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日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > 粗品、いじめられていた少女に会いに行く

霜降り明星・粗品、VOCALOID曲「#みどりの唄」いじめられていた少女に会いに行く

粗品『#みどりの唄』feat. 初音ミク – YouTube

 3年前の2020年9月、霜降り明星・粗品の個人チャンネル「粗品 Official Channel」に、1曲のVOCALOID曲がアップされた。曲名は「#みどりの唄」。スケッチブックと絵筆を胸に抱えて頬を絵具で汚した少女をバックに、初音ミクが歌っている。

 個人チャンネルを開設した当時から、粗品は「ちょっと懐かしいな」というノリだけで初音ミクを利用したVOCALOID曲を発表していた。「#みどりの唄」は、その6曲目となるタイトル。「みどり」という少女をテーマに、粗品独特の抽象的な歌詞で、少女を励ますような内容だった。

 やがて、その歌詞の1文字目を縦読みすると「曲名と共に大丈夫だよと呟いて1人の少女を救って下さい」と読めることが指摘される。Twitter(当時)上に、粗品ファンの多くが、「#みどりの唄」という曲名とともに「大丈夫だよ」とツイートした。「#みどりの唄」で検索すると、「大丈夫だよ」という言葉がズラリと並んだ。曲名に「#」がついている意味が明確になる。

「次の曲は是非聞いて欲しいです サンパチスターは皆さんを勇気付けるために作りましたが 次の曲は皆さんが勇気付ける番です」

 粗品が曲をアップする前に、755に残したコメントだ。この曲は、粗品が誰か(おそらくは、みどりという少女)に「大丈夫だよ」というメッセージを送るために作った曲だった。しかも、その「大丈夫だよ」という言葉が、粗品1人からではなく、この曲を聞いた多くのファンから、みどりに届くように。

 なんだかいい話だな、と思った記憶が、かすかに残っていた。その「#みどりの唄」を、再度、聞き直さなければならなくなった。

 6日、粗品の個人サブチャンネル「粗品のロケ」に「一人の少女の夢を応援しに来た」という動画がアップされた。タイトルには【#みどりの唄#1】と付記されている。

 夜、粗品は名古屋にいた。

「4年前かな、1件のDMが来てんけど」

 粗品が、この見知らぬ土地を訪れた経緯を語り出す。学校でいじめを受けているという女子高生と、DMのやり取りをしていたことがある。彼女は絵を描きたいとか、絵本を作りたいとか言っていた。その子がいじめを乗り越えて、高校も卒業して、初めて個展を開く。その女の子に、会いに行く。

 スケッチブックを抱えた少女。「#みどりの唄」の歌詞にも「大好き描きたい絵本」という一節がある。縦読みしたときの「大丈夫」の「大」だ。

 粗品が目的の場所に到着すると、こぢんまりとしたスペースの壁一面に飾られた絵画に囲まれて、ひとりの女性が自己紹介をする。

「中山みどりです、アーティストやってます」

 満面の笑顔にダブルピース。当然、喜んでいることは表情からわかるが、憧れのスーパースターの登場に取り乱したり、わめいたりということはまったくない。粗品ファンではなく、中山みどりは一人の自立したアーティストとして、そこに立っている。

「さすが言葉は良い 『大丈夫』は強い」

 これも、歌詞の一節だ。

 いじめられていたという少女に、いったいどれほどの「大丈夫だよ」が届いたのだろう。どれほどの「大丈夫だよ」が届けば、人はこうして立っていられるようになるのだろう。

 4年越しの出会いの時間は、淡々と過ぎていく。芸人とファンではなく、創作者同士の語り合いが続く。アート初心者の粗品が、絵画の見方について、みどりに教えを乞う場面も少なくない。粗品が1点の絵画を購入することになり、マネジャーに2万円を借りるというオチをつけて、動画は次回へ続く。

 粗品は、こうした企画が「お涙頂戴だ」「あざとい」などと評されることを、まったく恐れていない。有名人という存在が人に力を与えることに自覚的であり、それを利用して人に力を与え、その姿を公開することがまた別の人に力を与えることを知っている。

 だから、恥も外聞もなく「感動回です」「ええやろ」と言い切る。

「いけないんだ風見鶏」

 みどりと風見鶏で韻を踏んで、曲は終わる。いけないんだ、風見鶏。粗品はどれだけの向かい風が吹いても、目線の方向を決して変えない。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2023/11/16 15:13
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