『R-1グランプリ』芸歴10年規制撤廃!? 「夢がない」現状を打破できるか
#R-1ぐらんぷり
16日、ピン芸人No.1決定戦『R-1グランプリ』(フジテレビ系)の芸歴制限が撤廃されると、一部のメディアで報じられた。『R-1』は2021年大会から今年までの3回、10年の芸歴制限を設けて行われ、若手中心の大会へと様変わりしていた。
21年には芸歴8年目のゆりやんレトリィバァ、22年には10年目のお見送り芸人しんいち、23年は10年目の田津原理音がそれぞれ優勝している。なお、お見送り芸人しんいちは09年デビューで本来14年目だったが、途中数年間の休業があったとの主張が認められ、出場権を得ていた。
そもそも『R-1』に芸歴制限が設けられたのは、決勝進出メンバーの固定化を危惧してのものだったといわれている。確かに、制限導入直前の20年大会を眺めてみると、おいでやす小田とルシファー吉岡が5年連続5回目の出場となっており、19年大会にはマツモトクラブが同じく5年連続5回目の出場を果たしていた。『R-1』の芸歴制限は、実質この3人を“狙い撃ち”したものとも言われた。
では、規制導入後にこの傾向は改善されたかと問われれば、初年の21年大会こそ10人中8人が初出場というフレッシュな顔ぶれだったが、以降は単にメンバーが入れ替わっただけで、たった3年ですでに“常連”だらけとなっているのが実情だ。23年大会までで、寺田寛明が3年連続3回目、サツマカワRPGとYes!アキトが2年連続2回目、23年大会を「東京03×Creepy Nuts」の日本武道館公演出演のために辞退した吉住も、毎年決勝進出が確実視される実力の持ち主だ。
加えて、視聴率の低下も進んでいる。10年大会の14.3%(ビデオリサーチ調べ、世帯、関東地区/以下同)をピークに19年大会までは10%前後をキープしていたが、芸歴制限を導入した21年が6.6%、22年が6.3%、今年は5.8%まで落ち込んでいる。昨年末の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で優勝したウエストランドがネタ中に言い放った「R-1には夢がない!」という発言が大きな共感笑いを生んだのも、致し方ない現状といえる。
とはいえ『R-1』にまったく夢がなかったかといえば、そんなことはないはずだ。
16年大会において芸歴24年目で優勝を果たしたハリウッドザコシショウを筆頭に、06年の博多華丸や、近年ではお見送り芸人しんいちとZAZYも『R-1』出身といって差し支えないだろう。『M-1』との2冠を達成している霜降り明星・粗品とマヂカルラブリー・野田クリスタルには『キングオブコント』(TBS系)も含めた3冠達成へのロマンを与えているし、逆に『M-1』20年大会に出場した、おいでやす小田とこがけんの即席ユニット・おいでやすこがは「R-1に芸歴制限ができたから、漫才しかなくなった」というストーリーを背負って準優勝まで駆け上がった。これも『R-1』の存在感を示すひとつのエピソードだ。格が低いことと存在価値がないことは、まるで違う。
だからこそ、今回の芸歴制限撤廃を歓迎するベテラン勢は少なくないはずだ。彼らの顔が目に浮かぶようだ。
昨年ラストイヤーを終え、その会見の場で、まったく空気を読まず「芸歴制限撤廃」を叫び続けたサツマカワRPGが燃えている。
今週、2度目の単独ライブを開催する岡野陽一がタワマンの部屋の片隅で猫背のまま爪を研いでいる。
ルシファー吉岡がほくそ笑んでいる。マツモトクラブが曇り空を見上げている。
若手にとっては、決勝までの道のりがこれまでよりずっと険しいものになる。
「バレる!」Creepy Nutsの『R-1』アンセムが聞こえる。
決勝は来年3月9日、フジテレビ系で生放送だ。
(文=新越谷ノリヲ)
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