『パリピ孔明』視聴率からは見えないヒット作に？　随所にSNS実況が盛り上がる仕掛け

　向井理が主演、上白石萌歌がヒロイン役を務めるフジテレビ系連続ドラマ『パリピ孔明』の第1話が9月27日に放送され、初回平均視聴率は世帯6.1％、個人3.5％（ビデオリサーチ調べ、関東地区）だった。低調なスタートにも思えるが、SNSは大盛り上がりで配信ランキングでもトップを獲得するなど「視聴率からは見えないヒット作」となりそうな気配だ。

　同ドラマは、アニメ化もされた同名コミック（原作：四葉夕卜、漫画：小川亮）の実写化。2～3世紀の中国で魏・呉・蜀が覇権を争った三国時代から、天才軍師・諸葛孔明（向井）が若かりしころの姿で現代の渋谷に転生し、プロシンガーを目指す月見英子（上白石）を魔法のような戦略で成功に導くというサクセスストーリーだ。

　第1話は、三国時代に病で倒れた孔明がハロウィンに沸く現代の渋谷に転生し、酔っ払いに連れていかれたライブハウスで英子の歌にほれ込むシーンから始まった。酔って寝ていたところを英子に助けられた孔明は、すぐにスマホを使いこなすなど驚異の適応力を見せながら、英子の“軍師”になることを決意。さっそく、英子が出演したイベントで計略をめぐらし、客を足止めして英子のステージを満員にするなど天才軍師ぶりを発揮した。

　前述したように視聴率は決して高くなかったのだが、放送中のSNSの盛り上がりはすさまじく、開始から30分ほどで「#パリピ孔明」が世界トレンド1位に。そのほかにも「石兵八陣」など関連ワードが続々とトレンド入りし、孔明に扮した向井に対して「再現度高すぎ」「完全にハマり役」などと称賛の声が殺到した。

　この盛り上がりを加速させたのが、ドラマの随所に散りばめられた仕掛けの数々だ。三国時代に孔明が仕えた蜀の君主・劉備をディーン・フジオカが演じているのだが、回想シーンで登場した際のセリフはすべて中国語。ナレーションでも流暢な中国語を披露しており、視聴者たちは「普通にこれで三国志のドラマとして観たい！」「華麗な漢服さばきと中国語で無双するおディーン様！」などと感嘆していた。さらに、孔明がライブハウスのバーテンダーとして働くシーンでは、俳優になる前に大学時代から数えて約6年もバーテンダーをしていた向井がプロ顔負けのシェイカーさばきを見せ、視聴者を驚愕させた。

　ほかにも、人気シンガー・ミア西表を演じる世界的ダンサーの菅原小春が圧巻のパフォーマンスを披露したり、ヒロインたちと敵対するスーパーアーティスト・前園ケイジを演じる関口メンディー（GENERATIONS from EXILE TRIBE）が短すぎる短パンで登場したり、世界的歌手マリア・ディーゼル役の女王蜂・アヴちゃんの熱唱があったり、三国志オタクのライブハウスオーナー・小林を演じる森山未來のキャラが濃すぎたりと、ネット実況が盛り上がるシーンが連発された。

　また、上白石の歌唱シーンでは原田真二の「タイム・トラベル」と松原みきの「真夜中のドア～stay with me」という、往年のヒット曲のカバーが披露された。そうした通好みの選曲も話題になり、トレンドワードを席巻するに至ったようだ。

　放送後、今作はTVerなどの配信サイトでランキングのトップに。まだ大半の秋ドラマがスタート前という事情はあるものの、TVerではバラエティなども含めて全番組の中で総合1位になっている。

　今作は『ハコヅメ～たたかう!交番女子～』（日本テレビ系）や『正直不動産』（NHK）など数々のヒットドラマを手がけた根本ノンジ氏が脚本を担当。根本氏は2024年度後期のNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』（主演：橋本環奈）を担当することも決まっており、今最も勢いに乗っている脚本家のひとりといわれる彼の脚本の見事さも視聴者の高評価につながったようだ。

　第2話では、ドラマ初出演となるマキシマム ザ ホルモンのナヲ、個性派俳優の嶋田久作、世界的に注目される若手ダンサーのアオイヤマダ、声優の梶裕貴（声の出演）のゲスト出演が決定しており、またもネット実況が盛り上がりそうな気配。視聴率的にはさほど大きく上向くことはないかもしれないが、そうした数字からは見えないヒットドラマとなる可能性がありそうだ。