霜降り明星・せいや、増加中のピン稼働で見せる「信頼感」の正体
#霜降り明星 #せいや
霜降り明星・せいやが、バラエティ番組でのピン稼働を増やしている。今週、2本の深夜番組で重要な役割を課されている「ピンのせいや」の姿を見た。
13日深夜に放送された『有吉弘行の脱法TV』(フジテレビ系)は、テレビのコンプライアンス基準の曖昧さに迫る挑戦的なバラエティだった。
MCの有吉の横に、ニュースキャスターの吉川美代子と、せいや。その横で女性アナウンサーがすりガラス越しに進行するという怪しげなスタジオセットで始まった同番組だったが、せいやは冒頭から「いや、おかしいじゃないですか。普通によう、進行できますねえ」とツッコミを入れる。
この番組では、せいやは完全なツッコミ役として呼ばれていた。
「僕ら大丈夫ですか」「何するんですか」
有吉は、この怪しい番組の企画発案者として落ち着き払っている。吉川美代子も、キャスターなので落ち着き払っている。すりガラス越しの女性アナは構わず番組を進行していく。そんな中、ひとり戸惑ってあたふたしている、せいや。この配置は、視聴者に対する「せいやの立場で番組を見てください」というメッセージである。
この日のせいやの仕事を、ほかの芸人に置き換えて考えてみる。例えばハライチ・澤部佑、ハリセンボン・近藤春奈、三四郎・小宮浩信……頭に浮かぶのはコンビのツッコミばかりだ。言うまでもないが、霜降り明星では、せいやはボケを担当している。
与えられた役割の中で状況を判断しながら、程よい庶民感と愛嬌で視聴者の共感を呼ぶ。スタジオでもVTR中のワイプでも、せいやは細かくツッコミながら状況を補足していく。印象としては、番組全体の発言量の半分以上が、せいやだったのではないか。使われた発言の量は、そのまませいやという芸人の需要と成績を意味する。
17日深夜の『チョコプランナー』(テレビ朝日系)では、「本ネタじゃないお笑い賞レース!『平場でのくだりグランプリ』」という企画が放送された。チョコレートプラネットと秋元真夏、せいやの前で若手芸人たちがネタ以外の「平場のくだり」を披露するという内容だが、大外に座ったせいやの役割は、もっぱらガヤとリアクションだった。往年のフジモンこと藤本敏史がハマりそうなポジションである。
前半は比較的おとなしかったせいやだが、スタジオが温まってきてからは、イスから立ち上がり、机をたたいて大声ガヤを飛ばしていた。後半には、その発言のほとんどがテロップとして表示されていた。
この人を座らせておけば、なんとかなる。霜降り明星・せいやは、そんな存在になりつつあるように見える。
愛嬌と高度な状況判断。それが、せいやの強みだろう。ZOOMで何かあったにもかかわらず、持ち前の愛嬌と善人イメージを失わなかったのは本当に大したものだと思う。
そして状況判断については、そういえば今年6月の『霜降り明星のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で印象的なエピソードを語っていたことがある。
せいやと粗品の間には「ジャンケンに関する取り決め」があったという。ロケで何かに挑戦する順番を決めるときなど、2人がジャンケンをする必要があるときは「粗品が絶対にグーを出す」という約束だった。
つまり、ロケの状況を判断して、せいやが行くか、粗品が行くか、その決定権がせいやにあったということだ。せいやが行くならジャンケンにパーを出して勝ち、粗品を生かせるならチョキを出して負ける。決めるのは、せいや。その約束に従い、粗品は10年にわたってグーだけを出し続けていた。
この話には、せいやがその約束を覚えておらず、適当にジャンケンをしていたというオチが付くのだが、あの粗品が、ロケの行方をせいやの判断に委ねていたという事実、そして粗品は10年間、そのせいやの判断に違和感を抱かなかったという事実が、せいやの状況把握能力の高さを示している。
それにしても、なんというコンビなんだろう、と思ってしまう。霜降り明星。粗品の異能ぶりについては過去にさんざん書いてきたので省略するが、せいやはこうしたスタジオワークにおけるタレント能力に加えて、モノマネもできるし歌うまでも通用する。ギャグや変顔の瞬発力もある。
『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)を制してから5年がたった。コンビは現実を拡張していく。霜降り明星はまだ30歳と31歳である。今後いったい、どんな未来を見せてくれるのだろうか。
(文=新越谷ノリヲ)
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