米ディズニーの米Hulu買収が「日本の民放配信サービス」に与えるインパクトと出遅れるフジとテレ朝
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米ウォルト・ディズニーは、米動画配信サービスHuluの未保有株33%を米コムキャストから取得する計画を発表した。ディズニーはすでにHuluの株式67%を保有しており、これによってHuluは完全にディズニーの傘下となる。
「ディズニーの配信サービスであるディズニープラスと米Huluは、すでに一部のコンテンツを同時配信するなど、連携関係にあります。今後ディズニーがHuluの全株式を取得することになれば、Huluがディズニープラスに組み込まれる可能性もあるでしょう。そうなった場合に注目されるのは、2014年に日本テレビに売却された日本版Huluの展望です」(ネットメディア関係者)
日本においてもディズニープラスとHuluは関係性を深めている。2022年2月にはウォルト・ディズニー・ジャパンと日本テレビが協業体制を構築。日本テレビ制作ドラマ『金田一少年の事件簿』がディズニープラスで配信されている。また2023年7月からは、ディズニープラスとHuluのセットプランの提供がスタートした。
「アメリカでディズニープラスとHuluが統合したら、日本国内での両サービスの統合もかなり現実的になってくるでしょう。コンテンツの厚みを増やしたいディズニープラスにとっては歓迎すべきことですし、自社コンテンツを配信で効率的に収益化したい日本テレビにとっては、会員数340万人のディズニープラスとの統合で会員数が増えるのは有り難い」(同)
日本国内の民放キー局は、それぞれ自社コンテンツを配信するサービスを持っている。日本テレビはHuluがその役割を果たし、有料会員数は300万人程度とみられている。TBSとテレビ東京の配信サービス「Paravi」は約90万人の会員を抱えていたが、2023年6月に「U-NEXT」に統合され、現在の会員数は400万人ほど。フジテレビの配信サービス「FOD」の会員数は約100万人、テレビ朝日は「TELASA」は90万人程度とされている。
「テレビ局の配信サービスの会員数は、人気コンテンツが配信された直後に増加しますが、時間が経つと解約するユーザーもいるので流動的です。とはいえ、単純に会員数だけを見れば、Huluの日テレ、U-NEXTのTBSとテレ東がリードし、フジとテレ朝は置いてかれている状態。さらにHuluが、ディズニープラスが統合されれば、さらに数字を伸ばしていくこととなる。フジとテレ朝も、配信サービスにおいてなんらかの施策をしなければならない状況と言えるでしょう」(同)
会員数が伸び悩んでいたParaviは、U-NEXTと統合されたことによってユーザー評価が格段に高まったという。
「そもそもParaviを含めてテレビ局の配信サービスはコンテンツの量が少なく、ユーザーを満足させることができないという大きな欠点がある。U-NEXTは国内最大級のコンテンツ量なので、Paraviだけを契約していたユーザーからすればラッキーでしかない。統合によってユーザー評価が高まるのは当然のことです。U-NEXTとしても『VIVANT』のような地上波の優良コンテンツを配信できるのは大きなメリットでしょう」(同)
こうなってくると、フジテレビとテレビ朝日についても配信サービスで遅れを取らないために、大手配信サービスとの連携強化あるいは統合という選択肢も考えざるを得なくなってくる。
そもそも他のテレビ局に先んじて大手配信サービスと手を結んだのは、フジテレビだった。フジは2015年からNetflixと提携関係にあり、フジテレビ制作の『テラスハウス』、『あいのり』、『逃走中』などがNetflixで配信されている。
「日テレがディズニープラス、PraviがU-NEXTなら、フジテレビはNetflixとの連携を強化していくというのがもっとも現実的だと言えるでしょう」(同)
Netflixの日本国内での会員数は600万人程度といわれており、もしもフジテレビが全面的に自社コンテンツを配給することになれば一気に民放配信サービスにおいてトップに躍り出ることになる。
一方、テレビ朝日はTELASA以外に「テレ朝動画」という配信サービスやテレビ朝日が出資するABEMAの有料サービス「ABEMAプレミアム」があり、グループ内で複数のサービスが乱立している状態だ。
「テレ朝の場合、外部との提携よりも先にサービスの一本化が必要かもしれません。テレ朝の番組とABEMAの番組を網羅的に見られるサービスがあればユーザーの利便性も高まり、会員数増加にもつながるはず。それが実現できれば、ほかの大手配信サービスに組み込まれることなく自社で大きな配信サービスを作り出せる可能性もゼロではないでしょう」(同)
動画配信サービスにおいて重要なことは、“どれだけ多くの作品を網羅的に見られるかどうか”、“どれだけ魅力的な作品が配信されているか”、そして“料金”だ。究極的なことを言えば、そこまで高くない料金で、民放全局の番組がひとつの配信サービスで観られるのが、ユーザーにとってももっとも歓迎すべきことである。
「いまはTVerで民放各局の番組を期間限定の無料見逃し配信を行っていますが、TVerの有料版ができて、各局の番組のアーカイブをいつでも観られるようになれば、それが最高だということ。あまり現実的な話ではありませんがね……」(同)
いずれにしろ、ディズニーによるHulu買収の動きが、日本のテレビ局の配信サービスにおける再編成を促すことになるのは間違いなさそう。視聴率とは異なる部分での激しい戦いが始まりそうだ。
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