早稲田大の研究チーム、アニメーション生成AI技術を開発 初心者でもプロレベルに
#AI #鷲尾香一
やがて人間の仕事の4割から6割はAI(人工知能)に取って代わられる。AIの急速な進化が大きな話題となっている。そんな中、陸先端科学技術大学院大学と早稲田大学の研究チームは8月2日、初心者でもプロレベルのアニメーション画を作成できる生成AI技術を開発したと発表した。
https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/08/02-1.html
すでに、大学や企業では生成AIのChatGPTが活用され始めている。ただ、大学などでは学生自らが勉強することなく、レポートなどをChatGPTで作成するという問題も指摘されている。
当初はAIが発達しても、人間の想像力や感性が芸術作品などは、抽象的な性質があるため、専門的な勉強による知識や経験が必要で、AIには肩代わりできないと考えられていたが、すでに音楽の分野では鼻歌レベルのメロディを楽譜に落とし込めるようになっている。
アニメーションの分野でもAIを活用することで、ラフなスケッチ画から高品質なアニメ画を自動生成する方法が研究されてきた。しかし、初心者が描くラフなスケッチでは、アニメ画の完成図を予測するための情報が不足しているため困難だった。
そこで、研究チームはアニメ画の制作過程での線の描き方をシミュレートし、ラフなスケッチから高品質なアニメ画を生成する新たな生成AI技術の開発を試みた。
まず、線の描き方(ストローク)によって、生成AIの出力結果をコントロールするために、画像生成AIの「StyleGAN」を利用した。StyleGANは画像細部の特徴および潜在空間の非線形変換を利用することで高精度な画像の生成を可能としている。
このStyleGANに学習させた画像の特徴量が分布している低次元空間に、スケッチのストローク情報とアニメ画の輪郭線(黒線)に関連づける技術「stroke-leveldisentanglement」を新たに考案した。
これにより、初心者でもストロークを描くだけでアニメ画の局所的な輪郭線特性と自動マッチングさせ、アニメ画の一致性に大きく関与できるようになった。さらに、教師なし学習フレームワークを導入することで、「色」「形」「大きさ」などを切り離すことで、何かを変えても、他の要素は変化しないようにした。
そして、事前訓練されたアニメ画の生成AIを基にさまざまな訓練を行うことで、初心者が絵を描く途中段階であっても、表現に合致しつつ、高品質な画像を安定的に生成することが可能となった。
その上で、生成AI技術を検証するためアニメ肖像画の制作インターフェース「AniFaceDrawing」を開発し、その有用性を評価した。評価は15名の大学院生が行い、アニメスタイルの肖像画を自由に制作してもらった。その結果、アニメ画生成AIは高く評価された。
この研究成果は、8月6日から10日に米国のロサンゼルスで開催したコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術のカンファレンス「ACMSIGGRAPH2023」で発表された。また、論文は7月23日にACMDigitalLibraryで公開された。
このアニメ画生成AIでは、初心者でもラフなスケッチから高品質なアニメ画を生成することが可能となり、また、スケッチの描き順に依存せず、制作プロセス全体で一貫して高品質なアニメ画を生成できることが確認できた。
研究チームは、「長期的には、研究結果が生成AI技術の普及に貢献し、ユーザの創造的活動を支援することで、身体性に紐づけされたスキルの障壁をなくし、人間の創造的能力を最大限に拡張することが期待される」としている。
アニメ画を描くという才能は、誰にでもあるものではない。しかし、アニメ画を描くことをAIが肩代わりすることで、ストーリーを創造する能力があれば、誰にでもアニメを作ることができるようになるかもしれない。いや、ストーリーでさえもAIが考え、すべてをAIが作ったアニメが大ヒットする時代が来るのかもしれない。
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