ジャニーズ✕中田秀夫ホラー映画、作品で何かをを訴えていた?
#ジャニーズ #ホラー #しばりやトーマス #世界は映画を見ていれば大体わかる
先日行われたジャニーズ事務所の記者会見で、事務所は創業者の故ジャニー喜多川の長年にわたる性被害を「事実」と認めて謝罪し、東山紀之を新社長として再出発、また被害者には「法を超えた救済や補償が必要」という姿勢を示した。
曖昧な答弁に終始せず、創業者の罪と被害者を救済するとしたことについては一定の評価を受けてはいるが、新社長の東山に別の性被害疑惑が取りざたされるなど、今後も一筋縄ではいかない様子。
問題なのはジャニーズとメディアとの「今後の関係」だ。一部ではCMにジャニーズタレントを起用しないという動きがあり、ジャニーズ離れが加速すると思われるが、各テレビ局には多くのジャニーズタレントが番組にレギュラー出演しており、明日からいきなり「もうジャニーズは使いません」というわけにもいかないだろう。
この手の問題は映画業界にも降りかかる。
9月29日から東映系で公開される『BAD LANDS バッド・ランズ』にはHey! Say! JUMPの山田涼介が主演、10月13日から公開の岩井俊二監督の最新作『キリエのうた』にはSixTONESの松村北斗、『法廷遊戯』にはKing & Princeの永瀬廉、10月20日から松竹系で公開される『おまえの罪を自白しろ』にはSexy Zoneの中島健人、11月公開、ビートたけしの小説を映画化する『アナログ』には二宮和也、なにわ男子の藤原丈一郎が出演……。
このように映画業界はジャニーズ出演作ラッシュが続く。これらの作品はプロモートをどうするか、頭を悩ませているに違いない。特に予告編でタイトルを連呼している『おまえの罪を自白しろ』は違う意味に聞こえてしょうがない! このタイミングで公開するにはキツすぎるタイトルだなあ!
と、芸能ジャーナリズムみたいなことを言いたいわけではない。今回の話題はすでに公開済のジャニーズ出演作品、しかも同一の監督によるものだ。公開当時は特に気にしなかったけど、今思えばとんでもないことを伝えようとしていたのかも知れない……そんな映画たちだ。
その監督の名は中田秀夫。中田監督といえば『女優霊』『リング』でJホラーというジャンルを切り開いたパイオニア。以後もホラー作品を撮り続けているが、最近ではあまり意欲的な作品は見受けられない。
明らかに方向転換が伺えるのが2020年の『事故物件 怖い間取り』だ。「事故物件住みます芸人」松原タニシの著書『事故物件怪談 恐い間取り』を原作にした映画化だ。
売れない芸人コンビ・ジョナサンズの山野ヤマメは相方の中井から解散をつきつけられ、中井は放送作家として新しい道を目指すが、ヤマメはピン芸人として生き残りを図る。テレビのプロデューサについていた中井の提案で「芸人が事故物件に住んで、心霊映像を撮ってくる」という企画を無理やり押し付けられる。
事故物件とは居住者が何らかの理由で亡くなったアパートやマンションのことを指す。
渋々事故物件に住んだヤマメは、初日から心霊現象に出くわし、これをテレビで話すとバカ受け、芸人として初めてブレイクのきっかけをつかむ。
売れっ子芸人になっていくヤマメの周囲の人間は次々と不幸に見舞われる。田舎に帰ると決めた中井はもう事故物件から手を引けというが、東京進出の話が舞い込んできたヤマメは後に引けない。ついに「本当にヤバイ」事故物件に手を出すのだった……。
原作者の松原タニシを模した主人公・ヤマメを演じたのはKAT-TUNの亀梨和也。実際の亀梨は松原タニシとは似てもいないが、彼が演じると松原タニシに見えてくるのだから、役者というのは恐ろしい。
この映画は恐ろしいホラー映画のはずが、中々怖くならない。事故物件に住んでラップ音が聞こえるとか、カメラに人魂が映ったぐらいでは「怖い」という感じにはならず、次々事故物件を移り住むのだが、水はけの悪い流しから髪の毛が出てきた、ってそれ、ちゃんと掃除してないだけじゃあ……。
そんな心霊現象より、不動産屋で嬉々として事故物件を勧めてくる江口のり子とか、他人の功績を横取りして、ヤマメたちがひどい目にあっても知らんぷりで放置するテレビプロデューサー役の木下ほうかのほうがよっぽど恐ろしい。彼は現実の社会で酷いことをしていて、反省もしてなかったんだから。
性加害を起こしたジャニー喜多川の事務所のタレントが出ている映画の共演者も、性加害者というのはかなり怖い。映画の内容より怖い。映画自体は後半に進むにつれ、怖さが薄れ説明のつかない意味不明の展開になり、強引な幕引きを迎えるのだった!
冒頭に出てくるジョナサンズの芸に小道具の傘を開いたら「LOVE LOVE 愛してる」(フジテレビ系)というキンキキッズの人気番組のタイトルが出てくるなど、ジャニーズギャグ(?)を散りばめたりして。
怖がらせるよりもむしろ、笑わせようとした節があり、折からの事故物件ブームにも乗った同作は興行収入20億越えのヒットとなり、中田秀夫監督はこの路線を追求する。ジャニーズを主演にして、怖がらせるよりも笑える、ツッコミの要素を取り込んだ映画というジャンルを切り開く。
『‟それ”がいる森』(2022)は嵐の相葉雅紀が主役で、森の中に潜む謎の怪異‟それ”が子供を攫い、行方不明になるという話だ。相葉がこの事件を調べると、何十年も前から子供がいなくなる事件が起きており、‟それ”が子供を攫うのを目撃したが大人たちに信じてもらえず、事件のことをずっと追い続けている児玉(小日向文世)という男がいるのだが、彼によると‟それ”は宇宙人で、子供をUFOで連れ去るというのだ!
児玉はその事実を雑誌「ムー」(学研)で知る! そんなもん信用するなよ!
‟それ”の正体は子供を食って大きくなる化け物(宇宙人)だった、というオチなんだが、「子供を食って大きくなる」ってそれ、ジャニー喜多川のことじゃないか!
クライマックスは大きくなった‟それ”と警官隊が対決するのだが、化け物相手に警察はまるで歯が立たない。ジャニー喜多川は警察権力など、屁でもないっていうメッセージなのかな?
この映画にジャニーズの相葉雅紀が主演しているって、強烈なダブルミーニングではないですか。意図的なブラックジョークに受け取れるトンデモない映画ですよ。
現在公開中の『禁じられた遊び』はジャニーズWESTの重岡大毅と橋本環奈のダブル主演作。
異常に嫉妬深い妻・美雪(ファーストサマーウイカ)に睨まれて辛そうに生きている直人(重岡)。美雪と息子の春翔は交通事故に遭い、美雪は即死。春翔も直人の目の前で心肺停止に陥るが、落雷の轟音とともに春翔は蘇る。春翔は事故現場で拾った母親の指を家の庭に埋め、直人に教えてもらった蘇りの呪文「エロイムエッサイム」を唱え、「お母さん、もうすぐ帰ってくるね?」
以後、直人の周囲では不思議な現象が起こり始める。
この映画も怖いのは最初だけで後半に行くにしたがって怖さはどんどん尻すぼみになっていく。中盤の霊能力者が出てくるところなんて、完全にギャグだよ。
ヒロインのポジションにいる橋本環奈は「何もしていないのに、よくないものを呼び寄せる」体質の女で、セクハラ上司に悩まされたり、ブラックな仕事を押し付けられたり、(本人からしたら)身に覚えのない嫉妬をかったりする。しかし映画を観る限り「そりゃ、橋本環奈の方が悪いよ」って言いたくなるケースばかりで、劇中で起きるロクでもない現象の8割は橋本環奈のせい!
セクハラ上司から重岡大毅が助けてくれた時、相手に家庭があるのわかってるくせに「ちょっとだけいいって思ったの……でも、本気で好きになったとか、そういうんじゃないから!」って言い訳していたけど、それはもう「好き」と同じだよ!ファーストサマーウイカに「絶対許さない!」って言われるのも納得。
そもそも『禁じられた遊び』ってタイトルが象徴的。ジャニー喜多川は所属タレントに「禁じられた遊び」をしていたんだから……。
最近の中田監督はこのようにジャニーズタレントが起用された作品でホラー映画としての怖さよりも別の何かをメッセージとして忍ばせているように思え、最近の中田作品は違う意味で目が離せない。
ホラー映画より、現実のジャニー喜多川の方がひどいことをしていたのだから。まさに事実は小説より奇なり。
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