ゾフィー解散に寄せて 上田航平という“非常識”に、お笑いファンは何を思うか
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午前中、ラバーガールっていい感じでキャリア積んでるよねという原稿を書いていたところ、ゾフィー解散のニュースが飛び込んできた。
昨年3月の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(AbemaTV)でかなり深刻な状況を告白しており、その後、『しくじり』で共演していたオードリー・若林正恭が自ら主催するネタライブにゾフィーを呼んで、サイトウナオキの「チェだぜ!」を再ブレークさせようと画策するなどの動きもあったが、来年に決まっていた単独ライブをキャンセルしての解散だというのだから、よっぽどのことなのだろう。
ゾフィーは約10年のキャリアを閉じる。今年1月からの4都市6公演ベストネタツアー『ZOBEST』と、3月の新ネタ33本ライブ『#ZO33Y』が総括となった形だ。今年の『キングオブコント』(TBS系)も、準々決勝で敗退している。
お笑い芸人の解散について何か書くというのは、なかなかこれはどうしたものかと頭を悩ませている。内情など知る由もないし、情報の断片を集めてストーリーを抽出するのも失礼な話だ。ただ、相当におっかない話し合いがあったんだろうなということだけは想像に難くないけれど。
サイトウは事務所も辞めて芸能活動を休止。上田航平はプレイヤー兼作家として活動を続けていくという。
新ネタ33本という常軌を逸したライブの例を挙げるまでもなく、上田はコント作家として、極めて多作の人だ。しかも、ゼロイチ(0→1)からイチヒャク(1→100)まで、1人で完結することができる。
『キングオブコント』には10回出場して、準々決勝10回、準決勝8回、決勝2回。常識的に考えて、あり得ない成績である。一定のクオリティのネタを作り続けて、それが評価され続けるというのは、あり得ないことなのだ。少なくとも私の同級生や仕事仲間にそんなことができる人間は一人もいないし、例えば甥っ子あたりが「俺が芸人になれば一定のクオリティのネタを作り続けるし、それが評価され続けるだろう!」などと言い出そうものなら、「いや、それは常識的に考えて、無理だと思うよ」と助言するしかない。
上田のような作家は、常識の外にいる人間だ。彼らは化け物であって、脳みそモンスターなのである。頭がいいとか発想力が素晴らしいとかいう以前に、脳の基礎体力がまったく違う。無限とも思えるような、巨大なエネルギーが内包されている。それくらい、ゼロからイチを生み出す作業というのは、しんどいのだ。めちゃくちゃしんどいことをやっているのだ、ずっと、毎日。
どこからそんなエネルギーが出てくるのかと考える。ある人は心の中にマグマのような怒りや悲しみの感情があふれている泉があって、その感情を燃やし続けているのかもしれない。ある人はブラックホールを持っていて、世界のいろいろなものを自分の中に引きずりこみながら、重力エネルギーで鋭い矢を放ち続けているのかもしれない。独自の方程式であらゆる事象に独自の解を導き出す特技を持っている人もいるだろうし、最初から翼が生えていて、それを広げるだけで高く空を飛べてしまう人もいるかもしれない。
いずれにしろ彼らは、常識では思い及ばないような、底知れない機構のようなものを持っている。そこから生み出されたものが、コントという形にパッケージングされ、笑いを生む。その底知れない何かに対する畏怖こそが、私たちが彼らに対して抱くべきリスペクトなのだ。
ゾフィーほどの実績と知名度があるコンビが解散すれば、メディア上にはそれなりの数の憶測記事が出てくるはずだ。その中には、むやみに上田個人やサイトウ個人の人格や行動を攻撃するものもあるかもしれない。
せめて、私たちお笑いファンだけでも。
彼らに対するリスペクトを失しない視点を持ち続けていたいものだ。
(文=新越谷ノリヲ)
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