23年度私立大学・短大の入学者、定員割れ過去最多 短大は消滅する?
#鷲尾香一
23年度の入学者数は、私立大学では半数以上、私立短期大学では9割以上が定員割れとなっており、89年の調査開始以来、定員割れの大学・短大が過去最多となった。日本私立学校振興・共済事業団は8月30日、「学校法人基礎調査」から集計した「23年度私立学校・短期大学等入学志願動向」を公表した。
https://www.shigaku.go.jp/files/shigandoukouR5.pdf
同事業団では、「学校法人基礎調査」を実施しており、23年度の「私立大学・短期大学等入学志願動向」は、この調査から23年5月1日現在の私立大学600校、短期大学276校を対象に、入学定員、志願者数及び入学者数等を集計し、入学定員充足率や志願倍率等の動向を規模別、地域別、学部系統別にまとめた。
私立大学全体の定員に対する入学者数の割合である「入学定員充足率」は22年度の100.85%から1.26ポイント減少して、初めて100%を割り込み、99.59%に低下した。
この背景には、志願者の変化がある。
大学数が2校増加して、私立大学全体の入学定員数は前年度比4696人(0.9%)増加したこともあるが、志願者数が同10万8659人(2.8%)減少し、受験者数も同9万5687人(2.6%)減少した。このため、志願者数に対する入学定員の割合である「志願倍率」は前年度比0.29ポイント低下して7.39倍となった。
この結果、合格者数も前年度比1万4003人(0.9%)減少し、入学者数は同1595人(0.3%)減少したが、受験者数数に対する合格者数の割合である「合格率」は0.72ポイント上昇して42.14%に、合格者数に対する入学者数の割合である「歩留率」は0.20%ポイント上昇して33.49%となった。
23年度は少子化による人口減少などで、18歳人口が前年度に比べ2万3869人減少しており、大学志願者数、受験者数が減少した中で、合格率を引き上げ、合格者数の減少を最小限にとどめ、入学者数の減少に歯止めをかけようとしたが結局、入学定員充足率は100%を割り込んだ。
個別の私立大学600校のうち、入学定員充足率が100%未満の「定員割れ」の大学数は前年度比37校(6.0ポイント)増加して320校と全体の53.3%に上った。定員割れの大学数が全体の半数を上回ったのは89年の調査開始以来初めてで、定員割れ大学数は過去最多となった。また、充足率が50%未満の大学も前年度から16校増加して29校となった。(グラフ1)
一方で入学定員数以上の入学者を受け入れることができる「入学定員数の緩和」により、入学定員充足率が110%以上となった大学も86校と全体の14.3%あったが、前年度比では15校(15%)減少し、過去最低となっている。
定員割れを起こしている私立大学には、大学の規模と地域性で特長がある。
規模別では入学定員が1500人を超える大規模大学は入学定員充足率が100%を超えているが、入学定員数が少なくなるほど入学定員充足率は低下し、500人未満の小規模大学は充足率が80%台に、100人未満では70%台に低下する。
さらに、大学の地域別では、東京が充足率103.46%なのに対して、東北(宮城を除く)が84.00%、東海(愛知を除く)が89.24%、中国(広島を除く)が81.51%、四国が84.43%と4地域が充足率90%を割り込む厳しい状況となっている。
より厳しい状況にあるのが、短期大学だ。短大は前年度比3校減少し、入学定員数は同2040人(4.0%)減少したものの、志願者数が同7447人(13.9%)と大幅に減少したことで、受験者数も同7029人(13.6%)減少した。
このため、志願倍率は前年度比0.11ポイント低下し、1倍を割り込み0.94倍と志願者数段階で入学定員を満たしていない状況だ。合格率を引き上げ、合格者数の減少を最小限にとどめ、入学者数の減少に歯止めことで、合格率は同0.63ポイント上昇して93.36%に、歩留率も同1.92ポイント上昇して84.11%となった。
それでも入学定員充足率は前年度比5.60ポイント低下して71.99%と2年連続で70%台に落ち込み、過去最低を更新した。
この結果、定員割れとなった短大は276校のうち、前年比15校増加して254校と過去最多を更新し、全体に占める比率も前年度比6.3ポイント上昇して、92.0%と過去最高となった。短大は入学定員を満たしているのが22校しかないという状況だ。
その上、入学者数の規模、地域に関係なく、充足率が低下しており、充足率が50%未満という短大も41校にのぼっている。
私立大学も厳しい状況にあるが、私立短大では入学者数の減少が学校経営に大きな影響を与えているところも多く出ている。
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