22年度のネットショッピング約23兆円、高齢者拡大、ゲームは衰退
#鷲尾香一
インターネットを中心とした消費者向け電子商取引市場の拡大が止まらない。経済産業省の22年度「電子商取引に関する市場調査」によると、前年比2兆499億円(9.9%)増加し、22兆7449億円にまで拡大した。
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html
消費者向け電子商取引市場(以下、ネット市場)の規模は、14年に前年比1兆6310億円(14.6%)と大幅に拡大して以降、拡大を続けている。
20年には新型コロナの影響による経済活動の停滞により、前年比830億円(0.4%)減少したものの、21年には市場希望は20兆円を突破、21年も順調に拡大している。(グラフ1)
それでも、新型コロナの感染拡大により、外出自粛や在宅勤務の促進などにより、自宅まで配達されるという利便性からネットショッピングは、新たな顧客層を取り込んだ。
とりわけ、それまでネットショッピングには後ろ向きだった高齢者層が、積極的にネットショッピングを利用し始めたことは、その後の市場規模拡大の大きな一因となった。総務省家計消費状況調査によると、22年の平均では、二人以上の世帯で65歳以上の高齢者のネットショッピング利用割合は、30.6%にまで拡大し、65歳以上の高齢者の3人に1人が利用している。
ネット市場には、大きく分類すると物販系、サービス系、デジタル系の市場がある。物販系は商品販売、サービス系は旅行や飲食、フードデリバリーなど、デジタル系は電子書籍や音楽・動画配信、オンラインゲームなどを取り扱う。
22年の各分野の市場規模は、物販系が前年比1868億円(5.4%)増加の13兆9997億円、サービス系が同1兆5053億円(32.4%)増加の6兆1477億円と市場拡大したのに対して、デジタル系は同1687億円(6.1%)減少の2兆5974億円と市場規模が縮小した。
この背景には、新型コロナが大きく関係している。
物販系の市場規模の内訳では、もっとも規模が大きいのは、食品、飲料、酒類で前年比2306億円(9.15%)増の2兆7505億円、次いで、生活家電、AV機器、PC・周辺機器等が同944億円(3.84%)増の2兆5528億円、衣類・服装雑貨が同1220億円(5.02%)増の2兆5499億円、雑貨、家具、インテリアの同789億円(3.47%)増の2兆3541億円となっている。
サービス系では旅行サービスが同9515億円(67.95%)の2兆3518億円で、市場規模が2兆円を超えているのは、この5項目しかない。
デジタル系で最も市場規模が大きいのは、オンラインゲームの1兆3097億円だが、前年比で3030億円(18.79 %)も減少している。デジタル系分野のすべての市場規模を合わせても2兆5974億円で、食品、飲料、酒類の市場規模を下回っているのだ。
21年に新型コロナの影響で前年比9.62%も減少した旅行サービスは、経済の回復と通常の日常生活が戻るとともに大きく回復した一方で、21年に7.82%も増加したオンラインゲームは、日常生活が戻るとともに衰退した。
そんな中で物販は着実に人々の生活に定着し、市場規模を拡大した。
総務省家計消費状況調査によると、22年平均の二人以上の世帯でネットショッピングを利用した比率は、51.6%と半数以上の世帯にのぼる。直近の23年7月の利用世帯の割合は54.0%で、1世帯当たりの支出額は4万4883円だ。
ただ、経済産業省の商業動態統計によると、22年の小売業全体の販売額は154兆4020億円で、無店舗小売業の販売額は11兆3690億円と7.4%にしか過ぎない。つまり、ネットでの物販系の市場規模は、今後もまだまだ拡大する可能性を秘めている。
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