『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ』第1話 逃亡劇なのに逃亡がヌルすぎる問題
#フジテレビ #二宮和也 #月9 #ONEDAY
9日スタートの月9ドラマ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ』(フジテレビ系)。何かと周囲の騒がしい嵐・二宮和也と、大沢たかお&中谷美紀の『JIN-仁-』(TBS系)コンビがトリプル主演を務め、クリスマスイブのたった一夜をワンクールかけて描くドラマだそうです。
月9だし、クリスマスだし、映画『ラブ・アクチュアリー』(03)とか『大停電の夜に』(05)みたいな甘くてオシャレな恋愛劇かと思いきや、どちらかというと『24 -TWENTY FOUR-』(01)風味のサスペンスのようで。脚本はフジテレビヤングシナリオ大賞出身で、『翔んで埼玉』(19)で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受けている徳永友一さん。多作な方ですが、どちらかというとライトコメディがお得意に見えます。メインの演出はフジテレビの“ザ・大御所”鈴木雅之さん。どんな出来であれ、誰も文句が言えません。
設定としては、ひとつの殺人事件を巡ってニノ演じる“黒いロングコートの男”勝呂寺誠司(セイジ)、大沢たかお演じる老舗洋食屋のシェフ・立葵時生(シェフ)、中谷演じるローカル局のキャスター・倉内桔梗(キキョウ)の3人の運命が複雑に絡まり合いそうな雰囲気でした。実際、第1話でも少し絡まっています。『パルプ・フィクション』(94)みたいなアレです。
その第1話は、2023年12月24日の午前0時から7時19分までが描かれました。
舞台は横浜。暗がりの公園に、2人の男が倒れています。ひとりは頭を撃ち抜かれて死んでいる人。もうひとりは、セイジです。2人の間には1挺のベレッタ。ムックリと起き上がったセイジは、警備員が駆け寄ってくるのを認めると、そこに非通知設定の電話が。いわく「今すぐその場から離れろ、そいつ(遺体)のことはいい、山下ふ頭に来い」。で、ベレッタを拾い上げ、黒いロングコートをはためかせて逃亡者となります。素直に山下ふ頭に向かうセイジ。ちなみに、記憶を失っているようです。
街角で職務質問に遭いそうになったセイジは、たまたまそこにあった閉店後の洋食屋に避難。すると、そこにはクリスマスイブディナーの仕込みをしようと副料理長の到着を待っていたシェフがいました。セイジは厨房を軽やかに飛び越えて逃げおおせますが、それを追おうとしたシェフが全然軽やかじゃなく厨房を飛び越えようとして、寸胴鍋をひっくり返してしまいました。後に分かるんですが、この寸胴には先代から受け継がれたデミグラスソースがたっぷり入っていました。デミ全滅。聞けばこの洋食屋ではクリスマスディナーにこのデミを使ったビーフシチューを出すのが恒例だそうで、シェフは「デミがないとクリスマスディナーはできない。中止だ」と決断します。なかなか頑固で、こだわりの強そうな人です。
同じころ、キキョウは撮影クルーを連れて殺人事件現場の公園に。すでに警察の現場検証が始まっていました。横浜の事件なので、神奈川県警の狩宮(松本若菜)が駆け付けると、なぜか警視庁管理官の蜜谷(江口洋介)が、現場で被害者を見ています。警視庁というのは、いわゆる“東京都警察”なので場違いも甚だしいですが、「このヤマを解決したければ俺に情報をすべて流せ」と偉そうです。脇役の江口洋介カッコいいですね。華と陰、醸し出す雰囲気がもう、オーラがもう、ね。
冒頭はそんな感じで、わりと緊張感を抱いて始まりました。
■逃亡劇なのに、逃亡がヌルイ、ヌルイヨー。
緊張感を抱いていたのは、冒頭だけでした。いや、冒頭もシェフが寸胴を倒すくだりなどヌルかったんですが。具体的にいろいろ感想を述べていきましょう。
ドラマの主軸となるのは、二ノことセイジが巻き込まれた殺人事件でしょう。何しろニノですし、実質、主人公です。で、セイジは逃亡者であるからして、逃亡が主な行動になります。野球のドラマで野球選手が主人公だったら、野球がメインになるのと一緒です。だから、逃亡の演出に関しては、これがとりあえずドラマそのものの面白さであるべきだと思うんです。今回は第1話、壮大なサスペンスのプロローグなわけですから。
しかしまあ、この逃亡劇がヌルいのなんの。
山下ふ頭で若い男の古いボルボに乗り込むまではいいですが、市内に検問が張られていると、それを難なく突破。パトカー連中とのカーチェイスが始まりますが、みんなどう見ても制限速度内でスキール音を後から足してるだけですし(それは仕方ないけど)、広い十字路のUターンひとつで置いてけぼりにしてしまいます。
それでもなんとか追いつくと、ボルボは歩道をまたいで「屋上駐車場」への車載エレベーターがある雑居ビルに入っていきました。するとパトカーたちは路肩に停車し、一人残らずエレベーターの前へ。そして「屋上だ! 急げ!」と誰かが叫ぶと、また一人残らず階段で屋上へ上がっていきました。いや、残せ、1人か2人。
案の定、セイジと若い男は、用意してあったであろうバイク2ケツでブイーンと逃亡。屋上駐車場に集まったボンクラたちの前には、空のボルボがあるだけでした。いや、残せよ、地上に1人か2人。
若い男こと笛花(中川大志)は、違法薬物輸入組織「アネモネ」の人間でした。聞けば、イブの夜にメキシコの組織とデカい取引があり、その話をまとめたのがセイジなのだそうです。笛花はセイジを防犯カメラだらけの場所に匿い、見張りのチンピラを置いて「セイジさんから目を離すな」と命じます。
「目を離すな」と言われれば、目を離すのが見張りの常。チンピラはいつの間にか眠りこけており、セイジは黒のロングコートを投げ捨ててチンピラの服を着込み、ライトグレーのコートの男となって、ここからも逃亡を図ります。
しかし、建物の外にはバイクに乗った笛花が! 大ピンチ! と思いきや、メットを外した笛花が髪の毛をファサーっとしている間に、スキをついて逃亡。セイジが逃げたことに気づかない笛花は、のん気にエスプレッソなどを淹れた後、防犯カメラにセイジが映っていないことに気づきます。うーん、防犯カメラの意味とは。笛花は寝ていたチンピラをシバき倒しますが、八つ当たりにしか見えません。
一方そのころセイジは徒歩で逃亡中。途中、警官との追いかけっこになりますが、得意(なの?)のパルクールを駆使して港から航行中の釣り船に飛び乗ると、警察一同はあきらめの表情。ならばダイヤル118、海保の出番だ! セイジ、チェックメイト! と思いきや、次のシーンではセイジ、下水道を走っていました。まさか、釣り船から海に飛び込んで、下水道の出口から入ったってこと? ならそのシーンを撮ればいいと思うし、セイジが全然汚れても濡れてもないのはどういうことなの?
その後、なんかよくわからない謎の女とカフェでランチをしているセイジ。店のテレビには殺人事件現場のカメラに映るセイジの姿が大写しにされていますが、セイジは食事をしながら謎の女とおしゃべり。今度は逃亡劇さえ発動しませんでした。
■シェフのシークエンスは時間つぶしだけ
命より大事なデミをひっくり返して、先代から続くクリスマスディナーを中止するという重い決断をしたシェフ。その後、「本当にやらないの?」とソムリエールがシェフを問い詰めたり、「やらない」と返したり、店のギャルソンがフレンチのマデラソースみたいなのをちょっと作って「このソースで、やっぱりやろう」と言って、シェフが「やらない」「先代に顔向けができない」と返したりしていると、店の床に黒いロングコートの男が落としていった拳銃を発見。
今度はシェフが「通報しよう」と言ったり、スタッフが「通報しないで拳銃を捨てよう」と言ったり、シェフが通報したり、いろいろあって最後はシェフが「ディナーをやる!」となって第2話へ。デミないのに。意味が分からないと思いますが、見ていても意味が分からなかったので、そのまま書いてます。
キャスターのほうもいろいろあったみたいです。キキョウとセイジが昔の知り合いっぽい? 付き合ってた? という感じで。
■それでも、期待しないわけじゃない。
それでも謎は残っているので、今後に興味が持てないわけではありません。ニノと江口洋介に深い関係がありそうなので、ここの芝居は楽しめるに違いないし、脚本だって、時間に限りのある中で同時並行のギミックを重視したせいで、逃亡劇の段取りにまで及ばなかっただけかもしれない。
やろうとしてることは興味深いし、キャストも3人のメインの周囲にカラーの違うメンツを集めていて、物語がクロスしてくるとダイナミックな組み合わせが見られるかもしれない。
とりあえず、最終回までレビューがんばります。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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