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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > ザコシ「R-1はウケがすべて」
ハリウッドザコシショウはなぜライブを続けるのか?①

「R-1はウケがすべて」ザコシショウが評価するピン芸とは

 NSC時代は中川家、陣内智則、ケンドーコバヤシなど錚々たる顔ぶれとともに学び、しかしそこから現在に至る過程は、同期たちとは全く異なる茨の道だった。ハリウッドザコシショウ。バラエティで唯一無二の存在感を示しつつ、SMA芸人たちの師匠として多くの若手に檄を飛ばすザコシショウにあらためて聞きたい、ザコシショウの笑いの原点とピン芸人の在り方について。

R-1はウケがすべて ザコシショウが評価するピン芸とはの画像1
写真/アレンジ|二瓶彩(以下同)

ーーザコシショウさんはどんな子供時代を過ごされたんでしょうか。

ザコシショウ:小学校1~2年は根暗でした。根暗根暗の大根暗だったので、絵を描いたり、女の子に「髪の毛とかさせてよー」みたいなことをしていたりと、女の子と遊ぶことが多かったです。内気なものですから。それを見た男子生徒が「なんで女ばっかと遊んでるんだ」といじめてくるんです。

 そこで3年のクラス変えの時に、寒いんですけど前に出て調子乗りみたいなことをするようになりました。でもそれも寒くなって、5~6年くらいに(人を)茶化す方に回ったという感じです。

ーー芸能人のモノマネとかしていたんですか?

ザコシショウ:いや、主に先生の真似です。特に何もなく、前に出てびゃーっとやるだけです。

ーー内気な少年には勇気がいる行為ですよね。

ザコシショウ:いや勇気もなにも、(気になるのは)最初だけです。最初はみんなやらないから、先陣を切っちゃうんです。まずは友達を作って「あいつ〇〇だよなー」なんていって、「じゃあ先生のケツ叩いてくるかー」みたいなところから始めたのかもしれないです。

ーー笑ってもらうのが楽しいという感覚はそこから芽生え始めたと。

ザコシショウ:そうです。

ーーどんなテレビ番組に影響を受けましたか?

ザコシショウ:普通のバラエティ番組を見ていました。ひょうきん族やドリフ、ダウンタウンさん、ウッチャンナンチャンさんと一通り見てから深夜番組のエロいものを見始めて、その終わりくらいに竹中直人さんの番組を見るようになりました。『東京イエローページ』(TBS系・1990年に終了)という番組が僕は一番好きです。

ーー竹中さんが公園のセミをナンに包んで食べるやつでしょうか。

ザコシショウ:それは『恋のバカンス』(テレビ朝日系・95年に終了)です。セミおじさん。

ーー最近はネタに関して「こういう構成だからここで笑いが生まれる」など分析する人をよく見かけますが、一方ザコシショウさんの笑いはテキストにしづらく、まだ解明が進んでいないと思うんです。今日はザコシショウさんのお笑いの「原点」が知りたくて参りました。

ザコシショウ:そんな大したものはないです。まあ誰も解明しようと思いませんよね(笑)。擬音もいっぱいですから、文字起こしする人もいないでしょうし。でもお笑いのノウハウは原始的なもので、普通のモノマネの時には最低限のものを取り入れています。たとえば、普通のザキヤマといえば“来る~”をまずやる。その後の「誇張しすぎると~」はボケになります。つまり、普通のモノマネと誇張しすぎたモノマネで、フリとボケをやっているんです。

ーーお笑いのセオリーにきちんと乗っかりながら、オリジナリティを出している。

ザコシショウ:昔はそういうのまったくわからなかったんですけど。当時は「誇張しすぎた古畑任三郎」というでもなく、「古畑任三郎漫談」というタイトルで古畑っぽい曲流して古畑っぽいオーバーなモノマネをして「ハンマーカンマー」って。あの頃は自分が誇張をやりたいからそれだけをやっていたんです。でも見る人によっては「?」だけにしかならなかった。まぁ、フリもやっていないから、比較対象がないので当然ですよね。ただ変わり者が舞台に出てくるっていう状況ですから。

 でも比較対象があれば笑いが取れるんです。「全然ちゃうやないかい!」という笑いが。当時は古畑漫談といってただ発展形の姿ばかり見せていたので、見るに堪えない状態だったと思います。それを3分間もやっていたので、もうギブアップですよお客さんは(笑)。

R-1はウケがすべて ザコシショウが評価するピン芸とはの画像2

ーーお客さんに伝わるように比較対象を入れよう、と考えたきっかけは?

ザコシショウ:最初は漫談のネタがメインだったんです。単独ライブのコーナーの一つとして「ものまね50連発」という名目でマニアックなモノマネをしていて、それがモノマネ30連発になり、毎年やるようになりました。すると本ネタの「〇〇漫談」よりもモノマネのほうがウケるようになった。身近なものやマニアックなものなど多種多様な30個以上のボケがあるので「知らない」というモノマネがあっても次に知ってるモノマネが出てくればリカバリーができるんです。

 一方漫談は「古畑がこういう漫談をしたら~」というもしもコントなので、古畑を知らないという人にはもうわからないネタです。わからない人を置いてけぼりにしてしまいます。

 昔、G☆MENSというコンビでコントをやっていたときに、下手くそでコントが伝わらないから、ショートコントの題名で全部筋書きを言ってしまおうと。ある時に「円楽、笑いすぎて爆発コント」というタイトルでショートコントにしたんです。すると、やることは変わらないのに、「コント・笑点」といってコントをやるのと「円楽、笑いすぎて爆発コント」といってやるのとではウケ方がえらい違うことがわかった。「まんまじゃねぇかよ」という意見もあるんですけど、現にやってみて、こっちの方がシュールですが笑いが起きるんです。

 笑点といって同じネタをすると「なにこれ」という疑問が残りやすいんですが、先に筋書きを言うことで、初めて見る方でも「円楽が出てきて笑いすぎて爆発するんだな」というのは理解できるようになるんです。つまり、理解できないという人をなくそうということなんです。

ーーなるほど。

ザコシショウ:G☆MENSというのはそういうネタばかりをやっていたんですけど、シュールで伝わりづらくて、キングオブコントがやっていない時期に解散したんです。ただキングオブコントにG☆MENSがいけたかというとそうではないと思います。なぜならキングオブコントはリアルな大会であり、リアルなコントの設定だからです。なので、G☆MENSのようなコントをやっても無理なんです。

 でも僕は今コントではなくモノマネをやっているので、マニアックなモノマネをするのも良いですけど、G☆MENS時代のそれを少しでもエッセンスにして、やってることを全部言ってしまえばいいんじゃないかと思いまして。

ーーたとえば、どんなモノマネですか?

ザコシショウ:一番最初はトシちゃんの「やりつくされた田原俊彦のものまねをする」というのを、モノマネ30連発のなかの1個としてやりました。今更トシちゃんのモノマネを普通にやると恥ずかしいんですけど、「あえてやる」と言うことで恥ずかしくなくなるんです。

 それでこのパッケージはいけるな、と思って、そこからやり始めるようになりました。しかしいまいち誇張モノマネが伝わりにくいと。なので「誇張の田原俊彦」から「誇張しすぎた田原俊彦」というタイトルに変えてみました。

 結局はG☆MENSがルーツにあって、「円楽、笑いすぎて爆発コント」の発想から繋がっているんです。まずは普通のモノマネをして、その後「でも誇張するとこんな感じで変になっちゃうよ」という比較を出せば、「なんでそうなるねん」と笑いが起きるんです。それが僕にとっては良いパッケージになるなと思いました。

ーーその比較を生かすためには、最初にする普通のモノマネの方はきちんと寄せてることが大事だと。「もっと似てるモノマネがくるのかと思いきや全然似てないやつきた」という笑いが起きると。

ザコシショウ:大事です。前後のモノマネが全然違っても成立するパッケージなんです。

ーーそれは大発見ですね!

ザコシショウ:ピン芸人ってこういうシステム大発見を1個でもすれば売れるんです。たとえば(レイザーラモン)RGだったらあるある、くっきーだったら絵描き歌みたいな。

ーー一年前のサイゾーインタビューを拝見すると「売れるのは簡単だった」とおっしゃられていましたね。

ザコシショウ:今思えば簡単ですけど、そのためのシステムを発見するまでが大変です。

 前も言ったかもしれませんが「ギャグやります」といって誇張モノマネをやるのと、「モノマネやります」といって誇張モノマネをやるのとでは違うんです。ギャグというのは基本的に若い子しかわからないもので、老若男女に伝わるものではないです。でもモノマネは似てる、似てないかの判断になるので、老若男女誰もがわかるんです。「そんなのなる?」「似てないよ」の判断で理解ができるので。

 なのでYes!アキトくんとかもったいないんです。ギャグの羅列がダメな理由はここにあると思います。

ーーギャグの羅列はダメ。

ザコシショウ:R-1の時にYes!アキトに「ギャグの羅列は評価に値しない」と言ったのですが、それを鵜呑みにして彼は次の年にコントに変えてきました。でも僕は変えろというつもりで言ったわけではなかったんです。

 たとえば、ファイナルがYes!アキトと吉住の二者になったとします。笑いの量がほぼ一緒だった場合、次の判断材料はネタの質となり、ネタの質が良い方が選ばれる。突き抜けた笑いがあればそれで良いのですが、自分の中で乗り気ではないコントをギャグでつないでいるような設定はギャガーにとって邪魔なんです。なので僕、余計なことを言っちゃったなと思ってます。

ーーそれは実際にR-1の審査員をやられて、気付いたことなのでしょうか。

ザコシショウ:僕が個人的な意見を出していいなら、キ●ガイみたいな芸人に点数をあげると思うんです。でもR-1に関してはウケがすべてだなと思ってます。なぜかというと、ピン芸には色んなジャンルがある中のR-1はいわば異種格闘技の大会であり、判断材料がウケしかないからです。

 フリップ芸あり、漫談あり、一人コントあり、ギャグもあり。本来ならばこれらを一緒くたにはできないんです。

 たとえば一人コントって、まず設定を観客たちに瞬時にわからせなければいけません。この設定を伝えるために30秒くらい使ってしまうものです。場合によっては30秒無音かもしれない。でも設定でわかったときに全部ひっくり返ってウケるようにもなります。設定をばらすことでウケが取れることができれば、十分に無音の30秒を回収することができます。しかし、それができなければ損なんです。

R-1はウケがすべて ザコシショウが評価するピン芸とはの画像3

ーー確かに、ギャグの羅列はつかみが早いけど、後半の爆発的な笑いには繋がらなさそうですね。

ザコシショウ:そうなんです。「お前ギャグの羅列やっててずるいなー」というなら、それをやればいいんです。裸がずるいというなら裸をやればいい。R-1は「お前はこういうのやれ」といわれるわけではなく、自分で好きなものを選んでできる場なんです。でも「一人コントだから笑いの量が少なくてもしょうがない」というのは違うんです。自由に選べる笑いのジャンルなんですから、一番得意なことをやって負けるというのは仕方がないことです。3分のなかで1秒もウケないところがないように仕上げてきてるわけですから。笑いの量を計算して作っているはずですから、笑えない30秒は意図した笑いのない30秒であって「設定で損をしている」というのは間違いです。

ーーウケの量には何も言い訳ができないからこそ、それが基準になるんですかね。

ザコシショウ:大切なのはウケの量+質です。

 僕、フリップ芸だけの人が嫌いなんです。というのも、フリップ芸を家で考えてきて、フリップ芸の文字だけを読んで笑いを取る人がいるじゃないですか。それって個人的に足りないと思うんです。芸人なんだから、フリップ芸で考えてきたことをステージで体現してほしいというか、そこで演じてほしいんです。フリップを読むだけなら声だけでいいですし。

ーー寺田寛明さんに言っていた「人間力」というのも、それでしょうか。

ザコシショウ:こたけ正義感と寺田くんどちらが面白かったかというと、僕はこたけ正義感の方が面白かったと思います。彼は「なんだよー」みたいな感情でやってるじゃないですか。

(プロフィール)
ハリウッドザコシショウ
1974年生まれ。静岡県出身。1992年に大阪NSCに11期生として入学し「G★MENS」として活動。同期は陣内智則、中川家、ケンドーコバヤシなど。2002年にコンビ解散、ピン芸人として活動を始める。「R-1ぐらんぷり2016」優勝。また「ドキュメンタル」(アマゾンプライム)では史上初のV3も達成。

9月17日(日)東京・四谷区民ホールで追加公演「尿尿ザコシの劇場版ションちゃんベンちゃんのチンちゃんボーちゃん」開催。同公演は配信視聴も可能。詳細はhttps://online-ticket.yoshimoto.co.jp/products/hollywood-zakoshisyoh-230917まで。

R-1はウケがすべて ザコシショウが評価するピン芸とはの画像4

また同日同所で自身レギュラーラジオ番組公開収録イベント「AuDee presents 逆襲ザコシのチョゲチョゲPARK SEASON2公開収録」も併せて開催。詳細はhttps://eplus.jp/hollywood-zakoshisyoh2023kouroku/まで。

さらに通販サイトROCKET-EXPRESSでは、ツアーオフィシャルグッズ販売中。
商品詳細は、https://www.rocket-exp.com/zakoshisyoh/でご確認を。

西澤千央(ライター)

1976年、神奈川県川崎市生まれ。フリーライター。「文春オンライン」『Quick Japan』などで連載中。ベイスターズファン

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Twitter:@chihiro_nishi

にしざわちひろ

最終更新:2023/09/05 07:00
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