ジャニーズと『VIVANT』ヒットに翻弄されるドラマ界 制作延期のメリットとスポンサー離れのジレンマ
#ジャニーズ #VIVANT
芸能界全体を揺るがしている、故・ジャニー喜多川氏による性加害問題。NHKの稲葉延雄会長は9月27日の定例会見で、「ジャニーズ事務所による被害者への補償や再発防止への取り組みが着実に実施されていると確認するまでジャニーズ事務所所属タレントの新規の起用は行わない方針である」と話した。これによって、現時点では今年の年末の紅白歌合戦へのジャニーズタレントの出場はないものと見られ、新規ドラマなどへの出演の可能性もかなり低い状況だ。
さらに10月2日の会見では社名を「SMILE-UP.」に変更することを発表した。
「NHKだけでなく、民放各局においてもジャニーズタレントを避ける流れが止まらず、すでに制作が決定しているジャニーズタレント出演ドラマについても制作の延期や中止が検討されているようです。事実、フジテレビは木村拓哉主演のドラマ『教場』シリーズのスペシャルドラマの制作延期を発表。スポンサーなどの影響は一切ないとしていますが……。もちろん直近の出演作については簡単に動かすことはできませんが、編成のスケジュールが大きく狂ってしまうのは間違いない。テレビ局としても大混乱を招いています」(テレビ局関係者)
その一方で、“制作の延期”をポジティブに捉えているスタッフも少なくないようだ。その背景には、今年7月期 に放送され、大きな反響を呼んだTBS系日曜劇場『VIVANT』の存在があるという。
地上波ドラマとしては異例の“1話1億円”と言われる大きな予算で制作された『VIVANT』。大規模なモンゴルロケを行うなど、映像的な部分でもかなりゴージャスであり、そのほかの連続ドラマとは一線を画すものとなっていた。また、世界を股にかけた謎に満ちた物語とその展開を深く考察する視聴者が続出。その考察をネットユーザーがSNSなどに投稿することで、作品の注目度もどんどん上がっていった。
「『VIVANT』がヒットしたことで、いまの地上波ドラマのトレンドは完全に“考察系”になっています。ネットでの盛り上がりを狙えるという点でも、考察できる内容にすることはとても意義深いんですよね。ただ、問題は『VIVANT』と同じレベルか、それ以上のクオリティーの高い脚本が求められるということです。二番煎じ狙いの付け焼き刃では、到底『VIVANT』クラスの脚本は作れない。だからこそ、制作にもっと時間をかけたいというのが、ドラマ制作現場の本音なんですよ」(ドラマ関係者)
もしも、ジャニーズタレントが出演しているという理由で、制作が延期されたならば、脚本を練り直す時間的な猶予ができることになる。この点を“不幸中の幸い”と考えるドラマスタッフもいるというのだ。
「制作が延期されれば撮影のスケジュールが相当タイトになるので、正直現場としてはかなり厳しい。でも脚本がよくなるなら、それに越したことはない。ジャニーズ事務所のせいで制作が中止になるかもしれないという異常事態ですから、少しでも前向きに考えないとやってられないという気持ちもあります」(同)
しかし、単純に“脚本を練る時間ができた”と喜んでいられないのは事実だ。テレビ局において、もっとも重大な問題はジャニーズタレントを起用することが主因となるスポンサー離れだ。前出のテレビ局関係者はこう話す。
「スポンサーが離れれば、当然ながらドラマの制作費も減ってしまう。そうなると、いくら脚本を練る時間があっても、面白い作品を作り上げるには限界があるわけです。さらに、宣伝活動にも影響が出る。出演者が番宣でいろいろなバラエティー番組に出ようとしても、そこにジャニーズタレントが含まれていることで、バラエティー番組のスポンサーから拒否される可能性もある。撮影スケジュールがタイトになり制作費も減って、宣伝もできなくなれば、どれだけいい脚本でもヒットさせるのは厳しい。まさに負のスパイラルが想定されています」
このような状況になると、もはやNHKのように“ジャニーズ事務所所属タレントの新規の起用は行わない”という判断に行き着くのも自然だろう。
「とはいえジャニーズタレントは人気もあるし、数字も持っている。“できれば完全に切りたくない”というのもテレビ局の本音。どうにかこの問題が上手く解決してくれないかなと祈るような気持ちのテレビ関係者は多いです」(同)
前述したように10月2日に再び記者会見を行ったジャニーズ事務所。そこでは、今後の会社運営や被害者への補償、再発防止策、タレントのマネジメント体制の見直しなどの具体的な内容が明かされた。
「とにかく、この記者会見は多くの関係者の注目を集めました。これまで通りに戻るのは難しいとしても、少なくともジャニーズタレントを使えるような状況にしてほしい……と、業界内の誰もが思っているのでは」(同)
ジャニー氏の性加害に振り回されるドラマの現場。彼らもまた被害者なのかもしれない。
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