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映画座談会1

興収100億円か大爆死かの映画業界、映画のPR戦略はSNS時代にどう変わる?

興収100億円か大爆死かの映画業界、映画のPR戦略はSNS時代にどう変わる?の画像1
『スクリーム6』hulu 公式サイトより

 エンタメ系ライター、メディア編集者、配給会社PRスタッフーー。それぞれの立場で映画業界を憂いたり嘆いたりしつつも、映画が大好きないい歳の男たちが集まって、キャッキャッと盛り上がりまくる映画座談会を今年6月に開催した。

 高尚な映画論はゼロ! 匿名なので責任もゼロ! ビール片手にスマホをスクロールして目が止まったところだけ飛ばし読みしてくれれば全然OK!! 最新の注目映画の情報と合わせて、業界の生々しいだべりを堪能あれ……。

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A氏:さっそくですけど、まずはBさんの楽しみな新作トークから軽く始めていきましょうか。

B氏:本当にいきなりですね。いろいろあるんですけど、僕からは7月12日にブルーレイ+DVDが発売された『スクリーム6』と『SMILE_スマイル』、あと8月2日発売の『死霊のはらわた ライジング』の3本を推しますよ。どれもめちゃくちゃおもしろいのに劇場公開してくれない無念も込めて。

A氏:ぜんぶホラー映画(笑)? 『スクリーム6』っていつの間にって感じなんですけど。

B氏:スクリームは3~4本目で人気が下火になっていたんですが、去年、5作目にして急に息を吹き返したんですよね(笑)。『6』はその『5』を踏まえたつくりになっていておもしろいんですよ。もうワイルド・スピード方式みたいな感じです。

A氏:確かにワイスピも東京が舞台の『3』でそろそろ終わるかと思ったら、どんどん大作化していきましたけども……。僕はすでに公開中の作品ということで、是枝裕和監督の『怪物』ですかね。あと『ウーマン・トーキング 私たちの選択』も刺さりました。フェミズムが題材の映画って近年いっぱいありますけど、『ウーマン・トーキング』は数人の登場人物による限られた空間での会話劇がメイン。舞台演劇でも成立するような話ですが、撮り方と役者の芝居でここまで見せられるのかと。

B氏:『死霊のはらわた ライジング』も家族がマンションの一室であーだこーだやっているだけですが全然90分保ちますよ!?

興収が二極化している劇場映画

A氏:2022年の劇場公開作品を見ると、興収100億円を達成した映画が4本。ここ最近でも『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や『THE FIRST SLAM DUNK』といったヒット作が生まれた一方、当たらないものはとことん当たらない。“100億円or大爆死”とも言える二極化傾向が強まっていますね。

C氏:ベスト10に、邦画とアニメが席巻することが常態化していて、コロナ禍を経て洋画の立ち位置は厳しくなっていますね。『トップガン マーヴェリック』のようなスター出演作や、大規模予算の映画は100億円規模の興行が成し遂げられますが、とくにインディペンデント系はしんどいです。

A氏:そもそもスラダン、新海誠、名探偵コナンってどんな映画かわかった状態で行く映画じゃないですか? 反論もあるでしょうけど。スーパーマリオなんか最たるもので、映像の中に入っていてほしいゲームのシチュエーションやキャラを抜け漏れなく入れて、1ミリも物議を醸さないつくりです。結局、そういう作品しか幅広い層には届かない。あるいは、二極化によって「興収1億レベルの映画がヒットして3億いった」みたいなことが徐々に起こりにくい状況だと、PR的にはちょっとやる気なくすのでは(笑)?

C氏:頑張るには頑張るけど、より難しさを感じますね。ただ、そんな中でも『RRR』とかインディペンデントの配給さんでも20億円までいっちゃうケースもあるし、少し前だと『LAMB/ラム』も小規模公開ながら1.4億円までの興行を上げたみたいですし。

A氏:あのジャンルで1.4億は確かにすごいな、今の時代に。

B氏:『ラム』って意味わかんない映画ですもんね(笑)。

従来の映画宣伝の方法は通じにくくなっている?

C氏:『ラム』に関しては最初小さめに30館ぐらいで劇場を溢れ返らせて、最終的に70館ぐらいまで膨らませるという、映画興行の理想的な動き方をしていましたね。

A氏:映画館に足を運んでもらうための事前情報の出し方が変わってきているような。キャストのメディア露出や派手なイベントといった従来の映画宣伝って、難しくなってきてるんですかね。

B氏:僕もそれ感じていますね。配給宣伝側がマスコミに資料や画像を配る従来のやり方が通じなくなってきたというか。

A氏:スーパーマリオもストーリーについて語るような作品じゃないと思うし、スラムダンクも別にストーリーで興味を引く作品ではないですもんね。みんな湘北が勝つことを知っているという意味では。

B氏:まあ、僕は知らなかったけど(笑)。

A氏:あ、すみません……。でも四半世紀前に連載が終わっているマンガの映画ですから(笑)。

B氏:宮崎駿の『君たちはどう生きるか』も場面写真を1枚も出さなかったことはずっと話題でした。鳥みたいなイラストが出ていただけで。

A氏:本来は宣伝がしにくい作品がSNSなどでクリティカルな話題となって、流行のタイミングで多くの人がわざわざ劇場へ足を運んでいるんですよね。そうなってくると今後、映画ライターや映画評論家って宣伝PRの場で必要とされるのかな?とか考えちゃうんですけど。

C氏:特にスラダンはひたすら隠す宣伝戦略が顕著になったことが功を奏したと思うんですが、やっぱり作品によりますよね。作家性の強い作品は時代背景など前情報として必要な情報やポイントを補完してくれる人は絶対必要です。個人的には評論家を育てる土壌がない日本の現状を危惧しているくらい。

B氏:欧米では映画評論家という職業が今なお成り立っているみたいですけど。

A氏:もともと向こうは新聞・雑誌でのショービジネスの評論に歴史的な権威がありますからね。日本もあるっちゃあるけど、欧米とは文化の根差し方が違うし、ライターの立場からすると映画の原稿料は安すぎて食えないという。

コロナ前後でSNS重視が加速

A氏:現実問題、限られた宣伝リソースを傾ける先もSNSにかなり寄っているのでは?

C氏:それは確実にそうですね。

A氏:ビジネス的にはコアな映画ファンを切り捨ててでも、ほっといたらまず劇場へ来ない潜在層へ訴求していくほうが効率的ですもんね……。

C氏:コロナ前後でもだいぶ違うんですけど、紙だけでなくてテレビも含めてマスメディアの力が効かなくなって、やっぱりみんなスマホ・SNSに移行しています。

B氏:今やパンフレットを作らない作品も増えましたよね。とくに洋画のメジャー作品とかは紙媒体にお金を使うなみたい感じで。

A氏:主演俳優が朝から晩まで番組に出まくる局ジャックみたいなことも、だいぶ減りました。

B氏:もっと昔は宣伝の女性がテレビ局の偉い人と深い関係になって宣伝の枠もらうとかね。僕も話しか聞いたことないですけど、映画宣伝会社が炎上した件があったじゃないですか。採用目的の真意ははかりかねますが、求人ページに「水商売経験の女性優先」みたいなこと記載して。

A氏:実際に寝たかどうかなんてわかんないですけど、若い映画配給会社や映画宣伝会社の女性社員が偉い人と2人でごはんに行くとかは、普通にありましたね。

C氏:女性をメインで採る会社とかあって、あれも怖いなと。

A氏:つい2、3年前にもちょっと聞きました。バブル世代の強めの女性ボスが大手から独立して開いた小さい配給会社で、「もっと若さを使え」「シャツの胸元ボタンもう1つ開けたら?」みたいなノリで若手の女性社員に接していたら、辞めちゃったって。

C氏:いつの時代だよ! かわいそうに……。

黒崎さとし(編集者・ライター)

1983年、茨城県生まれ。ライター・編集者。普段は某エンタメ企業に勤務してます。

Twitter:@kurosakisatoshi

くろさきさとし

最終更新:2023/08/24 12:00
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