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自民党女性局の外遊バカンス騒動、松川るい議員の“子連れ視察”の問題点

自民党女性局の外遊バカンス騒動、松川るい議員の子連れ視察の問題点の画像1
国会議事堂(「Wikipedia」より)

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 本当に毎日毎日暑いですね。国内ではなんと北海道でも全域に「熱中症警戒アラート」が出されました。北見市で37.1度、隣の津別町で36.8度、札幌市で35度など、観測史上最高気温を更新中だそうです。びっくりしますよね。

今年の新語「外遊バカンス」

 この暑さですから、熱中症で亡くなられる方の報道も後を絶ちません。十分な休養と水分補給が第一ですが、このご時世ですからまとまった夏休みを取れない方も多いと思います。

 一方で、コロナ禍を受けて在宅ワークも一般的になり、ノマドやワーケーションといったオフィス以外で働くスタイルも注目されています。もちろん議員秘書たちにはそのような働き方は許されませんけどね。

 今年は国会閉会後に選挙や内閣改造のスケジュールが入らなかったので、永田町の住人たちは夏休みを取りやすかったです。とはいえ選挙区の議員たちは地元で盆踊りなど夏のイベントにせっせと顔を出しているので、休息になっているかというと微妙なところです。

 そして、この時期に「外遊」に出る議員もいます。「遊」には「遊軍」「遊撃手」などのように「一定の位置にとどまらないで機動的に動く意味もあるそうで、れっきとした業務なんですが、この夏は「外遊バカンス」という造語が登場しました。これはもう「業務という名の夏休み」ということですね。

 きっかけは「エッフェル塔前写真」でした。7月下旬に自民党女性局の議員ら38名が「研修」でフランスに行き、女性局長(当時)の松川るい参議院議員や、同局長代理の今井絵理子参議院議員らがエッフェル塔の前で撮った写真をSNSに投稿したことがきっかけで批判されて大炎上したのです。

 実際には「研修」は3泊5日のうちたったの6時間で、セーヌ川の豪華ディナークルーズやシャンゼリゼ通りでの自由行動時間などのほうが長かったことなども報じられています。自腹ならハイシーズンのパリに行ってシャンゼリゼでお買いものをしようが自由なんですが、松川議員の説明では、今回のツアーは「党費」も使われているそうです。党費には税金が原資の「政党交付金」も入っている可能性があるので、「税金の無駄遣い」と批判されたようです。

 今年の1月には、岸田文雄総理の長男で当時総理秘書官だった翔太郎氏が総理の欧州と北米5か国訪問に同行し、公用車でロンドンやパリの観光名所を巡り、おみやげを買ったことが批判されたことも思い出しました。

女性局が謝罪文掲示の事態に

 この外遊バカンス騒動、国会女子としては当初は「何が問題?」という感じでした。「外遊」は、諸外国との交流を深めるための大事な仕事です。今時は地球の裏側でもオンライン会議が可能ですが、やはり信頼関係を築くには直接会って、一緒に食事をしてコミュニケーションを取ることが必要です。また、国内でも自然災害の被災地などは直接現地を訪れて当事者の話を聞き、それを政策に反映させますよね。

 これに対して「エッフェル塔前の記念撮影」はいかにも物見遊山的でしたから、国民だけでなく自民党内でも問題になりました。女性局は公式サイトで「今般のフランス研修につきまして、不適切な情報発信等により国民の皆様、党員の皆様の信頼を損なう事態となりました。ここに国民の皆様にあらためてお詫びを申し上げます」とする謝罪文を出しています。

 また、かつての女性局長・三原じゅん子議員も、週刊新潮の取材に対して「“私なら(そんな)投稿しないな”と思います。国民感情、国民意識を考えれば、批判が起こるのは当然のことでしょう」とコメントしています。

 あとは松川議員の「子連れ視察」も問題になりましたが、議員が東大卒の外交官という経歴を考えると納得できます。欧米では地域によっては13歳以下の子どもを家で独りにするだけで「虐待」として逮捕されることもあるので、何日か家を空ける時は、子どもも連れて行きます。日本では違和感があるかもしれませんが、今の時代なら子連れ出張もありだと思います。

 ただし公私は分けるべきでした。視察団の38名の中に松川議員の小学生のお嬢さんの名前もあるそうです。自由時間はともかく研修中はベビーシッターを手配したり、知人宅に預けたりするもので、「視察団のメンバー」は申し開きは厳しいですよね。

 ところで、報道のように松川議員が大使館の職員にシッターの役割をさせていたのが事実なら問題ですが、他の議員のお子さんたちはどうされていたのでしょうか。「みんな自腹で子連れ」であれば、女性の働き方の新しい形を示す機会になったかもしれませんが、「松川議員だけ」というのが局長特権のように見えてしまったのかもしれませんね。

 松川議員は炎上を受けて女性局長を辞任されましたが、「これで幕引き?」と議員辞職を求める声も出てしまい、またまた炎上してしまいましたね。

「外遊」の重要性についてアナウンス必要かも

 この夏はフランス研修問題を受けて、週刊誌などで外遊に対する批判がいつもより多い気がしますが、本来はそんな呑気なものではないのです。これはもっと前から国会もきちんと情報開示しておくべきでしたね。

 国会閉会中は、国会議員は「委員派遣」として議院の了解を得て国内外の視察に公式に派遣されます。今年度は、委員派遣の予算額は海外で衆議院が約2億7000万円、参議院は約1億3000万円です。もちろん原資は税金ですから、大切に使って意義のあるものにしなければなりません。

 衆参の予算では基本的に往復の航空運賃と現地の移動の費用のみで、宿泊費と食事代は自腹です。委員派遣については日当が支給されますので、以前はそれでなんとかまかなえたようですが、今は円安なので厳しいですよね。

 ちなみに国会議員が飛行機のビジネスクラスや新幹線のグリーン車を使うのも批判がありますが、これは無駄遣いとは思いません。業務で行くのですから、現地できちんと仕事をして報告書を書き、帰国後も時差ボケに負けずにがんばれるように移動中に休息を取ることは重要です。委員派遣での国内外の視察については報告書を必ず書くようになっているので、開示すればいいと思います。秘書の仕事が増えるだけの気もしますけど……。

 岸田総理もアメリカで会談後に福島入りするなどタイトなスケジュールの上に、女性局のほか原発処理水の海洋放出からマイナ保険証まで批判にさらされていますからお疲れですよね。メディアはもっと外遊の大切さを報道すべきですし、国民にも理解してほしいですが、生活が苦しいとそれどころではないですよね。

 この状況を打破するには、まずは景気を回復させることだと思います。そのためのハードルは高いですが、8月24日には令和6年度予算の各省庁の概算要求の内容が発表されました。内容についてしっかり議論していかなければなりません。神澤もがんばります。

経験20年以上の現役国会議員秘書

かみざわしま

最終更新:2023/08/26 19:00
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