映画『バービー』がハリウッドの常識破壊?『ハリー・ポッター』超えの快挙達成
#映画 #ハリウッド
日本では8月11日から公開されるコメディー映画「バービー」が、早くも快挙を達成した。北米での劇場上映開始からわずか17日で、チケット売上が10億ドル(1420億円)を超えた。女性が単独で監督した映画が「ビリオンダラームービー」になったのは初めて。ストリーミングの普及、コロナ禍、労働紛争などの映画界の暗雲を女性パワーが蹴散らした。
映画「バービー」は米国のマテル社の着せ替え人形バービーの実写版コメディー。修行中のバービー人形が人間の世界に飛び出して繰り広げる騒動を描いた。監督は、女優としても知られるグレタ・ガーウィグ。主役のバービーはマーゴット・ロビー、恋人のケンをライアン・ゴスリンが演じている。
北米などでは7月21日から劇場上映が始まったが、調査会社のコムスコアによると8日6日時点で公開以来の世界のチケット売上が10億3000億ドル(1.03ビリオンドル)に達したという。単独監督作品で「ビリオンダラームービー」を生み出した映画監督は過去に28人いる。いずれも男性だったが、29人目となったガーウィグ監督は初の女性。「バービー」で男社会のハリウッドにくさびを打ち込んだ。
さらに「ビリオンダラームービー」の最速記録も塗り替えた。これまではハリー・ポッターシリーズの「ハリー・ポッターと死の秘宝パート2」が公開から19日で達成したのが最速だったが、「バービー」は2日も記録を短縮した。
ハリウッドでは、女性向けに、女性が製作し、女性が主役として出演するいわゆる「ガールズムービー」はあまりヒットしないと考えられている。映画の魅力をアピールできる層が限られるほか、「女性は、男性向けの映画を見に行くがその逆はありえない」という不文律があったからだ。「バービー」はこうしたハリウッドの固定観念も打ち破ったことになる。
ハリウッド関係者によると「バービー」の製作に当たり製作・配給会社のワーナー・ブラザースの一部には、1億4500万ドルという多額の製作費をこの映画に投入することに異論があったという。ワーナー・ブラザースとガーウィグ監督、主役のマーゴット・ロビーとの契約には、続編についての条項は含まれていないと米国メディアは伝えており、ハリウッドには古い価値観が製作過程で見え隠れしていたが、「バービー」は笑いを武器にハリウッドと戦い、勝利した。
一方で、大規模できめ細かい消費者マーケティングが「バービー」のもう一つの顔だ。ワーナー・ブラザースとおもちゃメーカーのマテル社は総力を挙げてマーケティング攻勢に出た。マテル社はバービー人形の売り場で映画を大々的に宣伝した。食品や衣料、ゲームなどの消費者向けの商品での提携は160以上に及んだ。
ファストファッションのギャップはバービーとケンのTシャツやパンツなどピンク色の商品を販売。特にバービー人形が着用するようなショートパンツは話題となり、北米では多くの映画館にギャップの服を着たファンが集まっている
米美容サロンのウルトラ・ビューティーはバービー仕様のショッキングピンクの電動歯ブラシなどを販売し、ヒット商品となった。マイクロソフトもゲーム機Xboxでピンクバージョンを売り出した。
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ワーナー・ブラザースは映画「バービー」をどう演出するかを協議するために、毎週、特別な会議を開いてきたという。映画界にこびりついた古い考え方から完全には抜けきれなかった同社も、逆風の時代に映画をヒットさせるためのマーケット戦略では新しい方向を見ていた。
女性パワーが常識を覆した「バービー」でも男性の魅力的なキャラクターが登場する。バービーの恋人であるケンだ。着せ替え人形バービーの世界では、常に主役は女の子のため、男の子のケンはいつも脇役だ。爽やかな好青年だが、どこか寂しげ。映画でもケンの悲哀がたっぷりと表現され、ライアン・ゴスリンが見事に演じている。
映画の中でライアン・ゴスリンが歌うケンの歌のタイトルは「I’m Just Ken(僕はただのケン)」。心に染みるバラードだ。ビルボードのヒットチャート「Hot 100」の87位に入った。
Doesn’t seem to matter what I do(僕が何をするかは、どうでもいいみたい)
I always number two(僕はいつも2番目だし)
Now one knows how hard I tried (僕がどれほど頑張っているかなんか、誰も知らない)
という歌詞で始まり、
I’m just ken(僕はただのケン)
を何度か繰り返す。
ブラジルではバーガーキングが「バービー」と提携したチーズバーガーを売り出した。ショッキングピンクのソースが特徴で、セットで注文すると「Ken’s Fries」という名のポテトフライがついてくる。味は何の変哲もないポテトフライ。「ただのポテトフライ」だから「Ken’s Fries」だという。
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