那須川天心、また判定決着……「倒せない意味」と「師匠との共通点」とは
#ボクシング #那須川天心
18日、プロボクシングの那須川天心が東京・有明アリーナでデビュー2戦目に登場。メキシコ国内王者のルイス・グスマンを寄せ付けず、8ラウンド判定勝ちを収めた。
那須川は試合開始早々に左ストレートのカウンターでダウンを奪うと、その後も持ち前のスピードで経験豊富な相手を圧倒し、7ラウンドにも右フックで2度目のダウン。最終8ラウンドの終了間際にも、スリップ判定となったものの相手を仰向けに倒して有終の美を飾った。
ジャッジの採点は3者ともに「80-70」のフルマーク。まさに完全勝利といえる内容だったが、実況席の元世界ミドル級王者・村田諒太氏から、試合後の那須川のコメントに対して“公開説教”とも取れる発言が飛び出すなど、賛否を呼んでいる。
実際、ボクシング関係者は今回の試合をどう見たのか。話を聞いた。
「前回に比べて重心が低く、パワーパンチを打ち込もうという意識は感じられました。1ラウンドにダウンを取ったカウンターは見事としか言いようがないですし、相手の攻撃もほぼすべて見切っている。本人の言う通り、よりボクシングらしいスタイルに進化しているように見えましたよ。この内容で批判が集まるのは、人気者の宿命とはいえ不憫ですね」(ジム関係者)
今回、那須川は試合前から「殴る」「殴りにいく」といった発言を繰り返し、やはりノックアウトを強く意識していたようだ。それもあって、試合後のネット上には、KOを期待したファンから厳しい意見も続出し、将来を不安視する声も少なくない。
「まあ、ボクシングの醍醐味はノックアウトですから、ファンから不満の声が上がるのも仕方ない部分はあると思います。ですが、この試合で那須川選手の将来に不安を感じたかと問われれば、そんなことはまったくないですね。相手は軽量級の層が厚く、パンチ力だけなら那須川選手より上の選手もゴロゴロしているメキシコの国内王者です。当然、耐久力があるからこそ勝ち抜いてきているわけですし、今回の試合でグスマンはほとんど自分から仕掛けることがなかった。よりリスクを負って攻め続けたのは那須川選手ですし、これでまた強くなるだろうという期待しかありませんね」(同)
さらに、同関係者は今回の那須川の試合を見て、現在、那須川の専属トレーナーを務めている粟生(あおう)隆寛との共通点を思い浮かべたという。
「当時の粟生も、史上初のアマ高校6冠という実績を引っ提げてデビューしたスーパールーキーでしたが、やはり“倒せない時期”というのがあったんです。14戦目の日本タイトル獲得から3試合連続で不完全燃焼の判定勝利に終わり、次戦の榎洋之選手(当時OPBF東洋太平洋王者)との試合では12ラウンド引き分け判定に終わっている。相手の耐久力が上がったことと、スピードに差がありすぎて試合がかみ合わなかったことで、精彩を欠いたように見えていたんですね。ところが榎戦直後に出場した世界タイトルマッチでは、水を得た魚のように躍動しました。ボクシングの世界では、相手のレベルが上がることで一気に試合がかみ合い、実力が発揮される例も少なくないんです」(同)
那須川の場合、1戦目が日本ランカー、2戦目がメキシコ王者と、スーパールーキーだった粟生トレーナーが14戦目以降に対戦していたランクの相手と、デビューから連戦していることになる。しかも、その相手をまったく問題にしない試合ぶりを見せているのだ。
「だから那須川選手も、あと1つ2つレベルの高い相手になれば、ノックアウトを量産するボクサーに化ける可能性も十分あります。例えば同じキックボクシング出身で現在那須川と同じスーパーバンタムの東洋王者である武居由樹選手なんて、面白いんじゃないですか?」(同)
試合後の会見で左手を負傷していたことも明かしている那須川。まずはケガの完治を祈りつつ、今後のキャリアに期待したいところだ。
(文=新越谷ノリヲ)
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