『あちこちオードリー』元一発屋特集 春日俊彰が「トゥース!」だけで終わらなかった理由とは
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4日深夜放送の『あちこちオードリー』(テレビ東京系)は「元一発屋特集」。一発屋として大ブレークを果たした後、低迷期を経て今再び活躍を見せているレイザーラモンHG、小島よしお、ジョイマンが登場し、各々、ブレーク時の凄まじい人気を思わせるエピソードを披露した。
2005年にブレークしたHGは同年大みそかにスーパースターの代名詞である「ヘリ移動」を経験。07年に「そんなの関係ねぇ!」で一世を風靡(ふうび)した小島は『旭川冬まつり』に8万人の大観衆を集め、08年のジョイマンはエミネムとコラボしたアドトラックを渋谷の街に走らせたという。いずれ劣らぬ強烈な逸話を残している3組だ。
その後、ブレークから1~2年後に感じた低迷の兆しや、復活の予兆など、彼らにしか語れない芸能人生の明暗が披露される貴重な回となった。
そんな元一発屋の面々のエピソードをニコニコと楽しそうに聞いていたMCのオードリー・春日俊彰だが、相方の若林正恭に「おまえも近いもんあったからな」と指摘されると、爆笑しながらも納得の表情。HGによれば、「一発屋のチェックリスト」というものがあり、「カタカナのギャグを言う」「奇抜な衣装」「変な髪型」の3項目なのだという。
芸歴23年を誇る春日だが、持ちギャグといえば「トゥース!」「アパー!」「カスカスダンス」「鬼瓦!」の4つのみ。そのうち3つをカタカナのギャグが占める。常に着用にしているピンクベストは立派に「奇抜な衣装」だし、中途半端な長さの七三分けも、もちろん「変な髪型」に当てはまる。事実、08年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で準優勝を果たしてブレークしたオードリーだが、そのころの若林は「ブームはすぐ終わる」と思っていたと、何度も明かしている。
だが、春日とオードリーは終わらなかった。当番組終盤には春日も「低迷期はありました」と明かしたが、『M-1』翌日から今日までオードリーが売れていない時期は、まったくない。
なぜチェックリスト満点の春日が一発屋で終わらなかったのか。
ひとつは、やはり相方・若林の存在だろう。ブレーク直後は「じゃない方芸人」だったが、そもそも春日の現在のキャラクターを作ったのは若林だ。ピンクベストで胸を張ってゆっくり歩いてくる「いわゆる春日」は、当初事務所のネタ見せなどでも酷評されたというが、ブレーク15年後の現在でも通用する耐用年数の長いキャラになった。
加えて、春日の貫徹力も異常だったのだろう。その『M-1』での一場面を、誰もが覚えているはずだ。敗者復活から決勝ファーストラウンド1位に躍り出たオードリー。3組でのファイナルを前に、司会の今田耕司が春日に「自信のほうは?」と尋ねたシーンだ。
「なきゃ立ってないですよ、ここに」
春日はあの大舞台でも、若林の言いつけを守って「いわゆる春日」をやり切っていた。
ブレーク前から、潜水企画に挑戦すれば失神するまで潜り続け、格闘技未経験にもかかわらずK-1や地下格闘技のリングに上がっていた春日。「トゥース!」で全国区になった後も、ボディビルやエアロビ、レスリングなどの密着企画を掛け持ちしながら、本来の多忙なテレビスケジュールをこなして見せる体力と胆力は、お笑い界どころか芸能界全体を見渡しても、稀有な存在に違いない。
また、キャラ芸人はある程度売れると、テレビにキャラを剥がされるのが宿命だ。過酷なチャレンジ企画に放り込まれ、体力と気力の限界を超えたところで、そのキャラの裏にある人間を露呈させられる。それはそれでひとつのエンタメのジャンルではあるが、露呈させられた芸人はキャラが崩壊し、本来のネタがウケなくなる。残酷だが、そうした芸人の「使い捨て」もまた、テレビバラエティの現実だ。
シンプルに、春日は剥がれなかった。春日のまま、すべてをやり切ってしまった。だから、今でも「いわゆる春日」のまま通用しているのだ。
そんな春日にとって、もっともカロリーの高い仕事は、おそらく『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で毎週披露している40分程度のフリートークだろう。もともとオードリーのフリートーク担当は若林であり、ブレーク前に定期的に行っていたトークライブでも春日はトークを用意せず、若林に任せきりだったという。その甲斐あって若林はブレーク前から『フリートーカー・ジャック!』(ラジオ日本)など、ピンでトーク番組を持っていたこともある。
だが、15年に放送されたフリートーク番組の頂点『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)にオードリーはコンビで出演し、こともあろうか春日のほうが番組MVPにあたる「MVS(Most Valuable すべらない話)」を獲得してしまう。春日はブレーク後の6年間、毎週課せられた「フリートークを作る」という過酷なチャレンジも克服し、MVS獲得という結果を引き寄せてしまった。
要するに、春日という芸人はタレントとして積んでいるエンジンが違うのだ。何をしても壊れないし、出力が高すぎるのである。
『あちこちオードリー』での元一発屋芸人との対比は、春日の底知れぬポテンシャルを再確認する機会になった。
(文=新越谷ノリヲ)
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