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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『いちばんすきな花』第1話

『いちばんすきな花』第1話 怨念じみた「男女の友情は成立するか?」論

いちばんすきな花 – フジテレビ

 さて、昨年秋クールに、そのクオリティで大評判を呼んだ『silent』(フジテレビ系)のチームで始まった『いちばんすきな花』(同)のレビューを仰せつかったものの、今しがた第1話を見終わり、これはどう見ればいいんだ? と戸惑っているのが正直なところです。

 どこかで「男女の友情は成立するか? という永遠のテーマがどうこう」みたいな宣伝文句も見たような気がしますが、中身としては「成立するやろ」と言い切った上で、それを受け入れない/理解できない人たちに対して何か言いたいことがあるような、そんな雰囲気に見えました。

■主人公は4人

 潮ゆくえ(多部未華子)は34歳の塾講師。子どものころ、先生に「2人組になりなさ~い」と言われて、誰ともコンビを組めなかったことがトラウマになっているようで、「だから学校より塾が好き」なんだそうです。その塾で高校時代に出会った男友達の赤田(仲野太賀)と夜な夜な2人きりでカラオケボックスに入り浸っていたものの、ある日、赤田が結婚することに。ゆくえちゃんは混じりっけなしの大喜び&大祝福モードで、赤田と盛り上がります。

 ここらあたりのシーンから、すでに「男女の友情は成立するやろ」という主張が強い。別に見てる側が、そこまで強硬に「成立せんやろ」って思ってないのに(みんな思ってんの?)、「マジで多部ちゃん恋してないからね!」と詰められた感じで、ウッとなりました。何か怨念じみたものを感じるほどに。

 その後、赤田の妻となる女性が「友達だろうがなんだろうが、女と密室で2人で会うのはダメ」と言い出し、赤田はゆくえに“別れ話”を切り出します。もう会えない。友達ではいられない。人にはそれぞれ価値観があって、妻になる女性がそう思うなら、それを尊重したい。好きだから。赤田の言葉に、ゆくえはまあまあ理解こそ示すものの、なんか基本的には被害者スタンスに見えます。

 春木椿(松下洸平)は、お人よしのサラリーマン。婚約者(臼田あさ美)がいて、結婚に向けて近々引っ越す予定です。こちらは、婚約者のほうに男友達がいて、春木は消極的ながら理解を示す側。ところが引っ越しが終わり、春木が新居の整理をしていると、帰ってくるはずの婚約者が帰ってこない。その男友達と逢引きしてしまい、引っ越し初日に「もう会えない」とのことでした。東京03のコントで似たようなのありましたね。角ちゃん(彼女)が引っ越し当日になって「やっぱり悟志とは住めない」とか言い出すやつ。気になる方は「東京03 入居日」で検索してくださいね。ドラマチックな話です。

 春木はお人よしなので、こちらは被害者感を徹底的に抑制した演出になってます。「そうだよね、しょうがないよね」的な感じ。それとは別に、春木は散髪に行った美容室で「花、好きなんですか?」と世間話を振られると、矢継ぎ早に「花は好き」「花屋さんは嫌い」「花屋さんは学校」「学校が嫌い」「だから花屋さんも嫌い」といった謎の三段論法を繰り出してきたので、びっくりしました。

 要するにコミュニケーションに難があって、初対面ではスムーズに話せるけど、2回目以降が苦手なんだとのこと。それはそれでいいんだけど、じゃあその陽キャでモテ女の婚約者とはどうやって関係を築いてきたの? という疑問は拭えず。もやもやが残ります。

 その美容室で春木を担当し、謎の三段論法を被弾した美容師・美雪夜々(今田美桜)は、美人すぎて同性からは妬まれ、異性からは性的対象にしか見られないという悩みを持っているようです。美容室の同僚男性に「悩み聞くよ」と誘われて2人で飲みに行ったら、お持ち帰りされそうになり、「友達だと思ってた」と断ると「男と遊ぶ言い訳に友達とか使ってんなよ」と、まあひどいことを言われてました。うん、それはグーで殴っていいと思う。

 イラストレーターとして独り立ちを夢見るコンビニ店員・佐藤紅葉(神尾楓珠)は、友達はたくさんいるけど「誰かの1人」にはなれないそうです。ゆくえと幼馴染みだそうですが、なんだろう、赤田という親友を失って落ち込んでいたゆくえに「幼馴染みの男友達」が登場してきたので、なんかちょっと混乱しました。仲良さそうだし、2人でカラオケとか行く感じにすればいいのに。

■そんな4人が、桜新町で偶然出会う

 まったく偶然で、春木が1人で暮らすことになった桜新町の一軒家で4人が出会います。この偶然の段取りがめちゃくちゃ雑で、クオリティとは? となるんですが、物語とは関係ないのでいったんスルーします。4人が集ったことだけが重要なので。

 4人でコーヒーを飲みながら、それぞれなんか言って、春木が「僕は2度目が苦手だから、もう二度と会わない」となって、4人は散り散りに。みんな「2人って」「2人の関係って」みたいな似たようなことを言ってるんですが、言えば言うほど春木おまえ、あの陽キャのモテ女とどんな顔でセックスしてたんだよと、そういうことばかり考えてしまう。

 ああ、それでわかった。多部ちゃんのくだりで被害者スタンスが妙に気に食わなかった理由がわかりました。

 彼女の主張は「赤田とセックスしてないし、したいと思ったこともないのに!」ということなんです。「それなのに、なんでアンタの嫁はわかってくれないの?」と。

 そんなん、知らんよ。知らんのよ。動物の世界は生存競争なのよ。つがい(2人)になって生殖することでしか生き残れないのよ。

■だけど人間だから

 だけど人間だからね。みんな、いろいろあるよね。令和だしね。そういうドラマなのかなーというのが、第1話の感想です。みんなが何に悩んでるかはだいたいわかったけど、何をどうしたいかはひとつも語られず。誰かが「海賊王に俺はなる!」とか言ってくれるとストーリーを追いかけやすいんですが。

 そういうわけで、今後どんな話になっていくのか全然わかりませんが、テンポよくて見やすいのは見やすいし、ご自慢の会話センス押しも鼻につくほどではないので、2話以降も見届けましょう。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2023/10/13 20:00
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