ベテラン芸人でさえ緊張と不安で自分を見失う『M-1グランプリ』予選の恐ろしさ
#M-1 #馬鹿よ貴方は 新道竜巳
お笑い芸人にとってもっとも緊張する場所といえば、M-1グランプリの予選であると言う人は多い。テレビや大御所タレントと対面した時よりも緊張するの? と思う方もいるとは思いますが、ほとんどの芸人がテレビ出演まで行かずに引退していくので、お笑い芸人人生の中で多くの人が一番緊張するのは最高峰の賞レースM-1グランプリである事が多い。
1回戦は2人以上であれば誰でも参加できるが、気楽にエントリーをすると前日にプレッシャーで逃げ出す事もある。10日前くらいから自分の中でカウントダウンが始まり1日過ぎるごとにだんだん迫ってくる日程に怯える。当日になると起きたらもうすでに緊張している人もいる。身体が重くなり、なんか体調が悪い気がしてならないなんて事もある。
会場に行くと病院の受付のように静かに淡々としているスタッフにエントリーフィー2000円を渡すところで緊張がさらに高まる。到着が少し早ければ「少し早いので時間になってからいらしてください」と入場を認めてもらえないので、どこかで時間を潰さないといけない。エントリー受付がやっとできたらエントリー番号のシールをもらう。緊張しすぎのためか、なんかシールを無意識のうちに何度も触ったり貼り直したりすると、出番の時に粘着力がなくなっていつもより大きめのパフォーマンスによってシールが落ちてしまい、床に落ちた番号札が気になってネタどころではなくなってしまい噛んでしまったりセリフを飛ばしたりしてしまう。
あまりライブに出ずに本番を迎えると、出番前で台詞の間違いに気づき直前で手直しをするが、セリフを覚えられるか不安になりコンビ同士の喧嘩のきっかけになって「お前とはもう漫才したくない」と本番直前に解散し急遽欠場なんてことも少なくない。
いざ出番前になると、声が出るか不安になってきて声を少し出してみるも「こんな声だったっけ」と不安が加速し咳払いを何度もして、結果喉を痛めてしまう場合もある。3組前ぐらいになると落ち着かなくなり、小刻みに歩くことを無意識に繰り返し出番前にクタクタになってしまうことがある。台詞がなんとか頭に入っても、直前で急に練習で台詞が出てこなくなることもあります。練習すればするほど不安になってきて山ほど練習したはずなのに一番忘れた事ない台詞が出てこなくて冷や汗をかくなんてこともある。
有名な芸人さんが自分の出番近くに出場しテレビでは気づけなかったが、実際にみると実力差があきらかにあることで萎縮してしまいさっきまでの自分とは思えないぐらいモジモジして漫才をやってしまうこともある。思いが強ければ強いほどミスをした時に相方に当たりがキツくなってしまい、漫才中に少し怒ってしまい相方に萎縮して、普段の関係性がネタに見えてしまい取り返しのつかなくなることもある。
経験があれば全て解決というわけでもなく、かなりの数のライブを経験した芸人でさえ本番甘噛みが止まらないなんて事もある。いつもの自分で無くなるのがM-1グランプリなのだ。客席から見ると台詞を忘れて立ち尽くす出場者は滑稽で笑ってしまうこともあるが、当人は出番が終わり2分の漫才を少し間違えただけで、コンビの関係性がおかしくなるなんてこともある。記念のつもりで気楽に出ると思った以上に楽しむ余裕なんかない場合もありますので、お気をつけてください。
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