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日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > 国崎和也の「やりたいこと全部」

浮遊する地下芸人の定義と、ランジャタイ・国崎和也の「やりたいこと全部」

ヤバいメンバーでトーク番組をやってみよう③ | TVer

 2020年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)におけるマヂカルラブリーの優勝をきっかけに、テレビの世界で一般名詞化した「地下芸人」。その定義は曖昧だが、おおむね「売れてない」「下積みが長い」「変なネタをやってる」「売れる気がなさそうに見える」「華がない」「吉本なのに∞の出番がもらえない」「黄色い服を着がち」「冷蔵庫のコスプレしがち」あたりだろうか。

 マヂカルラブリー優勝の翌年の21年『M-1』では、決勝進出者が口をそろえて「友達ばかりだった」と語るように、モグライダー、ランジャタイ、オズワルド、インディアンス、錦鯉、真空ジェシカらの「地下芸人」たちが漫才日本一を争うという事態も起こり、その大半をテレビの世界に送り込んでいる。

 時は、大地下芸人時代。テレビ側もさっそく「地下芸人」ブームに食いついたが、その扱いはさまざまだった。

 22年10月放送の『ぺこぱポジティブNEWS』(テレビ朝日系)では、ぺこぱとモグライダー・芝大輔が「売れた元地下芸人」として、虹の黄昏、ゆーびーむ☆、ウエストランド・井口浩之の「現役の地下芸人」3人の悩みを聞くという逆転現象も見られた。虹の黄昏とゆーびーむ☆は地下芸人界のキング&クイーンという立ち位置で問題ないところだが、井口はれっきとした『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の元準レギュラーであり、『M-1』優勝前の当時でも、どちらかと言えば「ライブ出演にも積極的なテレビタレント」という立場だった。あの『いいとも!』フィナーレにも顔を出していた井口より、ぺこぱと芝のほうが華とスター性があったという理由で、そうした構図が作られたことは想像に難くない。

 かくして、「地下芸人」という言葉はここ数年、テレビの世界を浮遊している。テレビがその定義に求めるのは、言ってしまえば「夢のなさ」や「貧乏くささ」であって、なおかつテレビ的に“ヤバい”発言はしない程度の対応力も同時に必要となる。正真正銘ゴリゴリの地下芸人だった野田クリスタルでさえ、ジム経営やゲーム制作の実績に加えて『水曜日のダウンタウン』(TBS系)のタライ落とし泥酔号泣事件よって白日の下にさらされた育ちの良さもあって、「地下」というイメージからはかけ離れてしまった。

 誰が地下で、誰が元地下なのか。局側も視聴者側も、いまいちつかみ切れていないのが現状だろう。

 そんな中、24日深夜放送の『ランジャタイのがんばれ地上波!』(テレビ朝日系)で、改めて「地下芸人」という概念を叩きつけるような企画が放送された。

 この日は「ヤバいメンバーでトーク番組をやってみよう」の3週目。ランジャタイ・国崎和也ときしたかの・高野正成がMCを務め、ひな壇にはランジャタイ・伊藤幸司ときしたかの・岸大将に加えて、にゃんこスター・スーパー3助、本田らいだ~△、桐野安生、本多スイミングスクール、ネコニスズ・館野忠臣、牧野ステテコというメンバー。内容については多くを語らないが、コンプライアンス意識の求められる最近のテレビではすっかり見なくなった「死ねよお前まじで」という伏せ字なしのテロップが表示されたことが、この番組のスタンスを象徴していた。

 ランジャタイは、不思議なコンビだ。この日のスタジオでも、実に楽しそうだった。誰かが誰かのトークを遮って急にしゃべり出したり、誰かが無駄に動いてクダリを発動し、そのまま失敗したり、男性が女性に覆いかぶさって殴りつけたり(実際には殴ってません)、ひな壇が荒れれば荒れるほど、国崎はケラケラと笑い転げた。

 以前、ラストイヤーを終えたランジャタイ・国崎に取材で聞いたことがある。

「M-1で優勝したかったですか?」

「いや、まったく。決勝に行って、その後が楽しみで。これで全部できるって」

 やりたいことが、テレビで全部できる。取材中も終始ふざけていた国崎の目が、このときだけは少年のように澄んでいた気がした。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2023/10/25 19:08
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