米国で感染被害が相次ぐ「人食いバクテリア」の脅威…海水温上昇も影響か
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ニューヨーク州とその周辺で、「人食いバクテリア」に感染して住民が死亡するケースが相次いでいる。生ガキを食べたことや、手足に傷がありながら海に入ったことが原因とみられる。米国ではこれまで「人食いバクテリア」への感染といえば南部が主流だったが、北東部でも感染が多くなっており、「人食いバクテリア」の北上が米国を脅かしている。
ニューヨーク州とコネチカット州によると7月以降、両州で「ビブリオ・バルニフィカス」と呼ばれる「人食いバクテリア」に4人が感染し、そのうち3人が死亡した。両州は陸地で隣接するだけでなく、大西洋のロングアイランド湾を挟んで向かい合っており、感染源を探る上でもひとつの地域としてとらえられ、2州での感染は米国で大きなニュースとして取り上げられた。
死亡した3人のうち2人はコネチカット州の住民で、傷があるままロングアイランド湾に入って泳いだため感染したとみられる。2人は湾内の別の場所で遊泳していた。もう1人はロングアイランド湾に面したニューヨーク州のサフォーク郡の住民で、感染源については現在も調査中だ。
コネチカット州のもう1人の感染者は、州外でとれた生ガキを食べて感染したとみられ、病院に運ばれて治療を受けた。命に別状はなかったという。発表によると、コネチカット州の3人の年齢はいずれも60歳以上。コネチカット州内での「ビブリオ・バルニフィカス」の感染は3年ぶりだという。
2州以外のこの夏の感染では、フロリダ州タンパで5人が死亡している。フロリダ州内の今年の感染数は26件にのぼっている。
ノースカロライナ州では7月に3人が死亡した。州の月間での死亡者数で最多を記録した。3人はいずれも傷がありながら海に入っていたが、そのうちの1人は個人で捕獲した魚介類を食べたという。
専門機関によると「ビブリオ・バルニフィカス」は夏場の海中にいる細菌で、魚介類の生食や、手足などの傷口が海水に触れることで体内に侵入する。感染すると下痢や嘔吐、発熱、発疹、血圧低下などに見舞われる。
健康な人は軽い症状で済むが、肝臓病患や貧血で鉄剤を内服している人は症状が重くなり、死に至る危険がある。また、一般的に高齢者ほど感染リスクが高まるといわれる。細菌が血液に入り込んで全身に広がった場合、致死率は50~70%にもなるという。
この「人食いバクテリア」は1970年に米国で確認され、日本でも1975年以降、200以上の感染例があるという。米国の感染例は日本に比べて圧倒的に多く、米疾病対策センター(CDC)によると「人食いバクテリア」の感染は年間で8万人、死者は100人にのぼるという。米国の医療系ドラマでは「人食いバクテリア」への感染を疑う場面が頻繁に登場するが、日本と比べると生活により近い所に存在する感染症だからだ。
その「人食いバクテリア」に変化が起きている。テネシー州ナッシュビルにあるバンダービルト大学医学部のウイリアム・スカフナー医師はニューヨーク・タイムスのインタビューに「このバクテリアについての話は、15年前ならメキシコ湾沿いでの感染のことだった。今は感染が徐々に、東海岸を(北に)上がっている」と話している。
「人食いバクテリア」については、一般的にはジョージア州までは感染の危険があるといわれ、それより北は、比較的、安全だとされてきた。ノースカロライナ州で月間死亡者数が増えたことやニューヨーク州、コネチカット州での感染・死亡者の報告は、「人食いバクテリア」の北上を指し示すデータとなった。
地球温暖化が「人食いバクテリア」の北上に関係しているかどうか、科学的な証拠はないものの、海水の温度が高いところほど感染例が多いことは、既に分かっている。海水の上昇は海中の生物に大きなダメージを与えるが、「人食いバクテリア」に対しては、より生存しやすい環境を与えてしまっている。
米国では9月の第1月曜日は「レイバー・デー(労働者の日)」で国民の祝日だ。多くの地域ではこの日で夏が終わるとされ、去り行く夏を惜しむ市民が家族や友人らとビーチに押し寄せる。各地の保健当局は、例年以上に注意を呼び掛けている。
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