笑いを取らなければ陰口も…お客さんの目も容赦ない「M-1グランプリ」1回戦の難しさ
#M-1グランプリ #馬鹿よ貴方は 新道竜巳
今年もM-1グランプリの季節がやってきて1回戦が8月1日より開催されている。初日のMCは2008年度のファイナリスト、ザ・パンチのお2人。とても物腰が柔らかく軽快なトークで会場を盛り上げていた。この日観覧させていただいたが、嵐のような雨に打たれながらの予選だった。
シード枠が今年から増え2022年の準々決勝以上が1回戦免除になる(今までは昨年の準決勝以上が1回戦免除だった)。とはいえ1回戦は面白い出場者は多く、どこら辺が合格のボーダーラインなのか分からない。ウケない芸人はとことんウケない。この会場をホームにしてウケないと一気にお客さんが敵になる。普段フリーのライブで活躍する芸人がお客さんを「サル」呼ばわりするという元々攻める芸風だったのもありワードが一切ハマってなかった。休憩時間にはお客さんが「あの芸人ヤバかったな……あのサルとか言ってくる奴」と敵意すら持っていた。全員がその芸人を知っていたのならまた状況は変わってきていたとは思う。
笑いをとらなければ陰口すらも言われてしまうのがM-1グランプリでもある。過去には準々決勝のネタ動画が現場でウケているのにも関わらず「面白くない」と何件も書き込みがあった芸人もいた。全てと言ってもいいぐらい、芸人はお客さんに喜んでもらおうとしてネタをやっている。しかし口に合わないと吐き出してしまうのがお客さんでもある。
お客さんも厳しいのだが審査がまた厳しい。面白かったら全組上がってしまうととんでもない数になってしまう。だから面白い芸人の中でも受かる芸人と落ちる芸人とが出てくる。まずナイスアマチュア賞をとったイクラボブチャンチャンは賞こそとったが2回戦には進出できなかった。このコンビは社会人漫才王というインディーズの大会で2022年の優勝者でもあった。155人が見守る会場で爆笑につぐ爆笑をとり優勝をとった。その1本のネタがM-1グランプリではハマり切らずに終わった。動画コメントこそ面白いと称賛されているのはよかったが、会場を牛耳る事は出来なかった。どれだけ他のライブで大爆笑をとってもM-1グランプリでは爆笑がおきないのもライブならではの部分ではある。
この日昨年3回戦まで進出していたハバネロ胡椒も出演していた。このコンビは社会人漫才王の2021の優勝者でもある。私はここ何年か決勝の審査員をやらせていただいているので、このコンビの実力も目の当たりにしている。しかし1回戦で負けてしまった。お客さんがこの2人の会話劇についてきていなかった。笑いこそあったが乗り切れるほどの盛り上がりが……。
ジャスチョフというコンビが会場を味方にした。大きくウケており奇抜で漫才っぽくはなかったが、そもそも漫才っぽいってなんなんだというのもあり演者もお客さんも大いに楽しんでいた。しかし奇抜過ぎるためか合格にはならなかった。別に意地悪をしているわけではないだろうが、こういう事が起きてしまうのも賞レースならではなのだ。
そしてちゃんぴおんずがおもしろ荘からのテレビ出演というのも味方して申し分なくウケていた。お客さんも知っている感じの笑いだった。こちらは合格だったのだが、トップ3には入っていない。M-1グランプリ的な笑いとは誰にも答えられないかもしれないが、評価も難しさを如実に痛感した。
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