芸能人の引退や解散は「突然」ではない…アイドル卒業に見る「推し活」の深さ
#アイドル #檜山豊
皆さんは「推し活」をしていますか?「推し活」と聞くと一昔前ならとてもマニアックでニッチな世界観を想像してしまうこともあったが、今では誰でも行えるメジャーな活動になった。そもそも推し活とはなんのか。推し活とは自分が好きなもの、つまり推しを応援する活動のことであり、推しにメッセージを送ったり、グッズを購入したり、推しが行っている活動に対してSNSで感想をアップすることを指す。
元々はオタクと呼ばれる人たちがアイドルなどに行う活動の一環であったが、徐々に舞台俳優やアニメ、キャラクターなどジャンルの違うオタクたちが現れ、推しの対象が広がっていき、今では好きなもの全般をさすようになった。そのため、最近ではコスメやお店、電車などの乗り物といったものまで推しの対象となっている。
推しの対象が広がると冒頭に書いたように、誰でも気軽に個人的に行うことができるので、やり方はどうであれ、「推し活」をしている人は少なくないだろう。それこそ使いもしないコスメシリーズを一通り集めてみたり、業務スーパーで何を買えばどう得をするか研究してみたり、電車の扉の開閉を動画で撮ってみてりと、様々な推し活模様が想像出来る。
とはいえ、やはり推し活の代表格は「アイドル」への応援だ。今回はそんなアイドルへの推し活が垣間見える、とあるツイートに注目していく。7月30日、当時アイドルをしていた「うしおゆりな」さんが17秒ほどの動画と共にこんなツイートをした。
「【悲報】生誕祭開いたけどお客さんが1人しか来なかったアイドル」
動画には生誕祭らしく風船などで装飾された華やかなステージで歌う「うしおゆりな」さんと、そのうしおさんをイメージカラーであるピンク色のサイリウムを振りながら、大声で合いの手をいれるたった1人のファンの姿が映し出されていた。
投稿された動画とコメントを見れば、一体どのような状況だったのかは簡単に察することができるが、事の顛末はというと、今月24日に誕生日を迎えたうしおさんは、30日に名古屋市内にあるライブハウスで生誕祭と卒業ライブを開催した。当日11時からスタートした生誕祭。生誕祭が終わったであろう16時に例の投稿をし、そして17時から卒業ライブをワンマン開催し、うしおさんのアイドル人生は幕を閉じたというわけだ。
うしおさんが別でツイートしたコメントを見る限り、会場へ足を運んだお客さんは他にもいたようだが、動画の彼ほど熱心に、そして情熱的にうしおさんを応援した人間はいなかったのであろう。他にも会場にファンがいたとはいえ、少人数であったことは間違いない。そんな状況下では、どれだけ最前列で応援したい気持ちがあっても、会場の後方でドリンクを飲みながらしっぽりと応援するのは、シャイな日本人としては当たり前なこと。どうしても恥ずかしさという防衛本能が働いてしまうのだ。
しかもうしおさんはアイドル活動は辞めるが、今後もソロシンガーとして活動することがわかっている。そうなると「また会える」や「最後ではない」という考えが働いて、なおさら今じゃなくていいかという気持ちになり、結果的にしっぽり応援になってしまうのだ。
ではなぜ動画の彼はあれほど全力で応援したのか。ここからは僕の憶測でしかないが、彼の中で「アイドル うしおゆりな」と会えるのが最後だと意識していたのではないだろうか。もう二度とアイドルとしてのうしおさんに会うことが出来ないと思うと、最後は全力で応援してあげたいと思うもの。
さらにアイドルとしての最後のライブを素敵な思い出にしてあげようというファンとしての責任感、次のステージへ進むために後押しする為、そして自分が今までファンとして応援してきた思いを全力でうしおさんにぶつけ、自分の推し活に悔いを残さないようにしたのかもしれない。
とにかくどんな思いがあったにしろ、彼がいてくれたお陰でうしおさんは最後までアイドルを全うし、ソロシンガーという新たな階段をのぼることができた。彼の姿こそファンのあるべき姿なのだ。この投稿には2万を越える「いいね」がつけられ、見た人たちから「たった1人でこんな大声で一緒歌ってくれるファンの方最高すぎ」「あなたを愛してくれる人が必ずいる!!って事が分かる貴重映像!!涙」「1人のファンの熱心な応援がSNSを通して何万人も見てくれてるって事に感動している」などと称賛する声が寄せられている。
僕はよくファンの方たちに「応援できるときに応援してください」という。これは応援出来るタイミングで応援してくださいという意味ではなく、次があると思わないで、推している人やモノがあるのなら、時間を惜しまず全力で応援してくださいという意味だ。アイドルだけではなく、俳優も芸人も劇団もいつどうなるかわからない。
アイドルなら突然の引退。芸人ならいきなり解散したり、劇団なら解散や退団が付いて回る。今回はちょっと面倒だから次でいいやなんて思っていると、次が来ないことも往々にしてあるのだ。
僕がコンビを解散して芸人をやめるとなったとき、ファンの人に「突然すぎてびっくりしました。もっとライブに行けば良かった」と何人もに言われたのだ。その時に僕にとって解散は突然ではなくずっと悩んで決めたことだったが、ファンの人には何の前触れもなく訪れた解散で、もしかしたら解散するかもなんて考えは1ミリも脳裏に浮かんでいなかったのだと理解したのだ。なので続きそうに見えていたり、解散しなさそうに見えている推しでもいつ何があるかわからない。だから推しの為ではなく、自分が後悔しない為に、応援できるときに全力で応援してほしいと思うのだ。
彼のようなファンがひとりでもいれば解散しなかったコンビなど山ほどいるだろう。皆さんが思っているよりもファンの力は絶大なのだ。
ちなみに2014年に話題となったジョイマンのサイン会に誰も訪れなかった「サイン会0人事件」。あのデパートのサイン会場に彼のようなファンが1人でも来ていたなら何かしら変わっただろうか。……たぶん変わらない。ジョイマン残念。
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