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右肩上がりの『VIVANT』“あるある要素”を散りばめ、考察を盛り上げる見事な戦略

右肩上がりの『VIVANT』あるある要素を散りばめ、考察を盛り上げる見事な戦略の画像1
ドラマ公式サイトより

 1話1億円と言われる、地上波では考えられない規模の制作費で話題のTBS系日曜劇場『VIVANT』。7月30日放送の第3話の平均世帯視聴率は13.8%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)で、第1話の11.5%、第2話の11.9%を上回り、右肩上がりの状況だ。

 巨額誤送金事件、“VIVANT”という謎の言葉、“テント”というテロ組織など、二重人格を思わせる主人公の乃木憂助……そんな複数の謎が絡み合いながら展開していく同作品。視聴率の上昇に合わせて、ネット上での考察も盛り上がっている。

「海外のスパイもののドラマでは、第1話から登場している主要キャラクターのなかに、裏切り者がいるというのが定番になっています。『VIVANT』においても、誰が裏切り者なのかという点に関する考察がとても多いですね」(ドラマ関係者)

 登場人物のなかで、特に“怪しい”と疑いの目をかけられているのが、二階堂ふみ演じる医師の柚木薫だ。第3話では、バルカ共和国から広大な砂漠を抜けてモンゴル国境へと向かう際、薫が途中で行方不明になってしまうという展開があったが、はぐれた経緯などは明かされておらず、たしかに謎めいていると見ることもできる。

 さらに、帰国後は公安警察の野崎(阿部寛)の連絡先を異様に知りたがったり、バルカ共和国で亡くなったアディエルと婚約していたという話が嘘だと告白したり、薫についてはどこか怪しげな言動も少なくないのだ。これに対し、SNSでは、

《薫さん怪しいんだよなぁ。わざと行方くらませた?》
《薫がやたら怪しい。モニターなのでは?最初から聞きたがりすぎてるもん》

など、薫の行動の裏を勘ぐるような投稿が散見されている。

「2番手、3番手のキャラクターがスパイだったというのは、海外のスパイドラマでもよくあるパt-案です。実際に『VIVANT』でもそれを踏襲しているかどうかはまだわかりませんが、そう思わせるような演出が多いのは確かであり、だからこそ考察も盛り上がっていると言えるでしょう。いわば“スパイものあるある”を上手く利用しているということですね」(同)

 そのほかに、『VIVANT』にはいくつもの“あるある”が散りばめられている。

《檀れいが 大使の時点で怪しいよね。 ただのいい大使なら他の女優使うだろうし》
《監視カメラの映像をダミーにするのはもはや定番だし、ガラスを拡大するのも定番。でも毎回ドキドキする》
《VIVANT考察。 二重人格で主人公の人格が、実は後から生まれた人格であるのはよくあるよね》

など、SNSでも、過去の映画やドラマにもありそうな設定や展開を『VIVANT』のなかに見出し、そこを糸口にして、さまざまな考察をする人は多い。さらには、

《日曜劇場あるある、料亭での食事シーン》
《日曜劇場あるあるのギリギリ間に合うかどうかのハラハラ展開もあったし、濱田岳も出てきたし最高でした!》

と、“日曜劇場あるある”を指摘する声も少なくない。

「ドラマや映画の“あるある”は、ともすれば“よくあるパターン”としてネガティブに捉えられることもあるんですが、考察することが楽しみとなっている『VIVANT』のような連続ドラマでは、“あるある”の要素が含まれていることで、視聴者の想像が膨らむ。また、地上波ドラマということで、ドラマや映画にそれほど詳しくないライト視聴者もターゲットとなっており、“あるある”と感じられるくらいの展開のほうがちょうどいいという側面もあるでしょう。

これでもしも考察が当たれば、視聴者は“それみたことか!”という満足感を得られますし、考察が外れても心地よい裏切りを体感できる。適度な“あるある”によって、作品のハードルが下げられていると言えると思いますね」(同)

 また、重要な“考察のネタ”となっているのが、主要キャストとして発表されているにも関わらず、第3話の時点でまだ登場していない松坂桃李だ。

「“松坂桃李さんがどんな役で登場するのか”という話題で視聴者が盛り上がっているのも間違いない。事前にキャストを発表していたからこその展開であり、このプロモーションは大正解だったと思います。第1話のラストでちらっと登場したものの、まだ謎に包まれている役所広司さんや二宮和也さんの役柄も加えて、豪華キャストを“もったいぶっている”ことも、『VIVANT』の盛り上がりを上手く演出していますね」(同)

 わかりやすい“あるある”を随所に入れ込むことで、考察しやすい“視聴者参加型ドラマ”となっている『VIVANT』。序盤の戦略としては、大成功だったようだ。

手山足実(ジャーナリスト)

出版業界歴20年超のベテランジャーナリスト。新聞、週刊誌、カルチャー誌、ギャンブル誌、ファンクラブ会報、企業パンフレット、オウンドメディア、広告など、あらゆる媒体に執筆。趣味はペットの動画を見ること、有名人の出没スポットパトロール。

てやまあしみ

最終更新:2023/08/06 19:00
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