペシャルミニライブが行われ、「波間にKISS」「ミステリーキッス 超常恋現象」「金剛石ヒューマン」を披露したが、これは『オッドタクシー』の世界観と地続きの空間となっていた。それはアイドルとして活動する4人だからこそ、生まれるものといっていい。舞台、そしてライブまで続く『オッドタクシー』とアイドルという存在は、ここで絶妙な相性の良さを見せる。
これにより初演以上にアイドルと親和性の高さを感じさせた再演となったが、アイドルの舞台経験の場として続いてゆく地盤を固めたのがこの『オッドタクシー』であると考えると、どうしても『乃木坂46版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」』のような形で続いていくことに期待してしまう。11月25日からは、神奈川・海老名での関東凱旋公演も控えており、初演から引き継いだメインキャストたちが躍動する姿をぜひ目に焼き付けてほしい。
■舞台「オッドタクシー 金剛石は傷つかない」
11月25、26日 海老名市文化会館で関東凱旋公演開催
https://oddtaxi-stage.com/
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