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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > .ENDRECHERI.最新作を深堀り
ファンク研究家が語る.ENDRECHERI.最新作『Super funk market』

.ENDRECHERI.最新作『Super funk market』から“ファンクマスター”堂本剛の現在地を探る

.ENDRECHERI.は世界に通用する本物のファンク・アーティストである

 それではここからはファンク研究家として、ファンク・サイドの楽曲について触れていきたい。今作は前作『GO TO FUNK』の流れを引き継ぎ、タイトなグルーヴによりいっそう磨きがかかったファンクが多数収録されている。

 まずは表題曲「Super funk market」だ。伝統的なファンクの作曲法やシャウトを用いながらも、Gakushiが得意とするR&Bの手法や、ラストの堂本剛本人によるロックギター、独特な譜割りの日本語歌詞&メロディなどが混ざり合うことで、.ENDRECHERI.にしか作れない唯一無二なファンクに仕上がっている。

 某コンビニの入店メロディでもお馴染み、ラとファの繰り返しの電子音をうまく用いているユーモアのセンスや、Bメロ(2:21~)のバックで流れるクラシカルなリフはP-Funkの影響を感じさせる。さらに2:01~のホーンリフは、JB’sの「Pass The Peas」のオマージュだろう。

 シングルカットもされていた「LOVE VS. LOVE」「1111111 ~One Another’s Colors~」「MYND」の3曲については、私が過去に執筆した記事をご覧いただきたい。

 「Pretty Phantom」は昨年、木村拓哉と堂本剛がGYAO!の番組で共演した際に、木村が発した言葉が元となって生まれた曲。こちらは80s後半~90s前半のサウンド/グルーヴを現代的に再構築したような内容だ。いかにもプリンスといったイントロから、ニュージャックスウィングのようなハネの強い、中毒性のあるグルーヴに流れていく。

 プリンスと言えば、今作の「Everybody say love ~Heian Jingu Shrine Arrangement~」「Rain of Rainbow ~Heian Jingu Shrine Arrangement~」からも、プリンスの影響を感じ取ることができる。どちらも過去曲の再レコーディングで、堂本剛が毎年行っている『平安神宮 奉納演奏』のためのメロウ&セクシーなアレンジだ。

 「LOVE VS. LOVE」についても同様なのだが、こういったメロウなサウンドをファンキーに、そしてたまらなくセクシーに仕上げていくのが、まさにプリンスの十八番だったのである。

 「心鬼狼」「I, Knew Me」は従来の.ENDRECHERI.のファンクとはまた違ったテイスト。どちらもシンプルなサウンドに徹しており、皆が聴きやすいポップスというフィールドに、さりげなくファンクを忍ばせるアレンジになっている。こちらはより堂本剛の優れたメロディーラインや、歌唱力が分かる楽曲だと言えるだろう。

 そして、個人的に今回イチオシなのが「依存 BEAT」だ。ゾンビドラマや映画が好きだという堂本剛が、「ゾンビ」の空耳で作り上げた極上のファンク。70s後半のファンカデリック(P-Funk)を彷彿とさせる、骨太なファンク・グルーヴだ。それをさらに現代的にして、ロックやヒップホップなど、さまざまなジャンルをごちゃ混ぜにして出来上がったようなカオスなサウンド。そしてこのカオスさが、ゾンビというモチーフにうまくハマっている。

 .ENDRECHERI.スイーツファンク最新作、「cho_cho_chocol@te」も同様のサウンド。こちらも繰り返されるチャント「Chocolate Chocolate♪」がクセになり、グルーヴの沼から抜け出せなくなる。

 以上がファンクサイドの11曲である。総括としては、今作は完璧なアルバムだったと思う。今回ほとんど触れなかったが、もちろんバラード・サイドの内容も素晴らしいし、そして前述のとおりファンク・サイドは「.ENDRECHERI.は世界に通用する本物のファンク・アーティストである」ということを明快に示している。

 グルーヴ、メロディ、アレンジ、サウンド、どれを取っても海外のファンクバンドに勝るとも劣らない。そして何より、他のどのバンドとも違うオリジナリティがある。2023年現在、ここまで本気でファンクを追求しているバンドがけして多くないという現状で、.ENDRECHERI.は世界的に見ても非常に貴重な存在なのだ。

 ぜひとも今作が広く世界中で聴かれ、海の向こうのファンカティアー(ファンク愛好家)も夢中にさせてほしいと切に願う。そして、P-Funkのジョージ・クリントンと共演し、その実力を認めてもらえたのだから、個人的には次はプリンス・サイドへ……元バンドメンバーのソニー・Tや、その遺伝子を引き継ぐコーリー・ウォンなどとも共演してほしい。

 .ENDRECHERI.が海外の大型フェスに招聘されるのも、そう遠い未来ではないように感じる。その日を楽しみにしながら、『Super funk market』を繰り返し聴いていきたい。

Dr.ファンクシッテルー(ファンク研究家/ライター/ミュージシャン)

Twitter:@DrFunkshitteru

ファンク研究家/ライター/ミュージシャン。ファンクバンド「KINZTO」を結成し、日々ファンクを広める活動を行っている。
著書『ファンクの歴史』をKindleにて発売、上中下巻にて完結。表紙イラストは『とんかつDJアゲ太郎』の小山ゆうじろう氏。それが縁となり、2021年に「週刊少年ジャンプ」の「巻末解放区!WEEKLY 週ちゃん」にゲスト出演。新旧ファンク10名盤を少年誌で紹介した。
また、ファンクバンドVulfpeckを国内に紹介するnoteマガジン「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」を連載。『サステナブル・ファンク・バンド:どこよりも詳しいVulfpeckファンブック』として電子書籍化した。

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最終更新:2023/09/07 12:00
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