青春野球ドラマの常識を覆す本格プレー『下剋上球児』弱小高校の成長の先にあるのは感動か熱狂か
#黒木華 #鈴木亮平 #下剋上球児
球児たちによる季節外れの熱狂と興奮が、年末にかけて寒さを吹き飛ばしてくれそうだ。日曜劇場『下剋上球児』(TBS系)の第1話が10月15日に放送された。三重県の弱小高校が甲子園出場を果たす青春ノンフィクション『下剋上球児』(菊地高弘/カンゼン刊)を原案に制作されたオリジナルストーリーの同作品。甲子園出場に向けたハートフルドラマを思い描いていた筆者は、第1話にして早くもその予想を裏切られた。野球観戦さながらの手に汗握る展開は、これまでの青春野球ドラマと一線を画すものだった。
ドラマの舞台は三重県立越山高校。主人公の社会科教師・南雲脩司(鈴木亮平)は高校時代に甲子園まであと一歩のところまで勝ち進んだ気鋭チームの元エースピッチャーながら、大学野球を境にグラブを置いた過去をもつ陰のある人物で、野球部の顧問打診を穏やかさと気まずさが同居する態度で断り続ける姿からは、過去に負った心の傷の深さが伝わってきた。
そんな南雲を押し切り顧問就任にまで至らせるのは、いい意味でマイペースで、個性あふれる教師たちだ。越山高校に着任した山住香南子(黒木華)は子どもの頃から大会スコアや選手名盤を作成するほどの高校野球マニアで、南雲がひた隠しにしてきた高校球児としての過去にいち早く気付き熱心に説得した。
猪突猛進、高校球児のため、チームのために一直線に突き進むキャラクターである山住は、越山高校野球部の顧問・監督を務めてきた横田宗典(生瀬勝久)や“越山高校野球部のスポンサー”を自称し練習試合設定や采配にもあれやこれやと口を出す地元の有力者・犬塚樹生(小日向文世)といった主張の強い面々の間を取り持つ“潤滑油”として、南雲の顧問活動をサポートすることが予想される。それだけ第1話は登場キャラクターの特徴が打ち出されていた印象だ。
野球部の生徒たちは思春期特有の殻にこもった振る舞いが目立ったが、今後南雲や野球の楽しさに触れるなかで個性を表に出していくだろう。なかでも犬塚翔(中沢元紀)の心技体の成長が今後のストーリーの軸になるはずだ。
名門クラブチームの元エースながら、学力の問題で三重県トップの野球強豪校・星葉高校に入学できず、泣く泣く越山高校に通っている。最速135キロのストレートがありながら初心者ばかりのチームメイトに苛立ちピッチングを崩す悪癖を、かつてピッチャーとして活躍した南雲がどのように指導し改善させていくのか。犬塚翔が甲子園出場の明暗を握っていることは間違いないだけに、回を追うごとに成長していく様に期待したい。
そして同作品の特筆すべき点は試合シーンだった。急きょ実施された越山高校vs地元草野球チーム・越山ドーマーズとの試合では、画面にスコアやカウントが表記され、さながら野球観戦のような没入感があった。
生徒を演じる若手役者陣は、リアルな高校球児像を体現するにあたり野球の実技審査を経て選ばれた本格派だ。投げる演技、打つ演技ではなく、実際に投げては快速球、打っては鋭い打球をグラウンドに飛ばしていた。
第1話は新生・越山高校野球部の初陣ということでおぼつかないプレーが大半だったが、回を重ねるごとに迫力あるシーンが増えるはず。甲子園出場をかけた一戦ともなれば、いままでにない母校を応援しているかのような緊迫感のあるドラマ体験ができそうだ。
タイトルのとおり、越山高校が強豪校を倒し甲子園出場に絡んでいくことは間違いない。そのサクセスストーリーを単なるチームの成長ドラマにするのではなく、野球の醍醐(だいご)味である臨場感を持ち込んだことに筆者は驚きを感じた。
近年は大谷翔平の活躍、夏の甲子園での慶應高校の躍進など、野球が社会現象になる機会が目立つ。この冬、弱小高校の快進撃が新たな野球旋風をもたらすのか、第2話の展開とともに注目したい。
■番組情報
日曜劇場『下剋上球児』
TBS系毎週日曜21時~
出演:鈴木亮平、黒木華、井川遥、小泉孝太郎、中沢元紀、生瀬勝久、小日向文世、松平健 ほか
脚本:奥寺佐渡子
原案:「下剋上球児」(菊地高弘/カンゼン刊)
音楽:jizue
主題歌:Superfly
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山室大輔、濱野大輝
編成:黎 景怡、広瀬泰斗
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gekokujo_kyuji_tbs/
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