KARAが復活「イモトのWi-Fi」CMが絶賛の嵐。起用した名物社長の手腕

　昨今のK-POPブームの創世記を支えたアイドルグループ「KARA」。2016年に惜しまれつつも解散した彼女たちだが、ここにきてCMにて“復活”。往年のヒット曲を替え歌にしたコマーシャルソングを歌唱しているのを目にした方も多いのではないだろうか。そのCMとは、海外用Wi-Fiルーターレンタルサービスとして知られる「イモトのWi-Fi」。今年8月初旬より放映されている。

「これまで商品名と同名のタレント（イモトアヤコ）を起用してきましたが、ここにきてKARAを復活させたのは、話題作りとして大成功。本CMのために、再レコーディングを行ったり、記者会見にてライブをさせたりとKARA側もかなり協力的です。コロナ明けで海外旅行が増えてくる時期ということで、出稿量も多くタクシーCMや駅・空港への巨大ポスターの掲出など、さまざまなメディアを“ジャック”しているかたちです」（広告代理店関係者）

　ネット上では、「2023年にまさかこんなものが見れるなんて本当に嬉しいし感動」「このキャスティングは天才すぎる」など絶賛の声があがっている。そんなCMの中で、イモトのWi-Fiシリーズにはおなじみの“あの人”も出演中だ。

「イモトのWi-Fiを手掛ける、エクスコムグローバル株式会社の西村社長です。約10年前からサービスを提供しているイモトのWi-Fiは競争相手が非常に多い業界ながら、わずかな期間で知名度を引き上げ、旅行者で知らぬ者はいないサービスに。大量のCM出稿や奇抜なキャスティングで“知名度を上げる”ことに長けた西村氏の手腕は“マーケティング界の寵児”として一躍表舞台立ちました」（前出・広告代理店関係者）

　2019年より西村氏がサービス提供を開始したのが、美容クリニックである「にしたんクリニック」。コロナウイルスが流行し始めたさなか、簡便にPCR検査が受けられる病院として、知名度をあげた。

「西村氏のうまいところは、自著で語っている通り“カッコいいよりもわかりやすいを狙え”という姿勢。にしたんクリニックのCMでは、郷ひろみと女性芸人の三時のヒロインを共演させた。広告業界からすれば、彼らが共演する理由づけがなく、ありえないキャスティングですが、西村氏の“ゴリ押し”で決まりました。結局のところ広告人気ランキングでも上位につけ『たん・たん・にしたん』というCMソングもTikTokなどで人気楽曲になるなど、そのセンスは脱帽です」（前出・広告代理店関係者）

　その後、「にしたんクリニック」は支援しているサッカーチームの「シント・トロイデン」を応援するグラビアアイドルグループ「シントトロイデンガールズ」を結成させるなど、マスコミネタには事欠かない。そんな西村氏の広告戦略に対し、広告業界ではとある社長の姿を重ねる者が多いという。

「猫用ペットフード『CIAOちゅ～る』を手掛ける稲葉敦央社長ですね。『CIAOちゅ～る』のCMは『ちゅ～る・ちゅ～る・CIAOちゅ～る』というCMソングとともに、視聴者から投稿された猫動画が数匹登場するというシンプルなものですが、だからこそ嫌味がない。西村社長にしても稲葉社長にしても、そのワンマンさゆえに、担当する広告代理店とともに進めてきた企画を放映直前でひっくり返すことやタレントのゴリ押しなども多いと聞きますが、裏を返せば彼らの個性が強烈に投影されたインパクトのあるCMができあがっているともいえるでしょう」（CMディレクター）

　手綱さばきが難しいものの広告出稿量が段違いのドル箱物件である「イモトのWi-Fi」や「にしたんクリニック」。次の事業にむけて各代理店が虎視眈々と狙っていることは想像にかたくない。

加藤マサキヨ（CMディレクター）

1988年生まれ。広告、IT業界に精通。週末はアイドル鑑賞で目を労り、サウナで汗を流す。

かとうまさきよ