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バレー中継ジャニーズ降板で露呈ー地上波が直面する国際スポーツ大会中継の限界

バレー中継ジャニーズ降板で露呈ー地上波が直面する国際スポーツ大会中継の限界の画像1
フジテレビ『FIVB パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023』公式サイトより

 フジテレビのバレーボールワールドカップ中継といえば、毎回ジャニーズ事務所の所属グループが大会サポーターを務めることでおなじみだ。しかし、『週刊文春』(文藝春秋)の報道によると、今年9月30日に開催される『FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023』では、ジャニーズJr.のAぇ!groupが大会サポーターを務めることで調整されていたが、故ジャニー喜多川氏による性加害が参加国から問題視されたことを受けて、取り止めになったという。

 そんななか、7月28日に『お台場冒険王2023 SUMMER SPLASH!』の特設ステージにて、『FIVB パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023』開幕50日前イベントが開催。そこでフジテレビ系バラエティ番組『ぽかぽか』のMCを務めるハライチと神田愛花の3人が、同大会のバレーボール日本代表応援団長に就任することが発表された。ところが、このニュースが驚くほどに話題になっていないのだ。

「バレーボールワールドカップ中継での“大会サポーター”と“日本代表応援団長”は、異なる役割で単純に『ぽかぽか』チームがAぇ!groupの代役になったというわけではないのですが、この発表についてネット上では完全に無風状態。文春の報道があった後の発表なので、少なからず注目されてもおかしくないのに、誰も話題にしていません」(テレビ局関係者)

 まさに、ジャニーズタレントがいないと、フジテレビのバレーボール中継がまったく盛り上がらないという現実が浮き彫りになった形である。

「そもそも日本でしか開催されず、毎回フジテレビ系で独占中継される『バレーボールワールドカップ』は、一般的な国際大会とは異なるかなり特殊な大会です。そういった事情があったからこそ、フジテレビはジャニーズとの蜜月のなかで、大会を盛り上げていたわけです。

しかし、ジャニーズがいなくなった途端に、この有様。結局、ジャニーズに頼りすぎた結果、バレーボールのファンがついてこなかったということなのかもしれません。地上波におけるバレーボール中継は風前の灯。地上波におけるスポーツ中継の限界を感じてしまいます」(同)

 地上波におけるスポーツ中継の限界という意味では、現在開催中のサッカー女子日本代表が出場しているFIFA女子W杯オーストラリア・ニュージーランド大会も難しい状況にさらされた。

 FIFAが設定した同大会のテレビ放映権料は100億円以上と見られ、民放各局は放映権獲得を回避。大会開幕1週間前のギリギリのタイミングになって、NHKが日本戦の放映権を獲得したのだ。グループリーグ第1戦ザンビア戦と第2戦コスタリカ戦の生放送はBSで、地上波での生放送はなし。第3戦のスペイン戦は地上波で生放送された。

「2022年開催のW杯カタール大会も放映権料が高騰してたことが要因となり、すべての試合を地上波で放映することができなかった。男子よりも注目度が低い女子サッカーなので、民放各局が放映権獲得を避けるのも仕方ない部分があります。そもそもFIFAが設定する放映権料が高すぎるということが問題ではありますが、スポーツ中継が地上波向きのコンテンツではなくなってきているのでしょう」(同)

 テレビ放映権が高騰する一方で、FIFAの公式デジタルプラットフォーム『FIFA+』では、女子W杯オーストラリア・ニュージーランド大会の全試合を無料でストリーミング生配信している。試合終了後のアーカイブ配信も無料で、日本語を含む複数の言語による実況もついている。

「W杯カタール大会では、ABEMAが全試合無料で配信しましたが、今回のFIFA+での配信は大会側の“公式配信”ですからね。たしかに解説は簡易的なものですし、派手な演出もないものの、純粋に試合を楽しみたいだけであれば、むしろこっちのほうがありがたいと言える。

東京五輪も北京五輪も公式で全試合が無料配信されていましたが、今後の国際大会においても“公式による無料配信”がスタンダードになっていく流れができているのは確か。試合だけを楽しみたいということで、地上波よりもネットでの配信を選ぶスポーツファンも増えていくでしょう」(同)

 放映権が高騰することに加えて、公式の無料配信があれば、いよいよ民放各局は国際大会の中継から距離を置いていくことになりそうだ。

「これまで民放各局は、大きな国際大会のスポーツ中継において、タレントなどを起用しても“テレビ的な演出”で盛り上げてきました。しかし、ジャニーズが排除されたことでまったく注目されなくなったフジテレビのバレーボール中継にまつわる状況を見ていると、テレビ的な演出がスポーツファンのためのものではなかったと言える。スポーツファンに向けられていないスポーツ中継なんて、必要ない。いよいよ地上波からスポーツ中継が消える時期なのかもしれません」(同)

 視聴者の嗜好が多様化し、スポーツ中継で視聴率が見込めなくなっている状況のなか、有料配信サービスで中継されるプロスポーツも増えている。さらに、国際大会における放映権料の高騰、公式による無料配信、そして“テレビ的な演出”の問題という、さまざまな理由が絡み合い、地上波での国際大会の中継は本格的な見直しをせざるを得なくなった。果たしてこのまま地上波からスポーツ中継が消えるか、それともスポーツの魅力を上手く伝えるための新たな方法を手にすることができるのか──。地上波テレビは今、岐路に立たされている。

手山足実(ジャーナリスト)

出版業界歴20年超のベテランジャーナリスト。新聞、週刊誌、カルチャー誌、ギャンブル誌、ファンクラブ会報、企業パンフレット、オウンドメディア、広告など、あらゆる媒体に執筆。趣味はペットの動画を見ること、有名人の出没スポットパトロール。

てやまあしみ

最終更新:2023/08/03 13:00
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