ジャニーズ事務所によるメディア支配の内実「タレントを引き上げる」恐怖の一声
#ジャニーズ #性加害
9月7日、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子前社長と新社長の座についた東山紀之、ジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦がそろって会見を開き、故・ジャニー喜多川氏の性加害問題について認め、謝罪した。
300人以上集まったとされるメディアの記者たちから矢継ぎ早に質問が飛び交い、4時間を超したこの会見の様子や今後の動向についてなどが連日、あちこちでニュースになっている。
これまでの消極的な報道姿勢をなかったコトにするかのように、メディアは積極的にこの問題を取り扱っているが、ジャニーズ事務所の再発防止特別チームの調査報告では「マスメディアからの批判を受けることがないことから、ジャニーズ事務所が自浄能力を発揮することもなく隠蔽体質を強化し、その結果、被害が拡大した」と、いわゆる“メディアの沈黙”が性被害を助長したとしている。
ある芸能記者はいう。
「私が芸能記者を始めた10年前、ジャニーズ事務所のいろんな強力さにビックリしたものです。記者になる以前からもジャニーズ事務所のメディアへの圧力やジャニーさんの性癖については都市伝説みたいな感じで聞いたことはあったけど、近づくと別次元の存在で。私レベルのキャリアでは、細かな情報は降りてこなかったですし、そこに飛び込む余力もなくて。だって、もしなんらかのネタをつかんでもまずは編集部だけじゃなくて上層部へが納得するような完璧な素材をそろえてないと、取材でさえ、まともにさせてもらえませんでしたから」(芸能記者)
ではなぜ、ジャニーズはメディアへの影響力を行使できたのかといえば、それはひとえに同社のアイドルたちが社会的に絶対的な存在だったからだ。あるテレビ局の幹部は「ジャニーズがなくなったら困るのは、ジャニーズだけじゃない。テレビ局もそうだけど、彼らを表紙に起用してなんとか糊口をしのいでいるファッション誌・カルチャー誌などの雑誌、ゴシップ系メディアだってジャニーズのネタでPVを稼いでるでしょ」と話していた。
「私がとある公共施設に許可を取って、ジャニタレに直撃取材をした際、そのタレントのスタッフと小競り合いになったことがありました。その施設の担当者が間に入ってくれて、別室で話し合うことになりました。そのスタッフは頑なに自身の身元を明かさなかったわりに、私には『名刺を出せ!』とすごい剣幕で……。解放された後もすごく怖かった印象が残っています。自分たちが強い立場にいるとわかっているから、できる態度ですよね」(前出の芸能記者)
ジャニーズはスタッフまで、“敵”とみなせば、かなり強気なで有名なのだ。
2010年12月30日・2011年1月6日合併号と2011年1月13日号の「週刊文春」(文藝春秋)で掲載された「『アイドル帝国』を築いた男 ジャニー喜多川社長の『ルーツ』を追う!」では、前編が発売されると、ジャニーズ事務所本社に呼び出された記者が、役員や弁護士に取り囲まれ、当時の副社長でジャニー氏の実姉である故・藤島メリー氏から「私の納得いくまで説明しないと、徹夜してでもここを動かないし、帰らせない」と詰められたことを報じている。
その傲慢さはSMAP解散騒動時にも「週刊文春」上で炸裂していたが、逆にそれを面と向かって報じられるのは限られたメディアだけだった。
「ある局のドラマ班がジャニタレ主演のドラマで、まだ無名のJr.でスピンオフを作れといわれたのでさすがに採算が取れないと拒否したら『じゃあ、本ドラマも降ります』といわれてしまい結局、上層部との手打ちがあってジャニーズに謝る羽目になったとか。また、ある人気ドラマの2を作りたかったテレビ局に対して、レギュラーキャストである他の事務所のタレントが気に入らず、ジャニーズ事務所の意向で結局ドラマがポシャったとか、そんな話はよく聞きましたよ」(テレビ制作会社関係者)
どの局も経営に苦しむ中で、ドラマや音楽番組などへの出演をぶら下げられては、すくなくとも従っておいたほうが得であるということだろう。
同会見の序盤、ジャニーズ事務所へ“メディアの沈黙”総じて忖度についても、かなり踏みこんだ質問があった。
これまでジャニーズタレントご用達の音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)などに、昔はDAPUMPからBE:FIRSTまで同じようなボーイズダンスグループなどの競合が出演できていない事実について、元SMAPやTOBE所属のタレントなど辞めジャニたちの活動阻止を阻止していたことの確認と、今後はそれをやめるよう求めたものだった。
実際w-inds.の橘慶太は2021年に公開された『R25』でのインタビューで「メディアに出られないという圧倒的逆境の中、腐ってしまう瞬間はなかったんですか?」と聞かれ「僕、本当にありがたいなと思ってるんですよ。この逆境を。もしデビュー当時の勢いのままテレビにバンバン出演させてもらってたら、僕はとっくに潰れてたと思うので」と、その出所については触れていないものの、自分たちがなかなかメディアに出られなくなったことに、“なんらかの力”が働いていたことを示唆している。
上記の質問には井ノ原も「僕も、こういう立場になって、これはなんでこうなんだろうって疑問に思うことが結構あったんですよ。『なんでこうなの?』って聞くと、『昔、ジャニーさんがこういったから。メリーさんがいったから』と、きちんと守ってきたちょっと昔のタイプのスタッフがいたってことも事実です。『なんで? それ、変えようよ』っていうのは毎日いっています。『忖度なくします』っていっても急になくなるものじゃないと思うんですよ。だからそれを一つひとつやっていくっていうのが。忖度って日本に蔓延っているから、これを無くすのは本当に大変だと思います。みなさんの問題でも、一緒に考えていく問題でもあると思いますから、その辺はご協力いただいたほうがいいと思います」と、話した。
本人が経営に入るまでそれらの事実を知らなかったというのは、中年経営陣の発言としては若干白々しい気もするが、もしほんとうならば、事務所がテレビ局などと作り上げてきた独特なスタンダードや得体の知れない独裁的パワーがいかにタレントたちにとっては、当たり前のものだったのかもわかる。
ジャニーズのビジネスに乗っかってきたメディアは、お気持ちを表明するだけでなく、自分たちとジャニーズとの間でどのような忖度があったのか、些細なことでもすべて詳らかにしていくべきだろう。
人権尊重方針に従いアサヒグループホールディングスなどはジャニーズの所属タレントを起用するCMに、見直しの動きが広がったことが9月8日にわかった。また、自身のインスタグラムにジャニー氏の信条である「Show must go on!」とだけつぶやいた木村拓哉が批判にさらされ、当該記事を削除するに至っている。
日本の芸能界の中で、なんでもありだったジャニーズの行方――それは多くのメディア人も「これからどうなるのか」と見守っている。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事