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『SASUKE』五輪競技採用の陰で蠢く肥大化、スリム化、収益化という“大人の事情”

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TBS

 明るい話がなかなか聞けないテレビ業界から、久々のめでたい話題が生まれた。昨年末に25周年を迎えた体力系バラエティ番組『SASUKE』(TBS系)が、五輪競技として採用されることが決定。2028年のロス五輪で、近代五種の中の1競技として実施される。

「近代五種は水泳、フェンシング、馬術、射撃、ランニングの5種目で競うスポーツですが、馬術が外されることは決まっており、それに代わる競技としてSASUKEが採用されました。SASUKEは今や世界160カ国以上で放送される人気番組で、五輪では海外版SASUKE『Ninja Warrior』をもとにした障害物レースが行われるとのこと。テレビ番組の企画が五輪で採用されるのは、恐らく史上初でしょう」(週刊誌スポーツ担当記者)

『おかあさんといっしょ』(NHK)、『はじめてのおつかい』(日本テレビ)、『料理の鉄人』(フジテレビ)など、海外でも人気のテレビ番組は少なくないが、輝かしい実績を誇るのがTBS。『SASUKE』の他にも『風雲!たけし城』や『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』の「おもしろビデオコーナー」などが世界中で放送されており、日本の企画力の優秀さを示している。しかし、SASUKEが五輪競技となった背景には、お金が絡む“大人の事情”が見え隠れする。

「世界最大のスポーツの祭典として圧倒的な存在感を誇る五輪ですが、近年の課題は肥大化。常にスリム化が議論されており、野球も正式種目としては除外されているのは記憶に新しいところでしょう。近代五種は、ヨーロッパでは貴族がたしなむスポーツとして知られ、“キング・オブ・スポーツ”とも呼ばれますが、費用がかさみ人気も低いことから、常に五輪競技の除外候補。とりわけ馬術は競技人口増を妨げているため、これに代わる代替種目としてSASUKEに白羽の矢が立ちました。五輪はスリム化が叫ばれる一方、収益化にも熱心で、サーフィン、スケボー、クライミングなど、テレビ視聴者に受けそうな種目が次々と採用されています。そこで近代五種が頼ったのが、いかにもテレビ受けが良く、話題性も高いSASUKEだったということ。見事に時代の波に乗りました」(フリーのスポーツライター)

 こうなると“ミスターSASUKE”こと山田勝己さんをはじめ、日本人選手の活躍を期待したくなるが、表彰台独占などの快挙はあり得るのか?

「近代五種はかつて射撃でピストルが使われていたため、日本人にとっては競技を始めるハードルが極めて高く、日本の選手はほぼ全員が自衛隊員か警察官。競技人口は数十人でした。その後、実弾を使わないレーザーピストルに変更され、子供向けの体験教室なども開かれていますが、馬術がSASUKEに代わったところで、『練習はどこでするのか』という問題は変わらないですよね。フェンシングもマイナーなので、競技人口が急に増えるとは考えにくく、簡単にメダルに手が届くとは思えません」(同上)

 一方、五輪競技採用の快挙にTBSは大喜びだという。

「これまでもSASUKEは年末年始や改編期で目玉となる特番でしたが、番組名が世界ブランドになったのですから、局としては鼻高々。今年の年末の放送日はまだ発表されていませんが、番組ではしつこいぐらいに『五輪採用』の文字が躍るでしょう。将来的には日本代表選出の過程を追ったり、世界の強豪を番組に呼んだり、いろいろと夢は広がるばかり。大事に育ててきたコンテンツがこういった形で花開くのはテレビマン冥利に尽きることで、局内の士気は上がっているようです」(テレビ関係者)

 競技人口が少なければ、それだけ五輪に出るチャンスが高いということ。こうなったらTBSが5カ年計画で、オリンピック選手を育てる壮大なプロジェクトをやるといいのかもしれない。

石井洋男(スポーツライター)

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

いしいひろお

最終更新:2023/11/12 08:00
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