映画は紙メディア・イズ・デッド!? 価値があるのは表紙だけ…悲しみの映画業界座談会
#映画
エンタメ系ライター、メディア編集者、配給会社PRスタッフーー。それぞれの立場で映画業界を憂えたり嘆いたりしつつも、映画が大好きないい歳の男たちが集まって、キャッキャッと盛り上がりまくる映画座談会を今年6月に開催した。
高尚な映画論はゼロ! 匿名なので責任もゼロ! ビール片手にスマホをスクロールして目に留まったところだけ飛ばし読みしてくれれば全然OK!! 最新の注目映画の情報と合わせて、業界の生々しいだべりを堪能あれ……。
「クマブームきてます」
A氏:Cさんは楽しみな新作映画ありますか、今後でいうと。
C氏:私は本当に頭を空っぽにしてみるサマームービーとして、8月25日公開の『MEG ザ・モンスターズ2』とかですかね。今年公開された『ブラック・デーモン 絶体絶命』とか含めてサメ映画は引き続き人気ですね。
B氏:『ブラック・デーモン』も相当でかいサメですよね。
C氏:あれもメガロドンですよ。確か。
B氏:え、あれもメガロドンなの?
A氏:当たり前のように「メガロドン」って言ってますけど、言うほど皆知りませんからね(笑)。ティラノサウルスくらいの超メジャーな存在みたいに言っていますけど。
B氏:それ系で言ったら熊がコカイン食べて暴れる『コカイン・ベア』(9月29日公開)も、試写で見て良かったですね。タイトルと予告編から想像する以上のものは何もないけど、それだけ期待して観に行けば大満足なはず。
C氏:『コカイン・ベア』はTwitterで話題になっていましたね! “ラリックマ”とかイジられて。サイゾーさんの映画レーベル「エクストリーム」からは『プー あくまのくまさん』(公開済)もあったし、クマブームもきてるかも。
紙メディア・イズ・デッド
A氏:前回もちょっと話しましたけど、かつては映画宣伝会社の女性スタッフが色仕掛けでテレビ局などに作品を取り上げてもらうような営業は、さすがになくなってきましたかね。#MeToo機運や働き方改革もあって。
B氏:映画宣伝の方たちの働き方や待遇って、いくらか改善されてきました?
C氏:私は配給会社に勤めてますけど、いまだに労働環境が悪い他社の話も耳にしますよ。
B氏:ただ、出版も業務委託が多すぎですけどね。名刺は編集部だけど社員じゃないとか。
C氏:ただ、映画の配給・宣伝に関してはコロナ前は明け方まで働くようなことも確かにありましたが、コロナ禍でかなりの仕事がリモートで成立すると証明されて、働き方は急速に変わりました。
A氏:あの頃の激務は何だったのかって話ですが、より少ない労力で同じような効果を得られるようになったってことですね。
C氏:映画の宣伝会社って、配給会社に比べると少し立場が弱いイメージがあって、これまでは“配給会社が労働力使い放題!”みたいな状態になりがちでしたが、今は業務内容を事前にすり合わせることを徹底しています。結局、明朗会計にしないとお互いすり合わせができないし、その方が健全ですよね。
A氏: DX(デジタルトランスフォーメーション)化も含めて待遇改善が進んでいる会社とそうではない会社で、だいぶムラがありそうですね。
C氏:経営的にも明暗が分かれてくると思います。効果測定しやすいウェブに特化した会社は、もちろん苦労もあると思いますが、未来があります。紙媒体と電波(ラジオ・TV)は費用対効果のデータをとりづらいし、露出も確保しづらいとなると今後難しいところですね。
B氏:『紙媒体で価値があるのは表紙だけ』という話もよく聞くようになりました。中面はムリだけど、表紙なら広告扱いでお金が出せるってことなんでしょうね。
A氏:悲しすぎる……。
B氏:どの雑誌の部数や売上げを調べても寂しくなるような数字ばかりだし、広告の年間売り上げって10年前の10分の1ぐらいかも。
C氏:広告でとあるメディアに俳優を起用したウェブ記事をつくっていただいたんですが、100万円以上かけても見込み3万PVとかでした。
A氏:それはひどいな……。
B氏:しかもその数字でさえ盛ってる可能性もありますよ。いまウェブの記事広告もPVが取れなくて斜陽に向かっていますから。インフルエンサーにツイッター(現・X)でひと言ツイートしてもらったほうが、多くの目に触れて訴求力がありそう、というね。
「まごまごしている間に配信が始まる」
A氏:MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)みたいなシリーズものも、数が多すぎていよいよ視聴が追いつけない問題もありますよね。『アベンジャーズ/エンドゲーム』までは劇場版だけなら約20作見とけばOKでしたけど、Disney+のドラマシリーズが入ってきて、「もう追いつくの無理じゃん?」って。
C氏: MCUは『エンドゲーム』で卒業した気持ちになって、オチた人が大量にいますからね。その中でさらにドラマやって、映画につなげてって……。
A氏:逆効果ですよね。Wikipediaで過去作のあらすじを読んでも、いまいち思い出せないし。
B氏:宣伝のやり口として、「これ1本だけ観ても楽しめる」ってやるじゃないですか? でも、いざ観てみたらめっちゃ前作の続きみたいな。
A氏:あれ本当やめたほうがいい。
C氏:だから単体でのおもしろさが際立っている『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』とかは別ですけど、『アントマン』の続編とかもなかなか数字いかなくなっていますよ。Disney+で配信されるのも早くなってます。それはMCUに限らず言えることですが、早い作品は45日後に配信が始まりますからね。
A氏:早いなー。観に行こうか行くまいか、どうしようかなとまごまごしているうちに配信が始まるという。公開から何週間か後に観に行ったら、その翌週には契約してる定額制動画配信サービスで配信スタート、とかね。なんか損した気分。
C氏:動画配信サービスと興行の関係で言うと、配信会社が巨額を出してコンテンツを引っ張るビジネススキームは、映画業界にも浸透してきています。公開前から配信会社が高値で独占配信契約結んで、公開何カ月後に配信開始みたいなやつ。
A氏:配給宣伝的には「どうせお金が入るなら公開時は頑張らなくてもいいか」って気持ちになりそうなもんですけど。
C氏:でも、興行でヒットした場合は二次利用の企業が普通は出してこないような金額を提示してくるとこともありますから。
A氏:興収1億円だった場合は2億円、興収2億円なら3億円で買うみたいな? じゃあ頑張るか(笑)。
“オリジナル作品”が膨大すぎて、社員も把握できていない!?
B氏:赤字続きのNetflixがオリジナル作品の粗製濫造をやめて、厳選した良質な企画の作品をそれなりの制作本数でやっていくみたいなリリースを出しましたけど。最近その結果が現れてきているのか、Netflixオリジナルって一時期より控えめな気がします。昔はもっとエゲつない本数あったのに。
A氏:外からはわかりにくいですけど、一口にネトフリオリジナルと言っても座組はけっこうさまざまなんですよね。
B氏:でも、やっぱり届いていない作品は多いですよ。我々メディアどころか、配信会社の社内の人間にも届いていないっぽいです(笑)。
A氏:ある映画評論家がDisney+オリジナルのドラマシリーズ『一流シェフのファミリーレストラン』について、「これをちゃんと宣伝しないのは罪だろ」と言っていました。配信ビジネスって毎月の会費を払い続ける有料会員の数が勝負だから、新規会員を獲得するためにディズニーやピクサーやMCUの最新作や「スター・ウォーズ」シリーズの新作を宣伝はしても、既に会員になっている人に対して「こんな優良作品がありますよ」といった宣伝のリソースは割きたがらない。そりゃそうでしょうね。
B氏:『一流シェフのファミリーレストラン』については中の人も嘆いていましたよ。「良い作品ということはわかっているんですが……」って。
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