フットボールアワーがMC『るてんのんてる』の凄まじいカルトぶり、増加する実験的バラエティ
#フットボールアワー #関西バラエティ番組事件簿 #田辺ユウキ
読売テレビ(ytv)で毎週金曜深夜に放送されている『るてんのんてる』が凄まじいカルトぶりを発揮している。
2023年4月にスタートした同番組はフットボールアワーがMCを担当し、毎回、同局の25人の若手ディレクターたちが温めてきた渾身の企画を実験的に放送するというもの。ただその放送内容がカオスを極めている。関西ローカルのレギュラー番組でここまでヤバい番組は久々ではないだろうか。
「人生初モノマネ」の素人を集めて歌番組企画をやるヤバさ!
特に強烈だったのが、7月28日放送「芸人のバラエティを教えてもらおう!」の回だ。『徹子の部屋』をモデルにした架空のトーク番組を設定し、MCをつとめる音楽グループ・PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBEが、森本晋太郎(トンツカタン)、ニシダ(ラランド)、ガク(真空ジェシカ)を相手にトークを進行した。
途中、PSYCHIC FEVERのさらなるMC力向上のため、川原克己(天竺鼠)、伊藤幸司(ランジャタイ)、国崎和也(ランジャタイ)、川北茂澄(真空ジェシカ)が手本を見せるために登場。当然、このメンバーが揃えば手本どころか場が混乱するに決まっている。ただそれがこの企画の真の狙いで、森本、ニシダ、ガクがどのようにこの4名にツッコミを入れてコーナーを成立させていくかという、ボケ芸人とツッコミ芸人の「実力試し」へと発展したのだ。
ただ、そもそも『るてんのんてる』の番組の趣旨自体が「自由にやる」だ。そのため、ボケ芸人4人は制限が一切かけられない「野放し状態」に。なかでも川原は、トークMCとゲストの横にオペラ歌手を配置し、それぞれの発言をオペラ歌手が歌唱で代弁する内容で進行。一語一句だけではなく、話のテンションやトーンまでオペラで再現され、トークとオペラとツッコミの声があちこちから飛び交う「大渋滞状態」に。ガクは「ストレス、エグい」とツッコミを超えた本音がぽろり。観ているこちらはあまりのカオスぶりに爆笑がとまらなかった。
8月11日放送の企画「#見た目だけTV」は、岸本至生ディレクターのカオスな発想だけではなく「旬」をとらえた目の付けどころの良さが光った内容だった。
ジョニー志村がタモリのモノマネで『ミュージックステーション』風の歌番組を進行。そして演奏を披露するのも、修二と彰、小室哲哉×篠原涼子、哀川翔、マライア・キャリーらのモノマネの人たち。ただ、ミュージシャンのモノマネは、いわゆるソックリさんでもなんでもない。「人生初モノマネ」のモノマネ素人がただただ歌っているだけ。特に酷かった(=おもしろかった)のが篠原涼子。似せようとは一切せず、素人がテレビで自分の歌声を披露していただけなのだ。そういったステージだけで番組を埋めていくなんて、本当にどうかしている!
ただこれは、ジョニー志村のように細部まで再現する「ほぼ本人」なモノマネ芸が大流行していることと、素人によるまったくこだわりがないモノマネを対比させた絶妙な企画内容だった。
『るてんのんてる』ではこういった奇想天外なことが毎週放送されている。「これぞ深夜番組のノリ」だ。同番組ディレクターの一人である中屋敷亮ディレクターは、読売テレビのWEBメディア『読みテレ』に掲載されたインタビューのなかで、『るてんのんてる』に取り組むにあたって同局の『11PM』(1965年~1990年)、『EXテレビ』(1990年~1994年)などを見返したことを明かしている。
「大先輩の方が担当した『EXテレビ』で『低俗の限界』という企画がありまして、これなどはとんでもないなと思いましたね(笑)。上岡龍太郎さんと島田紳助さんがフツーにトークしているのですが、まぁスゴイです。その企画に限ったことではありませんが、先輩たちの番組を観ていると、我々はこういうものがやりたいんだ!っていう芯の部分があって、それがちゃんとエンタメに昇華されているんです。そういうところを見習って今回、僕も挑戦させていただきました」
現在、全国的にそういった挑戦的な番組が続々と制作されている。たとえば最近では、7月8日放送『バカリズムの欲望喫茶』(テレビ朝日系)が印象的だった。バカリズムいきつけの喫茶店という舞台設定のなか、ゲスト出演者たちがゲームなどを通して「名もなき欲望」を満たしていく内容。それぞれがオチを考えずに見切り発車でエピソードトークをし、どこにも披露できなかった話を「喋る」ということで満足感を得たり、突然かかってきた芸能人からの電話を自分の好きなタイミングでガチャ切りしたり。
「欲望を満たすこと」に着眼点を置いた実験的内容の数々に、ゲスト出演者の秋山竜次(ロバート)は「(企画者であるバカリズムは)すごい領域に行かれてますよ。何かの番組のひとブロックがこれなら分かるけど。(テレビの)電波を買われているんですか?」とお手上げ状態だった。
こういった実験的番組のムーブメントが起きている背景は、さまざまな理由が考えられるだろう。コンプライアンスなど現在の価値観に合わせながもテレビ番組として刺激を追求すること。視聴環境が、テレビからスマホ、リアルタイムから見逃し配信へと移行しつつあり、そういったデバイスやコンテンツも意識した内容を作ろうとしていること。TikTokなどのショート動画で切り抜きが配信されることを念頭におき、短時間でインパクトを残すビジュアル作りをすること。
なんにせよ「シンプルにおもしろいものを作りたい」という意欲という気持ちが、いずれの実験的番組からは感じられる。特に『るてんのんてる』は、「番組として大コケするかもしれないが、とにかくやってみよう」という威勢が伝わってくる。その点で「これをやること自体に意味がある」と思える番組となっている。
フット後藤のカバーアルバム『マカロワ』に絶賛 ツッコミ芸人と音楽活動の“好相性”
フットボールアワー・後藤輝基による5月11日発売のカバーアルバム『マカロワ』が名作であると、まことしやかに囁かれている。 本作のプロデュースを担当したのは藤井隆。そ...サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事