三重・桑名「上げ馬神事」の動物虐待騒動 議論の長期化で競馬ファンのやきもき
歴史あるお祭りも、時代の波には逆らえないようだ。三重県桑名市の多度大社で5月に行われた『上げ馬神事』を巡り、動物虐待ではないかとの声が殺到。ネットでは未だに議論が続いている。
「上げ馬神事は、若者が馬に乗って急坂を駆け上がり、頂上の壁を上った回数で農作物の出来などを占うもの。祭りは700年近い歴史があると言われており、県の無形民俗文化財にも指定されていますが、4年ぶりの開催となった今年の神事で骨折した馬が殺処分されたことが分かり、過去には馬を興奮させるために叩いたり、ドーピングを行っていたことも判明して、SNSなどで批判の声が殺到しました」(週刊誌記者)
こういった声に対し、主催者側は神事の内容を見直す方針を発表。動物愛護の大切さは言うまでもないが、ここでモヤモヤするのは「競馬」の存在だ。競馬は多くの愛好家を有するが、上げ馬神事と被る部分は多い。
「今回、上げ馬神事が炎上した直接的な理由は馬が殺処分されたことでしょうが、競馬の世界では走れなくなった馬の多くが殺処分されていることは周知の事実。上げ馬神事では手荒く馬を叩いていることも批判されましたが、競馬でもレース中には騎手がムチを入れています。これを“上げ馬神事と競馬はまったく別物”と言うのは無理筋でしょう。
ただ、メディアは上げ馬神事の件は取り上げても、競馬との関連は完全に無視しています。JRAはメディアにとって大スポンサーですし、競馬ファンは多いので不必要に彼らを刺激したくない。競馬は色々なニュースを提供してくれる大事な取材ネタでもありますから、見て見ぬふりをせざるを得ないのでしょう」(フリーのスポーツ記者)
上げ馬神事に限らず、多くの行事やイベントが動物虐待の名のもとに縮小や撤退を余儀なくされている。
「動物愛護の考えは近年球速に広まり、ハブとマングースのショーや闘犬などは中止に追い込まれました。先日は、猿回しに対して虐待だとの批判が寄せられる事件もありました。ただ、こういった批判が進むと、アシカやイルカのショーはどうか、お金を取って象やラクダに乗せるのはいいのか、そもそも動物園というもの自体が動物虐待ではないかという話にまで繋がります。
アニマルウェルフェア(動物福祉)が進むヨーロッパでは、鶏卵ひとつを取っても“にわとりが正しく育てられているか”が問題視されていますし、マウスを使った動物実験も是非が問われていて、理系の研究現場でマウスが確保できないケースも発生しています。それらが全部なくなるべきと考える人は少数派のはず。競馬が見過ごされていることも含め、場当たり的にOKかそうでないかが決められている感は否めません。
競馬の話に戻れば、北海道で行われているばんえい競馬は、かなり激しくムチを入れますし、急坂を登るところも上げ馬神事と似ています。来年、“修正”された上げ馬神事が行われれば、また大きなニュースになるでしょうが、『上げ馬神事の話題はさっさと終わって欲しい』というのが競馬関係者の本音でしょうね」(同上)
今回、上げ馬神事を鋭く批判した人は、世に出回る馬肉の出元がどこかを調べたほうが良いかもしれない。
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