「日本のR&Bは連帯が必要」 aimiが語る、R&Bと〈STAY READY〉への強い想い
#インタビュー #あぷ噛む
「R&Bシンガー」を名乗って2020年から活動しているaimi。1万4000人が参加した国内大規模のオーディションで準グランプリに輝き、英国マンチェスター留学中には現地のコンテストで優勝、帰国後から本名名義でシンガーソングライターとして活動を続け、テレビゲームの日本語版テーマソングを歌うなどの活躍をしてきたキャリアの持ち主でもある。その彼女が「aimi」と名乗ってR&Bプロジェクトを始めたのはなぜか。主催するR&Bパーティ〈STAY READY〉とR&Bに対する熱い想いを聞く。(取材・文=末﨑裕之)
――本名名義での活動から数えると、けっこう長いキャリアですよね。
aimi そうですね。でもあんまり前のことは喋ってないですね。自分の本名も言ってないんで、基本的には。出したくないわけではないんですけど、aimiとはあまりに音楽性が違うから、現状、同一人物みたいにはしてないんですよね。オルターエゴ(別人格)みたいな扱いというか。
――おっしゃるように、本名名義とは音楽性がだいぶ変わりましたが、aimiを始めたきっかけは何だったんですか?
aimi Shingo.Sとの出会いが一番大きかったですね。それまで一緒にやってたプロデューサーとかアレンジャーの人は、ブラックミュージックが大好きでしたけど、いわゆるトラック先行で作るヒップホップとかR&Bのスタイルを持っている人ではなかったので。それまでは基本的に私が自力で曲を作ることが多かったんですね。Shingoさんと出会ったことで、一緒に曲を作るっていう作業をやり始めて、自分のR&Bのルーツとか、2020年以降の新しいR&Bの流れを、自分の中でオマージュというか、ぐちゃぐちゃにして出したのがaimiっていう感じでした。
――本名名義のアルバムを出して割とすぐにコロナ禍に入って、リリースイベントも延期になったりしたじゃないですか。コロナのタイミングも、aimiにスイッチする要因になったのかなって想像したんですが。
aimi 確かに。R&Bを作り始めたのはShingoさんとの出会いがきっかけですけど、aimiに本腰を入れたっていうのは、完全にコロナがきっかけですね。それまでの活動がやっぱりストップしてしまったし、地元(成田市)での活動はイベントが中心だったんですけど、郊外のイベントって当時、東京より障壁があったと思うんですよね。あと、コロナのタイミングと、音楽的限界を感じてたタイミングがけっこう近いところにありました。このまま1人で曲を作り続けても、楽しみを見つけられなくないという気持ちになってきていて。Shingoさんと一緒に作り出したことで、またソングライティングがすごく楽しくなったんです。自分の青春に立ち戻ったりとか、新しいR&Bから刺激を受けたこともすごく影響してたと思います。
――ちなみに青春時代に聞いてたR&Bって、具体的にどのあたりですか?
aimi 一番聴いてたのは2000年初頭のキラキラR&Bですかね。リアーナ、デスチャ(デスティニーズ・チャイルド)とかビヨンセとか、ああいったところは特に聞いてました。私が若いときはR&Bのコンピレーションとかたくさん出てたんですよ。そういうのでめちゃくちゃ聴いたりとか。あとMTVとかで毎日垂れ流して観てたので、曲名もアーティストもわかんないけど、聴いたらすぐにその時代にトリップするみたいな、そういう聴き方をしてたと思います。当時一番めちゃくちゃ聴いて練習してたのは、R&Bだとデスチャかも知れないですね。
――aimiになってから、がっつりShingo.Sさんと組んでやってるじゃないですか。Shingoさんとのケミストリーというか、なんでShingoさんとここまでうまくいくのかって、ご自身ではどう考えてますか?
aimi 彼のプロデュース能力が抜群に高いっていうのがまず一つ大きなところで。ビート先行で作ってるんですけど、彼のビートは主張がないというか、伴奏に徹するタイプなので、私の声が持ってる成分をつぶさないでいてくれるんです。コード進行の切なさとかに「ああShingo.Sっぽいな」って特色はありますけど、トラックに我(が)があんまり出ないタイプだから。
aimi あと、ボーカルとかメロディをディレクションされるのって、嫌がるアーティストもいると思うんですよ。自分のクリエイションに手を出して欲しくないみたいな。でも、私はもともと1人でやってたので、一緒にできることが基本嬉しいんですよね。私のオープンさと、Shingoさんの関与がすごくいいバランスになってるんだと思います。あとは、音楽のことに限らず何でも話し合える、人としての信頼関係が一番大きいと思います
――そこは大切ですね。いま「1人でやってたから一緒にやれることが嬉しい」って仰いましたけど、特に去年ぐらいからEMI MARIAさんとかJASMINEさんとか、活発にいろんな人とコラボレーションしていて。それは自然にそうなったという感じですか、それとも意図的にいろんな人とやっていこうって思いがあって?
aimi かなり意図的でしたね。(昨年2月発表のEP)『Chosen One』を作ったとき、本当はフィーチャリングを入れたかったんですよ。でも当時の私のレベル感だったり人脈だったりでは、フィーチャリングを迎えるのがちょっと難しかったんですよね。なので、誰かとコラボするんだったら、もう最初から「一緒に作ろうよ」って、ゼロからスタートするほうが自然な形で最後までいけるのかもなって。単純にデータを送り合ってヴァース入れてみたいなことじゃなくて、もう少し密に関わったほうがいいかもって思ったところがコラボを始めたきっかけで。
aimi あともう一つ大きかったのは、日本のR&Bシーンみたいものが輪郭を失っている今、コラボレーションっていうのが一番わかりやすいというか。「あそことあそこが一緒で、これがR&Bか」みたいにアイデンティファイしやすいから、コラボレーションをたくさんすることが、そういう意味での貢献になるかなって思った部分もありました。
――まさに日本のR&Bシーンにコミットする側になりましたが、シーンをどういうふうに見ていますか?
aimi 日本のR&Bシーンは……一時のピークを越えて、下降線をたどっているっていうのは間違いない。音楽が音楽を越えられなかったジャンルというか。ヒップホップって、すごくカルチャーがあったり、コミュニティだったり、ファッションもそうですけど、音楽以上のものになったと思うんですよね。みんなの趣味とか人生の一部になったと思うんです。でも、R&Bってそうはなりきれなかったような気がしていて。あくまで音楽における音のひとつの要素に留まっているというか、「シティポップの中にR&Bってあるよね」って言われてしまうような、サウンド的な要素になっちゃった。それがちょっと寂しいなって思ってます。(1/3 P2はこちら)
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