日本の所得格差が過去最大級…厚生労働省発表
#格差社会 #高齢化
物価上昇が続く中、所得の増加が大きな課題となっているが、厚生労働省が8月22日に発表した21年の「ジニ係数」は、所得格差が過去最大だった14年に匹敵するものとなり、格差が拡大していることが明かになった。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/96-1_r03kekka.html
所得格差を示す指標として最もよく用いられるのが「ジニ係数」。ジニ係数は所得の均等度を表す指標で、0に近いほど所得が均等に分配され、所得格差が小さく、1に近いほど所得が一部に集中していて、格差が大きいことを示す。
厚生労働省はおおむね3年に1度、「所得再分配調査」を実施し、ジニ係数を発表している。
21年調査での給与所得や事業所得に加え、雑所得、仕送りや企業年金、生命保険といった私的給付を加えた当初所得額の平均は423.4万円だった。
この当初所得には税金や社会保険料、社会保障給付といった公的なものは含まれないため、当初所得のジニ係数が所得格差の実態に近いものとなる。
その当初所得をベースとした21年のジニ係数は0.5700で、17年の前回調査から0.0106悪化し、格差が過去最大だった0.5704に匹敵するものとなった。
当初所得のジニ係数は2000年代では、17年調査で14年調査から0.0110縮小したのを除けば、格差は拡大し続けている。
当初所得から税金、社会保険料を控除し、社会保障給付(公的年金などの現金給付、医療・介護・保育の現物給付)を加えたのが再分配所得だ。つまり、再分配所得は当初所得から公的な拠出や受給を加えることで、所得格差が調整されることになる。
21年の再分配所得は504.2万円で、再分配所得をベースとしたジニ係数は0.3813となり前回調査から0.0092悪化している。(グラフ1)
厚労省では、当初所得と再分配所得では社会保障や税の再分配機能により、ジニ係数が改善されていることを強調している。だが、再分配による当初所得から再分配所得への改善度は33.1%で、前回調査の33.5%から低下している。
特に、税による改善度は4.7%で前回調査の4.8%から0.1ポイントの低下だったのに対して、社会保障による改善度は29.8%と前回調査の30.1%から0.3ポイント低下しており、社会保障による所得格差是正の機能低下が見て取れる。
ジニ係数の悪化には、大きな特徴がある。世帯類型別に見ると、高齢者世帯の当初所得は前回調査の100.4万円から24.3万円(24.2%)増加して124.7万円になったが、再分配所得は同365.4万円から364.1万円に1.3万円減少した。
これに伴って、当初所得ベースのジニ係数は前回調査の0.7828から0.7173に改善したが、再分配所得ベースのジニ係数は0.3688から0.3781に悪化している。
同様に、母子世帯では当初所得は前回調査の236.7万円から297.6万円に60.9万円(25.7%)増加し、再分配所得は285.1万円から322.5万円に37.4万円(13.1%)増加した。これに伴い、当初所得ベースのジニ係数も0.4242から0.3341に改善したものの、再分配所得のジニ係数は0.2657から0.2758に悪化した。
高齢者世帯のジニ係数は当初所得から再分配所得では、大きく改善してはいるものの、再分配所得のジニ係数が悪化し、同様に母子世帯の再分配所得のジニ係数も悪化していることは、高齢者世帯や母子世帯に対する社会保障機能が低下していることを示している。
これは、世帯主の年齢階級別にも表れている。当初所得ベースで最もジニ係数が小さい(格差が少ない)のは、40~44歳の0.2931だが、最も大きいのは75歳以上の0.7411だ。ジニ係数0.7台というのは驚くべき数値で、75歳以上では特定の人に所得が集中していることを示している。
再分配所得ベースのジニ係数では、最も小さいのは当初所得ベースと同様に40~44歳の0.2694で、最も大きいのは60~64歳の0.4107となっている。
つまり、当初所得でも、再分配所得でも、高齢者になるに従い、所得格差が広がっていくということだ。
高齢者世帯の当初所得が125万円に満たないことや、母子世帯が300万円を下回っていることも大きな問題だが、特に高齢者のジニ係数は驚くべき格差を示しており、人口減少による働き手不足の状況にあって、高齢者雇用が進んでいないことを鮮明に表している。
もはや、“豊かな老後”は夢であり、生活保護受給世帯の55%以上が高齢者世帯というのが、日本の老後の現実なのだ。
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