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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 夏ドラマ、中盤までの期待作とガッカリ作

『VIVANT』『ハヤブサ消防団』…今期一番の期待作は? 夏ドラマ序盤ランキング

ガッカリドラマ3位 『この素晴らしき世界』木曜22時~(フジテレビ系)

一番“ガッカリ”は『unknown』か『教場0』か? 春ドラマ序盤ランキングの画像4
『この素晴らしき世界』ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
浜岡妙子(若村麻由美)は年上の夫と息子と暮らす、どこにでもいる平凡な主婦。子育てとパートに追われながら、「お前は社会を知らない」と夫からは低く見られる日々。そんな中、妙子の前に西條隼人(時任勇気)と名乗る男が現れる。女優・若菜絹代(若村麻由美:二役)の事務所関係者だという西條は、若菜が週刊誌のスキャンダルがきっかけで国外へ失踪してしまったことを伝え、若菜と顔だけでなく声までもがそっくりな妙子にその身代わりとしてスキャンダルの謝罪会見に出席してほしいと頼む。突拍子もない内容に妙子は断るが、結局、西條らの説得と高額報酬につられ、若菜絹代になりきって会見に出席することになるのだが……。

 「思っていたのと違う」というのが今のところの印象か。どこにでもいる平凡な主婦が、顔も声もうり二つの大女優の身代わりになる「なりすましコメディ」のはずなのだが、大女優のフリをした主婦が芸能界で騒動を起こす――というわけでもなく、主人公・妙子(若村麻由美)以外のエピソードも多く描かれているため、どうにも「なりすましコメディ」の要素が薄く、ストーリーが散漫な印象だ。

 妙子の息子・あきら(中川翼)に学生起業家(永瀬莉子)が近づく、妙子のパート先の新人女子・育田(平祐奈)が元は男性だったなど、本筋とは無関係そうなエピソードが多数散りばめられているのがその最たる要因だが、あきらと育田が友人だったり、妙子のパート友達(猫背椿)の夫( 佐戸井けん太)が、若菜絹代の事務所の過重労働問題にかかわる弁護士だったりと、何かしらリンクしており、一見無関係そうなエピソードがすべてひとつの話につながるという展開が期待される。……期待されるのだが、はたしてどこまで信頼できるものか。若菜絹代の夫・夏雄(沢村一樹)の怪しげなクーラーボックスを意味深に映したり、それを真夜中に埋める場面があったりと、夏雄が絹代を殺したのではないかと思わせる展開が途中で挟まれ、「ひょっとして日常系コメディに思わせてサスペンス展開があるのか?」とも期待させたが、これがただのミスリードで、非常にガッカリさせられた。無論、主題歌が小田和正の時点でサスペンスになる可能性は低かったのだが……。

 回を追うごとにツッコミどころが増えていく坂口健太郎主演の日本テレビ系日曜ドラマ『CODE-願いの代償-』とどちらをガッカリドラマ3位にするか迷ったが……。『この素晴らしき世界』はもとは鈴木京香が主演予定で、脚本家の正体が謎に包まれていることもあり、それなりに期待していたのだが、前述のようなミスリードを数話かけて引っ張る残念展開、“伏線”的なエピソードを散らばらせすぎて物語の推進力に欠けることから、こちらを3位とする。それでも最後のどんでん返しがあることに期待したい。

ガッカリドラマ2位 『真夏のシンデレラ』月曜21時~(フジテレビ系)

一番“ガッカリ”は『unknown』か『教場0』か? 春ドラマ序盤ランキングの画像5
『真夏のシンデレラ』公式サイトより

〈あらすじ〉
蒼井夏海(森七菜)は、海の町で生まれ育った明るく真っ直ぐで負けん気が強い性格。父親、弟との3人暮らしの夏海は、サップのインストラクターをする傍ら、父親が経営する食堂の運営と家事全般をこなしている。東京から遊びに来た水島健人(間宮祥太朗)、佐々木修(萩原利久)、山内守(白濱亜嵐)の3人は夏海の指導でサップを初体験するが、修の態度もあり、夏海は一流大卒のエリートだという3人に何となくバカにされたような気分に。そんな折、夏海は海辺の別荘で行われるパーティーに誘われる。そこにいたのはあの一流大卒の3人だった……。

 昨年のTBS系火曜ドラマ『君の花になる』は主人公の暴走ぶり、脈絡のない演出・展開など“民放のちむどんどん”とでも呼びたくなる作品だったが、この『真夏のシンデレラ』を“フジテレビのちむどんどん”と呼ぶのはさすがに言い過ぎとしても(湘南と都内の距離感の怪には“ちむみ”があるが)、本家『ちむどんどん』の時のような、「すごいものを目撃している」という衝撃度がある。そこに、「謝るのも童貞?」といった屈指の迷ゼリフも飛び出し、そういう意味では目が離せない作品ではあるが、それにしてもすごい。

 平成初期あたりのベタな青春夏ラブストーリーを意図的にリバイバルさせているようだが、『男女7人夏物語』から『ビーチボーイズ』『サマーヌード』などなどをなぞりながら、“金持ち男子と貧乏女子”の構図も盛り込んで魔合体させたことで、“ファンタジー湘南”を舞台にしたパラレルワールドの2023年ニッポンの物語になってしまうという、異世界ラブストーリーのような事態になってしまった。脚本家なのか、ドラマプロデューサーなのかはわからないが、“絶対神”の意向が強く働くため、雇われのサップトレーナーの身分のはずなのにひとりで都内にサップの展示会に行かされる森七菜の携帯電話は肝心なときに連絡したい相手と必ず連絡が取れないし、妙にやせ細った大工の神尾楓珠は桜井ユキのことが好きなはずなのにいちいち森七菜を振り回す。ご丁寧にも、女性ひとりに対し男性ふたりが関わる構図になっているが、森七菜(間宮祥太朗と神尾楓珠)と仁村紗和(水上恒司と森崎ウィン)はまださておき、白濱亜嵐と萩原利久が吉川愛に言い寄るパートにやや唐突感があったりと、登場人物をさばき切れていない印象も強い。現実離れしたセリフや展開に、キャストの演技もどこかコントじみて映ってしまう。

 ベタベタのはずが、どう展開するか読めないという妙な魔力を持ち合わせる『真夏のシンデレラ』。間宮祥太朗と神尾楓珠がタッグを組んで不良相手に大立ち回りを繰り広げる『ナンバMG5』オマージュすら期待してしまいたくもなる……という冗談はさておき、ツッコミが追いつかない怪作なのは確か。ネタドラマとしては大成功だろうが、はたしてこれでいいのだろうか。もともと期待度は低かったが、それ以上に「すごい」作品だったため、ガッカリドラマ2位とした。

ガッカリドラマ1位 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』火曜22時~(TBS系)

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『18/40~ふたりなら夢も恋も~』ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
2023年3月。18歳になった仲川有栖(福原遥)は、亡き母の影響で、美術館の学芸員となり、いつかは海外で活躍できるキュレーターになることを夢見て、大学に進学して一人暮らしをすることが決まっていた。だが、迎えた高校卒業の日、有栖は自分が予期せぬ妊娠をしていることを知る。一方、40歳を目前に控える成瀬瞳子(深田恭子)は、現代アートを扱う会社でアートとビジネスを繋ぐ仕事をする優秀なアートスペシャリストだが、恋愛からは10年遠ざかっていた。年の差が倍以上で生き方も立場も違う2人が偶然出会うことによってお互いの人生が大きく変わることに――。

 『真夏のシンデレラ』の陰に隠れがちだが、こちらもなかなかのトンデモドラマだ。18歳の高校生(福原遥)が交際相手との子を妊娠し、交際相手に逃げられてしまって中絶を考えるも、縁もゆかりもないまったく無関係の40歳会社員女性(深田恭子)が出産を強く勧め、自宅に住まわせる。演出次第でホラーに仕立てることもできそうなストーリーだ。一応、40歳女性=瞳子については、婚活・妊活に励もうというタイミングで子宮内膜症が発覚し、また「昔からおせっかい」という設定がセリフの中で説明されはするのだが、それにしても赤の他人の18歳=有栖の出産に執着しすぎの印象が強い。

 有栖が瞳子のもとに身を寄せたのは、母亡きあとシングルファーザーとして自分を育ててくれた父親(安田顕)に妊娠のことを言い出せなかったことも大きいが、父親の理解を得られた今、瞳子との共同生活を続ける必要はないはずなのに、なぜか実家に戻ることなく瞳子の家に住み続けており、その理由は説明されない。瞳子に出産・子育て経験があったならば、同性の瞳子の支援に甘えるのもまだ理解はできるところだが……。有栖の父親にとって、瞳子はただの娘のバイト先の上司(有栖は瞳子の勤め先が経営するカフェで働く)に過ぎないのに。

 「ふたりなら夢も恋も」というサブタイトルどおり、妊娠・出産によってキャリア形成を断念せざるをえない女性の状況に対し、「シスターフッド」によって乗り越えようとする姿を描くことで女性を応援したい作品なのだと思われるが、今のところ、金銭的に余裕がある瞳子の無私のサポートによって成り立っているだけで、「有栖は運がいい」という物語でしかない。しかも、有栖は美術関係のキュレーターになるという夢を持っており、アートスペシャリストとして活躍している瞳子に支援してもらえている状況は、夢を叶えるという面でも“幸運”だ。それゆえに、瞳子が勤め先の若手キュレーター育成企画に(才能があるとはいえ)独断で有栖を抜擢したことが外野からは「ねじこんだ」と見られるのは当然だし、有栖との関係に噂が立つのも仕方ないのだが、この設定・展開は必要だったのだろうか。瞳子が出産や子育てを助けるだけでなく、有栖のキャリア形成にまでも影響力を与える存在なのは、シスターフッドものとして余計なノイズになっている印象だ。これでは、有栖が自分にとって都合のいいパトロンを見つけて夢も子どもも手にしようとしているだけのように見えてしまう。有栖に言い寄る男子(鈴鹿央士)が実は瞳子が勤める会社の社長(髙嶋政宏)の御曹司だったという設定も、「有栖は運がいい」展開が待ち受けていることを容易に想像させてしまう。

 有栖は瞳子にこれだけお世話になっていながら、タメ口で失礼な口をきく。そこは「シスターフッド」な関係性を築いたがゆえだとしても、有栖の友人までもが瞳子にタメ口なのはちょっと常識がない。全体的に常識人が有栖の父親くらいしか見当たらないのも、本作の“トンデモ”感を強めているだろう。第5話で有栖は無事に出産したが、今後、瞳子との関係性をどう描き、そこにどう説得力を持たせるのか。それによって作品の評価は変わりそうだが、はたして。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2023/08/12 20:09
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