タカアンドトシ、博多華丸・大吉……“バラ売り”しないコンビ芸人を考える
#タカアンドトシ
HBC北海道放送で毎週日曜お昼に放送されている、タカアンドトシのトーク番組『ジンギス談!』。15日放送分にはオジンオズボーン篠宮とみなみかわという松竹芸能の“濃い口”ピン芸人2人が登場し、それぞれコンビ解散までの経緯や、かの有名なTKO・木下隆行による「ペットボトル事件」の真相が語られた。ほかならぬ篠宮こそがペットボトルを投げつけられた当事者である。
番組自体は盛り上がったが、この日の放送には普段見られない異変があった。タカアンドトシのタカが体調不良で収録を休んでいたのだ。
新型コロナウイルスの蔓延以降、お笑いコンビの片方が体調不良で休むことも少なくなくなった。もとより、ある程度売れてきたコンビが“バラ売り”出演すること自体、特に珍しいことではない。ウエストランドやAマッソなど、片方だけの露出のほうが2人での出演より多くなるコンビもある。
だが、タカアンドトシは基本的に、バラ売りをしないコンビとして知られている。2000年代中盤に『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)で名を上げ、あっという間にMCクラスへと昇りつめたが、タカやトシがピンで出演している姿は、ほとんど目にしたことがない。
過去に、バラ売りしない理由をタカアンドトシ自身が語っていたことがある。
20年10月に放送された『やすとものいたって真剣です』(ABC)で、MCの海原やすよに「タカトシって、2人でずっといてるやん、それは決めてた?」と問われ、トシがそのきっかけを以下のように答えている。
「欧米か! でバーッといってるときに、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の『おばあちゃん子芸人』のオファーが来て。こいつ(タカ)はすごいおばあちゃん子なんで、当時のマネジャーが『タカさん、アメトーーク出ましょう』って」
ところが、タカは「相方いなきゃ無理無理無理」と断ったのだという。結果、マネジャーの強い推薦もあって出演したものの、まったくしゃべれず。
「一人で変な英語言って、『欧米か!』とかやり出して。周りが引いてるんですよ、どうしたどうしたって」
その事件からピン仕事を断るようになったタカだが、トシだけの出演も「嫌だから出るな」と言い出し、結果、タカアンドトシのピン稼働はなくなっていったのだという。
お笑いコンビのバラ売りには、さまざまなメリットがある。
まず現実的な問題として、通常、バラエティにゲスト出演する場合、ピンでもコンビ出演でもギャラは原則的に同じとなる。つまり、コンビで1本の番組に出演すれば、ギャラは1本分を折半。だが、それぞれが別の番組に呼ばれた場合は、それぞれで1本分のギャラを持ち帰ることになる。収入が倍になるということだ。
加えて、それぞれの芸の幅や人脈を広げる意味もある。オードリーを例にとってみれば、春日俊彰がボディビルやフィンスイミング、エアロビクスなどで肉体派芸人としての地位を高めている間に、若林正恭はMCとして信頼を得つつ、『たりないふたり』(日本テレビ系)で山里亮太とユニット漫才を継続的に披露し、新境地を開いていった。
一方でデメリットとしては、コンビ格差を生む要因になったり、コミュニケーションが減ることでネタ合わせができなくなり、最悪、解散にいたるケースもあるだろう。
タカアンドトシ同様、博多華丸・大吉も過去にバラ売りしないことを明言していたが、徐々にひとりずつの活動を増やし、現在ではピン稼働も当たり前になっている。アンタッチャブルのように、コンビ活動を基本としていたが、やむを得ない理由で長くピン稼働を続け、再びコンビとして復活する例もある。
結局は、コンビの数だけ理想の稼働スタイルがあるということだろう。
(文=新越谷ノリヲ)
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