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声優・戸松遥が語った“フランス初のサメ映画”にかける想い「サメが鳴かない、ちゃんとしたサメの映画(笑)」

「サメが鳴かない、ちゃんとしたサメの映画(笑)」声優・戸松遥が語ったフランス初のサメ映画にかける想いの画像1
写真/Kyogo Hidaka(以下同)

世界的な記録的猛暑となっている2023年。だが、今年アツいのは気温だけではなく、夏にぴったりな“あのジャンル映画”も過剰な熱を帯びている。そう、それこそが「サメ映画」だ!

サメ映画は、1975年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』を皮切りに、『ディープブルー』(99年)や2018年公開の『MEG ザ・モンスター』など、“正統派”のパニック映画としてヒットを飛ばしてきた一方、最終的にタイムスリップして空から降り注ぐサメとチェーンソーで戦う『シャークネード』シリーズ(13年~18年)といった“トンデモB級おバカ映画”が数多く作られてきた。

『MEG ザ・モンスターズ2』といった大作サメ映画の公開も控える中、8月11日(金・祝)より全国順次公開されるのが映画『シャーク・ド・フランス』だ。“フランス初のサメ映画”という看板を掲げた本作は、フランスのリゾート地ラ・ポワントを舞台に、引退間近の女性海上警察官マジャがビーチに現れた人食いザメと対峙する物語で、名作『ジョーズ』へのオマージュもふんだんに盛り込まれている。

そんな『シャーク・ド・フランス』で、主人公・マジャの同僚ウジェニーの吹き替えを担当するのが、アニメ『ソードアート・オンライン』シリーズのアスナ役などで知られる人気声優の戸松遥だ。彼女はかねてより“サメ映画ファン”を公言しており、好事家たちによる「日本サメ映画学会」の一員でもある。

今回は『シャーク・ド・フランス』公開を記念して、本作の内容やサメ映画の魅力について、戸松に話を聞いた。

“フランス初のサメ映画”はサメ映画初心者にもオススメ

インタビュー開始時、日本サメ映画学会所属であることに触れると、彼女は思わず笑みをこぼした。「サメ映画」というジャンルは、ついつい笑ってしまうほどニッチで濃ゆい世界でもあるのだ(B級映画を愛する“午後ロー民”や、トンデモホラーが好きな“ニコ生ホラー民”との親和性も強い)。

――戸松さんは日本サメ映画学会所属ということで……笑っていますが大丈夫ですか?

戸松遥(以下、戸松) ふふふ、大丈夫です(笑)。

――気を取り直して(笑)、8月11日に公開される映画『シャーク・ド・フランス』はどういった作品でしょうか?

戸松 『ジョーズ』をリスペクトしてオマージュを入れながら、オリジナルで作られたサメ映画なんですけど、一言で言うとコメディーですね。全体的に「サメ映画」というと、スリルがあって少し怖いのかな? というイメージを持たれることが多いかと思います。ただ、私が見た印象だと『シャーク・ド・フランス』はサメが恐ろしくて怖いという要素もありつつ、会話の中でちょっとしたコントみたいなやり取りがあるギャグ・コメディ作品だと思います。登場人物がみんな真面目な顔してボケ倒すような会話劇が繰り広げられたり、視聴者がツッコミたくなるようなコントの要素があるんです。

――コメディ作品という捉え方なんですね。ただ、劇中にはサメに食いちぎられた体が映ったりと、少しグロテスクな描写もありますが?

戸松 それはもうサメ映画なので……。私の中では、『シャーク・ド・フランス』はサメ映画初心者でも見やすい作品だと思います。

サメ映画ってやっぱり血の描写が多いイメージがあると思うんです。サメ映画に何を求めるかは人によってけっこう変わってくると思いますが、『シャーク・ド・フランス』はあまり血の描写が好きじゃない人でも見られる印象です。もっとエグい作品もいっぱいありますからね。本作の描写であれば、怖いシーンや血しぶきが苦手な人でも大丈夫だと思います。

……ちょっと私の感覚がおかしいのかもしれないですけど(笑)。

――確かに、サメ映画の中には血しぶきを盛大に飛ばしたりと、派手なゴア描写に力を入れている作品も多くあります。そう考えると、むしろ『シャーク・ド・フランス』はサメ映画の入り口としてはピッタリだと。

戸松 これは褒め言葉としてとらえてほしいんですけど、「あまり深く考えなくても見られる」というのが良いところだと思います。緻密な伏線があって最初から片時も目を離さずに見なきゃいけない作品だと、油断できずに疲れてしまうときもありますよね。でも、サメ映画の良いところは、難しく考えすぎずスカッとするアクションを見て楽しめるところだと思うんです。

『シャーク・ド・フランス』は爆発とかはありませんが、潔く槍をブスーッと投げてサメを倒して爽快! みたいな(笑)。しっかりと戦いの起承転結があるところも、わかりやすくて面白いです。なので、「ちょっとサメ映画を見てみたい」と思ってる人やカップルの方にもオススメですね。

「サメが鳴かない、ちゃんとしたサメの映画(笑)」声優・戸松遥が語ったフランス初のサメ映画にかける想いの画像2

――『シャーク・ド・フランス』だと主人公のマジャがサメ退治にとてもこだわるけれど、その理由というのはあまり明かされません。彼女がサメを倒すことにこだわるのは複雑な心情というよりも、むしろ「そこにサメがいるから」みたいな。

戸松 そうです、本当にそれくらいシンプルでいいんです。

この作品は『ジョーズ』をリスペクトしているので、要所要所で『ジョーズ』を彷彿とさせる描写もあって、サメの全貌が出てくるまでにけっこう時間がかかるんですよね。だからこそ、サメが出てきた時に「ついに出てきた! やった!!」って思いました(笑)。

あと、本作のサメは鳴かないので私の中ではちゃんとしたサメを描いている映画だな、と。

――実際のサメはほぼ鳴かないのに、サメ映画では人を襲う時にサメが鳴くのは当たり前になっていますね。

「サメが鳴かない、ちゃんとしたサメの映画(笑)」声優・戸松遥が語ったフランス初のサメ映画にかける想いの画像3
© BAXTER FILMS – LES FILMS VELVET – FRANCE 3 CINÉMA – 2022

戸松 多くのサメ映画でサメは鳴きますよね。作品によっては空を飛んだりもしますし(笑)。以前、「日本サメ映画学会」会長のサメ映画ルーキーさんとの対談の時に教えていただいたんですが、サメ映画だと「バカバカしい」という表現も褒め言葉になるそうなんです。

『シャーク・ド・フランス』のポスターにも「サメをジョーズに捕まえろ!」っていうコピーが大きく書かれていて、本当に最高です(笑)。こういうのがあってこそのサメ映画なので。

大作でないからこその面白み

――戸松さんとサメ映画ルーキーさんの対談( https://natalie.mu/eiga/column/519316 )で、戸松さんは「サメ映画の吹き替えをやりたい」とお話しされていて、今回『シャーク・ド・フランス』でその夢が叶う形となりました。

戸松 サメ映画ルーキーさんとの対談は私自身以前から切望していたのですが、それ以降さまざまな形でサメ関係のお仕事をいただくようになりました。それまでは自分のプロフィールに「サメ映画が好き」って書いていたくらいで世には広まってなかったんですけど、対談をきっかけに、サメをフィーチャーした自然ドキュメンタリーのナレーションなどを担当させていただたりと、さまざまなご縁をいただけて本当にうれしいです!

私はもともとサメ映画やサメという生き物の生態に興味があって、趣味として好きだったものにお仕事として関わらせていただけるようになったのは本当にありがたいです。好きなことを仕事としてできて、こんなに幸せなことはないなって。

もちろん吹き替えやナレーションは本業の仕事として真摯に向き合っていますが、Vチェックの時は内容を見ながらすごく楽しんでます(笑)。

「サメが鳴かない、ちゃんとしたサメの映画(笑)」声優・戸松遥が語ったフランス初のサメ映画にかける想いの画像4
© BAXTER FILMS – LES FILMS VELVET – FRANCE 3 CINÉMA – 2022

――待望のサメ映画吹き替えということで、『シャーク・ド・フランス』で戸松さんが演じたウジェニーはどのようなキャラクターでしたか?

戸松 最初に登場した時と、最後まで見た時とで印象が変わる役柄でしたね。最初は意地悪なキャラなのかと思っていたら、急に主人公・マジャへのリスペクトみたいな心情も出てきていて。この作品の登場人物は全員そうなんですけど、みんな不思議な関係性だと思いました。

ウジェニーはメガネをかけているのでしっかりしてそうに見えるけど、少し抜けてる部分もあるんです。ピンチになった仲間を助けようとアクションするシーンもありますが、救命用の浮き輪を投げても全然届いていなかったり。

音響監督からも最初に「もうちょっと抜けてる感じがほしいです」と言われたので、見た目から想像するイメージにちょっと天然のような要素を加味して演じました。

――そうしたキャラクター性も、先ほど言ったような本作の面白さにつながっているのかもしれません。

「サメが鳴かない、ちゃんとしたサメの映画(笑)」声優・戸松遥が語ったフランス初のサメ映画にかける想いの画像5
© BAXTER FILMS – LES FILMS VELVET – FRANCE 3 CINÉMA – 2022

戸松 『シャーク・ド・フランス』はずっと怖いというよりも、ある程度のスリルと、コントみたいにクスッと笑える要素がある作品です。サメ映画と言ってもピンキリなので一概に「サメ映画とはこういうものです」と言うのは難しいのですが、お化け屋敷みたいなアトラクション感覚で観ていただけるといいのかなと思います。

もちろんハリウッド級にお金がかかっている大作サメ映画は、本当にスケールが大きくて面白いんです。ですが、例えば『ジョーズ』からサメ映画デビューをすると、多分海に入れなくなるほどトラウマになってしまうと思うんですよ。私がそうだったので(笑)。

反対にそこまでお金がかかっていないサメ映画には、大作じゃないサメ映画だからこその面白さがあるんです。ツッコミどころのある面白さとたまに恐怖というバランスが、夏に観る映画としてはピッタリだと思います。

好きなものは口に出して伝えていく

「サメが鳴かない、ちゃんとしたサメの映画(笑)」声優・戸松遥が語ったフランス初のサメ映画にかける想いの画像6

――最後に、戸松さんは人気アニメの声優活動はもちろん、今年7月に最新シングル「Alter Echo」を発表するといったアーティスト活動、そしてお話しいただいたようにサメ関連のお仕事など、幅広く活躍されています。まさに「好きなことを仕事にする」といった夢を叶えている状況だと思いますが、ご自身が思い描く未来像についてもお聞かせください。

戸松 今回、声優としてサメの作品に関わらせていただけたこともあって、今後またサメ映画の吹き替えやナレーションを担当する機会をいただけたら嬉しいです。やっぱり好きなものは口に出して伝えた方がいいんだな、というのはすごく感じています。なので、今後も「サメ映画好き」というのは声を大にして伝えていこうと思っています。

――今年4月には特撮業界で有名な坂本浩一監督の邦画版サメ映画も公開されました。もしかしたら今後、女優としてサメ映画への出演オファーなどもあるかもしれません。

戸松 もちろん声優という本業も引き続き頑張りますが、そのような機会がいただけるのであれば喜んで(笑)。サメ映画をきっかけにいろいろな縁がつながり始めているので、今後もサメ映画の縁がいろいろな場所でつながっていくといいな、と思います。

■プロフィール
戸松遥(とまつ・はるか)
1990年生まれ、愛知県出身。声優として、『ソードアート・オンライン』(アスナ役)や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(安城鳴子役)など、数多くの人気アニメ作品でヒロイン役を演じる。また、テレビ番組のナレーションや舞台、アーティスト活動といった、幅広い分野でも活躍を続けている。趣味・特技として「サメに詳しいこと」「B級モンスター映画を見ること」などがある。

■映画情報
『シャーク・ド・フランス』
監督・脚本:ルドヴィック&ゾラン・ブケルマ
8月11日(金・祝)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
公式サイト:http://unpfilm.com/sharkfrance/

須賀原みち(ライター)

フリーの編集・ライター。エンタメ系カルチャーを中心に、ビジネスその他、ジャンルを問わず執筆。また、ゲイ当事者であることから、LGBTQ関連記事の編集や執筆も行っている。

note

すがわらみち

最終更新:2023/08/10 20:00
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