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四谷大塚盗撮事件で厳しい目 保護者は知りたくない塾業界の内情

四谷大塚盗撮事件で学習塾に向けられる厳しい目 保護者は知りたくない塾業界の内情の画像1

 子供を持つ親はもちろん、そうでない人も怒りに打ち震えたに違いない。

 受験塾大手の四谷大塚で、講師の男が教え子の女子児童の下着を盗撮し、SNSに投稿していたことが発覚。さらに男は女子児童の自宅の住所を漏らし、「教え子の女児十数人を盗撮した」とも供述している。これを追うように23日には、三重県桑名市の学習塾に勤めていた元塾講師の男が、塾のトイレで盗撮した容疑で逮捕される事件が発生。塾講師の信用はすっかり地に落ちている。

 成績を上げるため、進学のため、学校の授業についていくため……塾に通う目的は様々だが、子供は放課後の自由な時間を潰し、親は家計をやりくりして月謝を捻出するという点では同じ。しかし、塾業界の内情を知れば、通わせるのをためらう人がいても不思議ではない。

大学卒業後、複数の塾に勤めた後に個人塾を開校したNさん(40代/男性)は、塾講師の問題点についてこう語る。

「最大の問題は、塾講師に資格が一切必要ないことです。講師になりたければ、履歴書を提出して筆記試験を受け、面接を経て採用される流れ。研修や模擬授業を課すところもありますが、いきなり現場に出されることも珍しくありません。

 就職試験のように何段階も面接があるわけではなく、結局は履歴書で学歴をチェックして、筆記試験で一通りの問題が解けるかどうかをチェックするのが関の山。学力の高さと教える能力は別ですが、どうしても学歴が高い方から採用されがちです」

 学校の教師になるには、大学で必要な授業の単位を取って教員免許を取り、教育実習に行き、採用試験を突破してと、いくつもの関門を超える必要があるが、塾講師になるハードルは決して高くない。また、多くの塾は人手が足りておらず、しばしばこんなことが起きるという。

「私の専門は数学ですが、しばらく勤務すると、塾から『他の科目も教えられない?』『中学生の英語ならイケるでしょ?』と、担当科目が増えるのはよくある話。そつなくこなすと担当はどんどん広くなり、気が付いたときには、どんな科目、どんな学年でもOKの“スーパー講師”の誕生です」(Nさん)

 小規模の塾ならまだしも、大手でもしばしば見られる光景だとか。また。こんな特徴もあるという。都内大手進学塾関係者のSさん(40代/男性)は言う。

「塾講師で正社員になるのは、学生時代にアルバイトをしてそのままズルズルと就職した人、大学院まで行ったのに就職口がなかった人、教員試験に落ちた人、資格試験浪人などが典型的なパターン。私も司法試験に落ち続けて塾講師をやったクチです。

教員をやっていたものの、“勉強だけ教える方がラク”“学校の教師は責任が重すぎる”という理由で塾に移ってくる人も少なくありません。みな、教えている内に楽しさややり甲斐に目覚めますが、第一志望で入ってくる人は少ない業界です」

 一方で気苦労も絶えないという。

「塾業界の特徴は、正社員よりアルバイトの方が学歴が高いこと。“塾講”は割の良いバイトなので、超難関大の学生だらけでした。子供は全く遠慮が無いので、平気で学歴を聞いてきますが、偏差値が低い大学だと陰口を叩かれたり、逆に名門大出身だと『何で塾講師になったの?』と言われることもあります。『彼女いないの?』とか『時給いくら?』とかもガンガン聞いてきますね」(Sさん)

 上述した四谷大塚の件は、関係者界隈でも大きな話題になっているとか。NさんもSさんも、身の回りでそういった類の不祥事は一切見聞きしたことはないが、教える側と教わる側の距離の近さは感じるという。

「本気で難関大学を目指す子が通う塾は規律も厳しく、講師も生徒も色々な面でしっかりしていますが、学校の授業についていけない子が通うような塾は、勉強を学ぶ場所というより放課後の居場所という側面が強く、“出会いの場”となっているような塾も中にはあります。個人塾や個別指導塾は親密な指導が売りですから、交際に発展しやすい側面があるのは否定できません」(Nさん)

「塾講師は大学生になれば出来るので、教え子が高校生なら年齢差は1~2才。学校の教師に告白したり、付き合ったりするのはなかなかハードルが高いですが、塾講師はあまり抵抗がないようで、教え子に告白されたという話はちょくちょく聞きます。生徒にしてみれば、告白してダメだったら塾を変えれば良いだけですしね。

 最近は『分からないところを聞く』といった名目でLINE交換するのがベタなパターン。生徒との連絡先交換は一般的に禁止ですが、完璧にシャットアウトするのは不可能です」(Sさん)

 ただ、盗撮は完全なる犯罪行為で、四谷大塚の件を塾業界全体にあてはめるのはあまりに乱暴だ。学習塾が学力向上に貢献しているのは明らかな事実。Nさんは、塾選びについてこうアドバイスする。

「ホームページを見れば合格実績や指導方針は分かりますし、塾を訪ねれば教室の雰囲気は掴めます。学校とは違うので、講師やカリキュラムが気に入らなければ、要望を出したり、講座を変えてもらったりすれば良い。塾は口コミが命で、気に入れば生徒が友達を引っ張ってきてくれる一方、ダメな噂もあっという間に広がるので、すぐに対応してくれるはずです」

 夏明けは塾通いを始める子が多い時期。おかしな講師がいたら、すぐに伝えられるような親子関係の構築も大切かもしれない。

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2023/08/25 20:00
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