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日本人の社畜化が進んでいる? 労働組合数は減少の一途 厚労省発表

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写真/Getty Imagesより

 日本の労働組合は、もはや労働争議を起こすことは非常に稀で、会社側の“御用組合”となっているのだろうか。厚生労働省が公表した2022年の「労使間の交渉等に関する実態調査」の結果によると、過去3年間で労働組合と会社との間で「労働争議があった」はわずか3.5%にとどまっている。

 日本の労働組合数は減少の一途をたどっている。02年には3万組合以上あった労働組合は、25年には2万5000組合を割り込み、22年には2万3046組合にまで減少した。02年から22年の20年間で、労働組合数が前年を上回った年は一度もなかった。

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 労働組合員数は、02年には108万人以上だったが、11年には100万人を割り込んだ。14年には98万4000人にまで減少したが、その後、増加に転じ、20年には101万人台まで回復したが、21年からは再び減少に転じている。

 このため、従業員に占める労働組合員の割合を示す推定組織率は、02年には20.2%だったが、22年は16.5%にまで低下している。

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 労働組合と組合員数の減少という数字の上でも弱体化が進む労働組合だが、その活動という点でも、弱体化が進んでいるようだ。

 ストライキなどの労働争議について見ると、過去3年間に「労働争議があった」は20年調査の2.7%よりは0.8ポイント増加しているものの、わずか3.5%にとどまっている。

 その理由(複数回答)では、「対立した案件がなかったため」が54.3%、次いで「対立した案件があったが話合いで解決したため」が38.1%、「対立した案件があったが労働争議に持ち込むほど重要性がなかったため」が11.7%となっている。

 もちろん、労働争議に発展するほどの労使間の対立があること自体が問題だが、50%以上が会社側と「対立した案件がなかった」と回答しているのは驚きだ。これは、果たして、従業員の要望を、会社側が簡単に認めているということなのだろうか。

 労働争議にまで至らなくとも、労使間での団体交渉が実施されたかを、過去3年間の状況を見ると、「団体交渉を行った」が68.2%、「団体交渉を行わなかった」が30.7%となっている。

 3割以上の労働組合が団体交渉すら行ってないのだ。現在の日本の企業は、労働組合が交渉を行う必要もないほど、従業員の要望を満たしている企業が多いのだろうか。

 この労使間の安定には、ある傾向が見て取れる。労使関係については、「安定的に維持されている」が51.9%、「おおむね安定的に維持されている」が37.6%と89.5%の労働組合が“安定的”と認識している。

「どちらともいえない」は7.1%、「やや不安定である」は1.5%、「不安定である」は1.0%しかない。

 ところが、安定的と認識している割合を従業員の企業規模別にみると、「5000人以上」が93.1%、「1000~4999人」が93.8%、「500~999人」が89.2%、企業規模が大きいほど割合が高い。

 労働組合の結成には、ある程度の従業員数が必要であり、労働組合があることは企業規模が大きいという側面を持つ。そして、大企業の労働組合ほど、会社側とは友好的ないわば“御用組合”的な性格が強いということだろう。

 事実、一部企業では労働組合の委員長や幹部になることが、社内での出世の一手段となっているところもある。

 雇用関係の中で、非正規労働者の割合が高くなっている現在、労働組合には正社員以外の労働者の雇用関係を守ることも重要な役割となっている。

 だが、過去1年間に正社員以外の労働者に関して使用者側と「話合いが持たれた」と回答した割合は49.4%だった。

 その具体的内容(複数回答)は、「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」が66.2%、次いで「同一労働同一賃金に関する事項」が55.2%などとなっている。

 つまり、正社員以外の労働者の労働条件や賃金には問題はないのか、もしくは、労働組合は正社員以外の労働者の労働条件や賃金には関心がないのか、いずれかだろうが、少なくとも前者ではないことは明らかだ。

 労働者の権利として法的に認められている労働組合が、労使関係において、その役割を十分に果たさなくなっていることは、日本の企業経営に歪みが生じていることの表れでもあろう。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2023/08/29 12:13
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