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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』第4話

『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』第4話 スマホが、入れ替わってる~? 以外、特になし

第4話 12月24日10時04分~12時03分 | TVer

「いったいこの横浜で、何が起こっているのでしょうか!?」

 ニュースキャスターのキキョウ(中谷美紀)は言いました。こっちが聞きたいよと思いました。いよいよ混迷を極めてきたフジテレビ月9『ONE DAY ~聖夜のから騒ぎ~』第4話。3つのシチュエーション、3人の主人公のパートが複雑に絡まり合いそうな、クリスマスイブの24時間を1クールかけて描くドラマです。絡まり合う、ではなく絡まり合いそうと書いたのは、だいたいクールの3分の1は過ぎたはずですが、まだ全然絡まり合ってません。

 今回はまず、第1話からずっとヤバいシェフ(大沢たかお)の話から始めます。

 クリスマスディナーのために仕込んでおいたデミグラスソースを鍋ごとひっくり返してしまったため、この日の営業をするかしないか右往左往するだけだったパートですが、前回のラストで冷蔵庫のコンセントが抜けていることが発覚し、ソース以外の食材も使い物にならなくなりました。

 ドラマはこの「冷蔵庫のコンセント抜け事件」を、アクシデントとして扱います。むしろ、シェフや洋食屋のスタッフたちを不幸な天災か何かの被害者として描いている。普通に考えて食材の管理はシェフにとって重要な仕事のはずです。ソースをひっくり返したのは、まだ変な逃亡者がお店に乱入してきたからしょうがないとしても(これも全然しょうがなくないんだけど)、冷蔵庫のコンセントが抜けてるっていうのは、これはもうダメでしょう。たかおさん、オーナーシェフだからいいものの、雇われだったら即刻クビですよ。

 しかも、シェフたちが冷蔵庫のコンセントが抜けていることに気づいたのは、朝です。ドラマは前夜12時から始まっていて、シェフはずっとこの洋食屋にいました。厨房の壁一面に並ぶホシザキの業務用冷蔵庫からは、断続的にインバーターやファンの動作音が聞こえてくるはず。普段聞こえるその動作音が聞こえないことに、シェフが気づかない理由がない。騒音より静寂のほうが、人が感じる違和感は大きいに決まってる。

 もっと言えば、仮にソースの鍋をひっくり返さなかったとしても、食材がダメなんだからクリスマスディナーの営業はできてないことになる。シェフは「シェフ失格だ」と頭を抱えるべきだし、スタッフはシェフに軽蔑のまなざしを向けるべきなのに、全然なんかそんな感じじゃない。

 以上が、設定としての手落ち。

 で、スーパーには、必要なウチワエビが売ってないので、近所の洋食屋に分けてもらうことにする。その洋食屋のシェフはたかおシェフと同門で、2人は仲が悪い。だから分けてもらいに行くのは気まずい。でも、行かなきゃなんない。ここまではいい。

「一本、連絡してから言ったほうがいいですよ」

「わかってる」

 という会話があって、たかおシェフは同門シェフを訪ねる。当然、視聴者は「一本、連絡」したんだろうなと思っている。

 場面がたかおの洋食屋に戻る。シェフが帰ってこないのでギャルソンが行くことにする。ギャルソンも帰ってこないのでソムリエールが行くことにする。誰も帰ってこないので、アルバイトが行くことにする。この間、前出3人は「なんか気まずい」という理由で行くのをやめており、スーパーをうろついている。「一本、連絡」したのに? 何してんの? だいたい「一本、連絡」の答えはなんだったの?

 わからない。

 バイトが行っていることを知って、前出3人も向かうことにする。横柄な態度で「お裾分け」を求め、断られる。「おまえは楽をして先代の味を守っているだけだ、無能シェフだ」と面罵されてしまう。

 とんでもない。先代の味なんて守ってない。ソースは蹴とばして台無しにしたし、ディナー用の食材は管理不足で全部傷めた。あんたが思ってるより、たかおはずっと無能だ。

 ところがバイトが何か言うと、厨房からウチワエビが出てくる。魔法か? 催眠術か?

 事実関係と会話の内容が合ってない。言うはずのないことを言う人がいて、心を打たれるはずのない言葉で心を打たれる人がいる。これがシナリオの手落ち。

 普通、ダメな脚本のドラマというのは「設定はいいのに、脚本の部分で矛盾だらけで共感できないよね」か「設定グダグダで意味わかんないけど、なんかセリフに人の心が乗っかっててグッときちゃうよね」のどっちかのパターンが多い。『ONE DAY』のシェフパートは、設定のダメとシナリオのダメが混在している。それによって何が起こるかと言うと、ドラマに張られた伏線が、伏線なのか脚本のミスや説明不足なのか、判断がつかなくなる。

 警視庁の蜜谷(江口洋介)が正体不明の自動車にはねられるシーンがある。ニノ、中谷美紀、大沢たかおが偶然通りかかっていて(偶然通りかかってんじゃねえよ、というのはもういい)、主人公3人が同じフレームに初めて収まる、重要なシーンだ。

 キャスターの中谷は救急車を呼びながら逃げる車のナンバーを撮影する。ニノは逃亡者なので物陰に隠れる。たかおは近所の洋食屋にウチワエビをもらいに行く道中のはずなんだけど、なんか事故を見ても眉ひとつ動かさず、倒れて頭から血を流している蜜谷をじっと見ている。じっと見ているのだ、眉ひとつ動かさず。人がひき逃げされてるのに。何これ。普通に考えれば「シェフは何かを知っている」という伏線描写なのだが、ここに伏線が入る前触れが何もないので、何かのミスかもしれないと思ってしまう。

 上記は単なる一例。ドラマ全般に必要最低限の設定の開示がなかったり、過剰に同じ説明が繰り返されたりしているので、見る側でいちいち整理していかないと、すぐ見失ってしまう。3人のパートがくるくる切り替わり、その切れ目がいちいち次のそのパートに謎を残すので、頭の中にためておかなければいけない情報が多すぎて楽しくない。こういうの、パートで謎を残すんじゃなくて、パートですべて解き明かした謎を次のパートに倒し込んでいくのが基本の作劇じゃないの? ちがうの?

 というわけで、いっぱい書きました。ニノのパートについては、とにかく包囲網が張られた街をよく歩くし、犯罪組織にも警察に捕まりそうで捕まらないの繰り返しなので別にこれは楽です。

 キャスター中谷は報道やりたかったのに勝手にクリスマス特集のVTR流されて不憫でした。

 かろうじて、ニノとたかおがぶつかって2人のスマホが入れ替わったというミステリーだけが視聴意欲を保ちます。次回も頑張ります。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/01/31 12:16
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