「少年たちはこうして巻き込まれた」警察庁、闇バイトの実態を発表
#鷲尾香一
高額報酬の見返りに、見ず知らずの他人が犯罪に加担する“闇バイト”が横行している。警察庁は7月27日、少年が闇バイトへの応募をきっかけに犯行グループに使い捨てにされた挙げ句、検挙されるまでの実態等について取りまとめた「犯罪実行者募集の実態」を公表した。
https://www.npa.go.jp/news/release/2023/20230725001.html
これは、闇バイトの応募から検挙までを実例に基づいてまとめたもので、警察庁では、闇バイトの募集は、犯罪実行役の募集にほかならず、実態は犯行グループが切り捨て要員の実行役を手広く募集するものだと指摘している。
また、犯行グループは約束の報酬を元から支払うつもりはなく、少年を都合よく利用した後、簡単に「捨て駒」として切り捨て、さらに、犯行グループは入手した個人情報を基に、少年を執拗に脅迫し、恐怖心を植えつけることで、少年が犯罪への加担を断ったり、犯行グループから離脱したりすることを阻止し、少年の家族を脅すケースもあると述べている。
では、闇バイトは具体的にどのように行われているのか。闇バイトの募集から検挙までの流れを見ていこう。
まず、闇バイトの募集では、少年たちが自ら闇バイトに応募し、犯罪行為に加担するケースが多い。そのパターンで最も多く見られる基本的なパターンは、
①自らSNSで「高額報酬」等を検索・応募
②犯行グループから連絡が入り、以降、匿名性の高いアプリでやりとり
③犯行グループに言われるがまま個人情報を送信
④犯罪行為への加担を拒否すれば犯行グループが個人情報を基に脅迫
という流れだ。
また、自ら応募する以外にも「先輩・友人に誘われた」といったものが一定数あり、少年が闇バイトに応募するきっかけの特徴の1つとなっている。
闇バイトに応募すると、犯行グループは少年たちに一定時間が経過すると通信履歴が消去されるなどの機能を有する匿名性の高いアプリを強制的にインストールさせ、その後のやりとりはこのアプリを使って行うよう指示する。
闇バイトに関するやりとりの中では「アルバイトをするための登録情報として必要」などと言葉巧みに個人情報を要求され、少年たちは言われまま、身分証明書などの写真をアプリで送信してしまう。
個人情報の要求では、犯人グループは少年自身の情報だけではなく、中には以下のようなケースもあった。
①住所だけでなく、家族構成や名前、勤務先等まで聞かれて伝えてしまった
②交際相手のことを聞かれ、彼女の名前や生年月日、顔写真を送信してしまった。
③自分が住んでいるマンションの入口から部屋までの道のりを動画撮影するよう指示され、送信させられた。
④報酬を振り込むために必要と言われ、銀行名、名義、口座番号を伝えてしまった
犯人グループは、こうして個人情報を手に入れると、詳細な仕事の内容を伝える。その仕事内容が犯罪行為であることが明らかになり、少年たちが加担を拒否しようとすると、犯行グループは入手した個人情報を基に少年たちが犯罪行為に加担するまで執拗に脅迫する。
その脅迫行為は、「逃げたらこうなる」と男が殴られる動画が届いたり、中には、少年本人だけではなく、実父へ電話した後に、実家に押し掛けられたケースもあった。
実際の犯行では、特殊詐欺の「受け子」としてキャリーケースを持って全国を転々とさせられたケースや、逮捕されるまで家にも帰れず、ホテルや漫画喫茶に寝泊まりしながら犯行を続けていたケースもあった。
こうして犯行に加担しても、闇バイトの場合には、報酬が支払われるケースはほとんどないと言う。それどころか、少年たちを切り捨てるために、犯行グループが密告し、少年たちが逮捕されるケースが多いという。
警察庁では、女子大生が闇バイトで犯罪行為に加担させられそうになった際に、女子大生が少年相談窓口に電話で助けを求めた結果、無事に発見・保護されたケースをあげ、勇気を持って警察に相談すれば、犯罪を未然に防ぐことができると呼びかけている。
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