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過去の性加害問題が掘り起こされる――ジャニーズ事件の余波を恐れる芸能界とテレビ、出版業界

過去の性加害問題が掘り起こされる――ジャニーズ事件の余波を恐れる芸能界とテレビ、出版業界の画像1

 沈静化の兆しすら見えない一連の旧ジャニーズ事務所の創業者、故・ジャニー喜多川氏による性加害問題。

 今月30日には「SMILE―UP.(旧ジャニーズ事務所)」の東山紀之社長が新たに立ち上げるエージェント会社の社長就任を辞退、その代わりとして女優・のん(元能年玲奈)がエージェント契約しているコンサルティング会社、スピーディの代表取締役社長・福田淳氏が就任する方向で調整されていることが明らかになった。

「新たなエージェント会社の社長に東山氏が就任することに関してはかねてから批判的な声が関係各所で目立っていました。会社のイメージを一新する意味では外部の人間にトップを任せる方が良いのは明らかですからね。実際、ジャニーズ事務所サイドも水面下で付き合いのある大手レコード会社の幹部などに相談や社長就任の打診をしていたようですが、なり手がいなかったというのが実情。そうした中で、今回なんとか福田氏から了承を得た格好です」(大手芸能事務所のマネジャー)

 かつて隆盛を極めたジャニーズ帝国も今や拾い手を探すのにも苦労するほどの火中の栗と化しているわけだが、一連の騒動は芸能界全体にも暗い影を落としている。

 9月下旬に日本商工会議所の小林健会頭が記者会見の場で「性加害という犯罪はジャニーズだけではなく、例えば未成年の女性に対する性加害が芸能界でなかったのか、メディアは調べる必要がある」と芸能界で横行しているセクハラや性加害の実態を解明し、業界全体の問題として対処すべきと語って注目を集めた。

「『ジャニーズ事務所が弱体化したことで男性タレントを扱うライバル事務所は喜んでいるはず』なんて声をよく耳にしますが、正直言って今回の騒動は我々にとってもマイナス面の方が格段に大きいですし、早く沈静化してほしいと願っています。良くも悪くも芸事の世界は綺麗事だけでは済まない特殊な業界ですからね。それはエージェント契約が中心の米ハリウッドもしかり、かつての日本以上の“奴隷契約”がまかり通っている韓国もしかり。世間一般の尺度で測られたら成り立ちませんよ」(前出の大手芸能事務所のマネジャー)

 数えきれないほどの立場の弱い未成年の少年たちを手籠めにしてきたジャニー氏ほどの非道ではないにしろ、芸能界の歴史を振り返れば現代の一般社会では到底通用しない日常がそこにはあったという。

「昭和の映画業界なんて、監督や主演クラスの人気俳優が共演する新人女優に枕営業を強要するのは日常茶飯事でしたからね。女優本人もマネジャーも所属事務所サイドも、銀幕の世界の常識としてそうした慣習を受け入れていた部分がありましたが……」(同大手芸能事務所のマネジャー)

 他方、音楽業界ではこんな伝統も。

「演歌、歌謡曲の世界では新人歌手が著名な作詞家や作曲家、人気歌手に弟子入りしてプロデビューを目指すというのはよくあるケースでした。ヒット曲を出すだけではなく、大物のお墨付きを得たり詞や曲を与えられることで初めてプロ歌手として認められるという風潮もありましたし。そうした弟子入りの多くは歌に関する技術を学ぶだけでなく、師のもとで身の回りの世話に励むといった形になるわけですが、生活をともにする中で男女を問わず深い関係になるなんてこともままありましたからね」(レコード会社の社員)

 こうした芸能界の過去の“常識”がジャニーズ事務所の騒動をキッカケに掘り起こされることを恐れる向きも少なくないという。もっとも、掘り起こす側のメディアもそこまで追及はできないだろうといった楽観的な意見も多いようだ。

「テレビ局では懇意の芸能事務所から若手タレントを使った過激接待を受けて番組のキャスティングを決めている局員の番組プロデューサー、いわゆる“局ピー”もいまだに健在ですし、数年前まで某民放キー局のイメージアイコンを決めるオーディションの最終審査が“枕審査”だったことは業界内では広く知られていますからね。大手出版社が発刊する週刊誌のグラビア担当やファッション誌の編集者の中にも、芸能事務所やモデル事務所などから似たような接待を受けたことがある人もいるでしょう。実際、ここに来てカレンダーや写真集、ファンクラブ会報などの利権に授かっている一部の大手出版社では『ウチの週刊誌でジャニーズ問題を派手に扱うのはそろそろ控えてもいいんじゃないか』といった声が上層部を中心に社内でも出ていると聞きます」(前出の大手芸能事務所のマネジャー)

 芸能界のみならず、テレビ業界や出版業界も巻き込んで波紋を広げているジャニーズ事務所の性加害問題だが収束する日は来るのだろうか。

大山ユースケ(ライター)

1990年、千葉県生まれ。某大手メディアに勤務中の複業ライター。得意ジャンルはお笑いと酒。

おおやまゆーすけ

最終更新:2023/11/11 13:00
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